Windows 365と情シスの未来

すでに発表はされていたが、Microsoftはサブスクリプションで利用できるクラウド型の仮想デスクトップサービス「Windows 365 Cloud PC」を提供開始した。すでに情シスの皆さんはWindows 365がどのようなものかはチェック済のことであろう。簡単に言ってしまえば、DaaS(Desktop as a Service)である。
しかしながら、MicrosoftのDaaSといえば、AVD(Azure Virtual Desktopの略。旧称WVD:Windows Virtual Desktop)もあり、その棲み分けも気になるところである。

今回はWindows 365登場の背景やその概要を紹介し、Windows 365が情シスにどのような価値を提供するのか考えてみる。

<出典:Microsoft>

 

おさらい:Windows 365とは

Windows 365を一言で語るなら「MicrosoftのDaaS」に尽きるであろう。
Microsoftの表現を借りるならば『あなたの Windows はクラウドにあります』となる。
Windows365はオペレーティングシステム(OS)をMicrosoftCloudに取り込み、すべてのアプリ、データ、設定を含む完全なWindowsエクスペリエンスを安全にデバイスにストリーミングする。

<出典:Microsoftブログ>

”最後のWindows”と言われていたWindows 10も、ここにきて新たにWindows 11が登場するとアナウンスされている。このWindows 11はブランディングやプロモーション効果のためと思われるが、そのようなことになった背景は今回のWindows 365の登場とも関係する。

新型コロナウィルス感染症(COVID-19)対策は各国でワクチン接種が進んでいる。しかしながら、世界的に見てもその猛威はまだまだ衰えてはいない。(ワクチン接種が進んだという理由で大型イベントへの観客動員が解禁された英国でも、減少傾向にあるとしながらも1日の新規感染者数は2万人を超えている)
COVID-19が武漢で確認されてから早20か月、感染症拡大防止の観点から”新しい生活様式”が求められ、当然ながら働き方にも大きな影響を与えてきた。このようなビジネス環境の変化がWindows 365の登場を促したといえよう。

まず、従来の会社に出社してオフィスで仕事をするだけでなく、自宅で仕事をする、それが難しい人はリモートオフィスで作業をするなど、様々なスタイルで業務に取り組むようになった。オフィスとそれ以外の場所、両方で働くハイブリッドな働き方である。それ故、いつでも、どこでも必要なときに機能する”作業環境”が今の時代の新しい標準になった。
その為に情シスの皆さんは、テレワーク環境構築のために四苦八苦されてきたのではないだろうか。

しかしながら、テレワークの実現においては、端末調達コストやセキュリティ対応、企業ポリシーなど様々な要素が関係してくる。
例えば、従業員視点では、使い慣れ、そして使いやすく、利用する環境にあった様々なデバイスを使って業務を遂行できれば、生産性が高くなるのかもしれない。しかしながら、その一方で企業視点では、昨今の不正アクセスや情報漏洩の状況を鑑みて、データ安全性を高めることは必須であり、そのためにはシステムの共通化がなされている方が、検証が容易になるなど、管理しやすい。ここだけ見ても二律背反な関係にあり、どこを妥協するかは企業ポリシーに委ねられる。
そして、このような状況下においても、オフィス外で作業をしていてもオフィスにいる時と同様に従業員間のコラボレーション、共有、作成を支援する共通のソリューションが必要なのである。

このようなそれぞれの視点での理想を実現するツールの一つが、Windows 365なのかもしれない。

では、Windows 365にはどのようなメリットをもたらすのか、その特徴や機能をチェックしておこう。

 

Windows 365:3つの特徴

Windows 365 Cloud PCのビジョンは、他の製品にもクラウドを採用したのと同様に、組織の課題と従来の課題の両方を解決しながら、クラウドの力を通じてWindowsを体験する新しい方法を提供することである。
この新しいパラダイムは、単純にリモートアクセスを許可して保護することだけにはとどまらない。
”パワフル、シンプル、セキュア”、Windowsとクラウドの強みを生かしたこの3つの特徴をWindows 365は持っているとMicrosoftは説明している。

