Web統合電話帳アプリケーションの市場規模調査-MM総研

MM総研(略称MMRI)は、主要なソリューション事業者へのヒアリング調査を実施し、Web統合電話帳アプリケーション(以下、Web電話帳)の市場規模および事業者シェアをまとめた。
Web電話帳とは、社員や顧客の電話番号、メールアドレスをWeb上で一元管理し、固定電話やモバイル端末などから利用できるWebベースの電話帳アプリケーション。ビジネスチャット、プレゼンス(在席情報)確認、Web会議の予約など、他のコミュニケーションツールとも連携できる機能を備えている。

<サマリー>
・市場規模は2019年末の179万件から2020年末で210万件に拡大見込み
・大企業を中心に分散化した社員情報や顧客情報の集約にWeb電話帳の活用が進む
・事業者別シェアではPhone Appliがライセンス数シェアで85.7%を獲得

■Web電話帳のクライアントライセンス数は210万件に拡大へ

今回の調査によれば、2019年12月末時点のWeb電話帳のクライアントライセンス数は179.4万件で前年同期比34.4万件の増加となった(データ1)。市場拡大をけん引しているのは大企業で、スマートデバイスの導入やコミュニケーション基盤(IP-PBXなど)の更新、事業所移転などの機会に導入するケースが増加している。
大企業では複数の業務システムや様々なコミュニケーションツールを利用する中で、顧客や社員情報の分散管理が起こりやすい環境にある。この課題解決につながるソリューションとして、存在感を高めているのがWeb電話帳である。
Web電話帳に社員情報や顧客情報を集約化し、他の様々なコミュニケーションツールと連携を図ることで、業務効率化や顧客対応の強化を図ることが大きな導入目的となっている。

また、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の拡大により、在宅勤務(テレワーク)が普及したことで、より必要性が増している状況でもある。

【データ1】Web統合電話帳アプリケーションの市場規模の推移と予測(※2020年7月調査時点)

今後も大企業による導入が続くと見られるが、中小企業や官公庁でもWeb電話帳を導入する動きが広がりつつある。
市場の拡大基調は続き、MM総研では2020年末のクライアントライセンス数を210万件、2021年末には240万件に拡大するものと予測する(データ1)。

 

■Phone Appliが市場シェア(クライアントライセンス数)85.7%を獲得

Web電話帳市場でトップシェアに立つのがPhone Appli(以下、フォンアプリ)である。同社が提供するクラウド電話帳サービス「連絡とれるくん」の2019年12月末時点のクライアントライセンス数は前年比28%増となる153.8万件に拡大、市場シェアで85.7%を獲得した(データ2)。
導入企業は金融、小売、商社、製造、通信、流通などの大企業が中心。顧客層の裾野は年々広がっており、近年では多種多様なサービス業や医療、官公庁・自治体関連、中堅中小企業などでの導入も進んでいる。

【データ2】Web統合電話帳アプリケーションの事業者別シェア(2019年12月末時点)

販売チャネルは、大手通信事業者に加え、IP-PBX製品を取り扱う大手ソリューションベンダー、中堅中小企業を得意とするIT系の販売店など顧客基盤を持つ企業が中心となっている。これらのパートナー企業はWeb電話帳との連携で利便性が高まる製品やサービスと組み合わせる形でフォンアプリのWeb電話帳を拡販している。

フォンアプリのWeb電話帳の強みは、シスコシステムズなど主要な国内事業者の音声基盤(IP-PBX)に対応している点であろう。
また、アプリケーション領域でも、Microsoft TeamsやZoom、Salesforce、ビジネスチャットのLINE WORKSなど多様なコミュニケーションツールとの連携を実現している。
機能面では直感的で使いやすいユーザーインターフェースや名刺管理機能などがあり、昨今のコロナ禍のテレワーク需要においてもコミュニケーションの核となる機能を備えている。

企業規模に関わらず、名刺管理ツールやWeb会議システムなどの導入が進む中で、Web電話帳を軸にコミュニケ―ションツールの連携を図る動きが増えている。フォンアプリでは販売パートナーとの連携を強化し、今後もソリューション連携やサポート体制の拡充を進めていく。

 

■日本証券テクノロジーはSI力を強みにカスタマイズ案件の獲得を伸ばす

2位は日本証券テクノロジーで、2019年12月末時点のクライアントライセンス数は前年比1%増の19.8万件となった。2019年は既存顧客からのカスタマイズ案件の獲得が進み、SI売上が大幅に増加した。
同社の強みは、高い信頼性と安定性が求められる金融業界向けで数多くの導入実績を持つ点だ。顧客からも高い評価と信頼を得ており、この実績の積み重ねが新規顧客や既存顧客のカスタマイズ案件の獲得につながっている。

同社が提供するWeb電話帳アプリケーション「NSTechno-phone Manager」の特徴は、IP電話とPC・スマートフォンの機能を融合し、これを継続的に強化している点だ。多様なIP電話の機能をPC画面上に集約することで、クリック発信や着信時の発信者情報の表示、プレゼンス(在席情報など)確認、チャットなどを簡単に利用できる。マニュアルがなくとも直感的に画面を操作できる点も大きな特徴だ。近年ではスマホ導入企業の増加に対応し、モバイル版のユーザーインターフェースや機能の拡充を図っている。

Web電話帳自体の機能や操作性の高さに加え、顧客からの要望に柔軟に対応できるSI力も同社の強みとなっている。日本証券テクノロジーによれば、顧客からの要望として増えているのが、既存のSFA(営業支援システム)やCRM(顧客管理システム)との連携、自社の業務に合せたカスタマイズだという。新規顧客・既存顧客を問わず、今後もカスタマイズニーズはさらに増えてくると見ている。同社は高い信頼性を求められる金融業界で多くのカスタマイズ案件に対応してきた実績やノウハウを持つ。これをベースに連携ニーズやカスタマイズニーズへの対応を引き続き強化していくという。

 

■累計ライセンス数は2020年末で200万件を突破、2021年末で240万件を予測

前述したように、MM総研の分析では、2020年末のWeb電話帳の市場規模(クライアントライセンス数)は210万件、2021年末時点で240万件に拡大するものと予測している。
大企業では顧客や社員情報の分散管理を解決し、コミュニケーションを効率化する手段としてWeb電話帳の存在感が年々高まっている。子会社やグループ会社にも導入を広げる動きが加速しており、今後も大企業での導入が市場拡大をけん引していくと考えられる。

また、中小企業においてもWeb電話帳を導入する動きは広がっている。特にスマートデバイスの導入時や既存の名刺管理ツールとの連携などを目的に導入するケースが増えている。
コミュニケーションの効率化による業務効率化や顧客対応の強化は、多くの中小企業にとっても共通の経営課題である。この課題解決につながるソリューションとしてWeb電話帳を導入する動きは今後も広がっていくことであろう。


■Web統合電話帳アプリケーションの定義
・IP-PBX/SIPサーバー等と連携し、電話番号、メールアドレスなどの電話帳を、固定電話やモバイル端末 (PC、スマートフォン、タブレット端末など)などから、社内・社外を問わず、利用できるようにするWebベースの電話帳アプリケーションであること
・電話帳の画面上で、電話、メール、プレゼンス確認、ビジネスチャット、Web会議などのコミュニケーションツールと連携できる機能を持っていること。
・Web上での電話帳データの共有管理・一括管理に機能が限定されたソフトウェアは含まない
・PBX等の一機能として提供されているものは除く


本レポートは、MM総研様のプレスリリースの内容を元に作成しております。
ソース:https://www.m2ri.jp/release/detail.html?id=444

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