  • パワフル
    ユーザーはあらゆるデバイス(Mac、iPad、Androidを含むLinuxマシン)から、自分専用のCloud PCを起動し、全てのアプリケーションとツール、データ、設定をクラウドからストリーミングできる。
    クラウドは処理能力やストレージを柔軟に提供することもでき、情シスはユーザーのニーズに応じてスケールアップやスケールダウンも可能である。
  • シンプル
    ユーザーはデバイスを切り替えてログインをしても、直前に使っていたデバイスで行っていた作業を中断した箇所から再開できるなど、Cloud PCだからこそ、使い慣れたWindows体験をデバイスを超えて実現可能である。
    またクラウド上で集中管理できることから情シスはデプロイや更新、管理といった作業をWindows 365を用いることで簡素化できるともいう。
    さらに、Windows 365はエンドポイント向けに最適化されており、情シスは「Microsoft Endpoint Manager」を使用して、自社のCloud PCの調達やデプロイ、管理を、物理的なPCの管理と同様、容易に実行でき、業務の簡素化にも一役買うと考えられる。
    そして中小企業であってもWindows 365を直接、またはクラウドサービスプロバイダーを通じて購入することができ、数クリックの操作でCloud PCをセットアップすることもできるシンプルさとなっている。
  • セキュア
    Windows 365は設計段階からセキュリティが考慮されており、ゼロトラストアーキテクチャーを採用しており、デバイスではなくクラウドに情報を設計、保存、保護することで、今日の重大なセキュリティの課題を解決するのに役立つ
    そしてWindows 365は常に最新に保たれ、Microsoftの豊富なセキュリティ機能によりセキュリティ作業を簡素化するとともに、現在の環境に最適なセキュリティ設定を推奨してくれる。
    Cloud PCへの全てのログインとアクセスについては、Microsoft Azure Active Directory(Azure AD)と統合された多要素認証(MFA)を用いる。加えて、Cloud PCが動作する全てのマネージドディスクは暗号化されることで全ての保存データと、Cloud PCに対して送受信される全てのネットワークトラフィックも暗号化され、セキュリティを担保する。

 

Windows 365で情シスの未来は変わるのか!?

”Windows 365を導入したら情シスが不要になる”、そんなことには簡単にはならないだろう。管理者が必要なことには変わりないのだ。しかしながら、その内容は変わるかもしれない。
例えば、1台1台個別に実施していたキッティング作業やセキュリティ管理(アップデート適用の追跡など)からは解放されるかもしれない。そうなるともっと他のことに目を向けることができるようになる。
また、しっかりとした検証も必要であるが、BYODが可能になるのであれば、”業務は社給PCで行う”というこれまでの固定概念も変わってくることになる。
これまでにもBYODでセキュアな業務環境を実現するためにアプリケーションラッピングやセキュアブラウザといったソリューションは存在していた。しかしながら、たまにおこなうリモートワーク程度ではあまり注目されなかったといえる。
しかしながら、コロナ禍による労働環境の変化でこの分野に光が当たっている。

そしてここにきて大本命、Microsoftからの登場である。
AmazonはAmazon WorkSpaces、GoogleはGCP、その他にもVMware、CitrixなどDaaSも数多くあるのだが、ビジネススイートとしてそのポジションが確立しているMicrosoftだけにMicrosoft 365と合わせて”まるっと”抱きこまれる環境にある。(その意味で唯一対抗できるのはGoogleだけなのか?)

BYODを導入しないのであれば、月額3,000円以下でリース(または流行りのサブスクリプション)が可能なところがないか探してみるのが良いだろう。
しかしながら、企業としてBYODに舵取りするのであれば、業務環境としてWindows 365を提供するというのもありえる。

少し柔軟に考えてみることで、情シスの未来(業務)は大きく変わる可能性はゼロではないだろう。

 

【執筆:編集Gp ハラダケンジ】


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