使える!情シス三段用語辞典118「DSDV」
常に新しい用語が生まれてくる情報システム部門は、全ての用語を正しく理解するのも一苦労。ましてや他人に伝えるとなると更に難しくなります。『情シスNavi.』では数々のIT用語を三段階で説明します。
一段目 ITの知識がある人向けの説明
二段目 ITが苦手な経営者に理解してもらえる説明
三段目 小学生にもわかる説明
取り上げる用語を“知らない”と思った人は、小学生にもわかる説明から読んでみると、理解が深まるかもしれません!?
一段目 ITの知識がある人向け「DSDV」の意味
「DSDV(Dual SIM Dual VoLTE)」とは、以前にこの三段用語でも紹介した「DSDS」の進化バージョンと言えるでしょう。
DSは、「デュアルSIM(Dual SIM)」を意味し、一つの携帯端末に2つのSIMカードを挿すことができることを意味しています。日本ではキャリアが端末を販売していたこともあり、これまで対応機種がほとんどなかったので、あまりなじみがないかもしれません。
次にDVですが、これは「デュアルVoLTE(Dual VoLTE)」を意味し、2つ挿すことのできるSIMカードが両方のスロットともにVoLTEの機能が使えることを指します。
おさらいになりますが、DSDSとは1台のスマートフォンに2つのSIMを入れることができる機能でした。両方の番号で同時に待ち受けができ、切り替え操作や電話着信の取り漏れがなくなることがメリットです。
DSDSは業務用とプライベート用の切り分けや海外出張の際の電話と(安いローカル回線を使った)インターネット接続用といったSIMの使い分けに有効です。こう見るとDSDSもDSDVも変わらないように見えますが、しかしながらDSDSには大きなデメリットがあります。それは、一方のSIMは4G回線でも、もう一方のSIMは3G回線となってしまうことでした。
現在国内主流の4Gは「LTE(Long Term Evolution=3Gの長期的な進化)」と呼ばれていますが、このLTEを使って音声通話を行う通信技術が「VoLTE(Voice over Long Term Evolution)」と呼ばれています。(VoLTEとは音声データをデジタルデータに変換し、他のデータと同じように“パケット”として扱い、LTE回線を使って通話をするというものです。)
DSDV対応機種では、このデメリットを克服しどちらのSIMでもVoLTEを使うことができます。
更に3Gと4Gの大きな差は通信速度です。
3Gでは数Mbps~14Mbpsですが、4Gは75Mbps~100Mbpsほどの高速度となります。
また3Gに比べ4Gではより広い音域を通信できるようになったため高音質であり、テレビ電話などの画質も高画質で通信することが可能となりました。また、通話呼び出しにかかる時間も遅延が短くなっています。
振り返れば、3Gは2000年代に主流であった技術で、NTTドコモの「FOMA」、auの「CDMA 1X」といったサービスで提供されていた通信規格です。(懐かしい名前ですね。)
デュアルスタンバイ機能を使うのに、例えばDSDSであったとしても、片方を海外使用、片方を国内使用と分けている場合は問題があまりない場合もあります。なぜなら発展途上国においては、まだ3G回線が主流の国があるためです。
しかし、今や5Gの商用化も始まっている時代。日本国内はもとより4G回線の整った国で使う場合は、インターネット通信がもっさり感じられ音声品質もあまり良くないなど、3Gでは物足りない感があるのも事実。(中国などでは一部のクラウドサービスが使えないなどもありますが)クラウドサービスの利用が前提となっているスマートフォンで3G回線の利用というのは業務ができないに等しくなってしまいます。
特に業務用とプライベート用の電話番号を分けたいという使い方で、どちらも通話品質やインターネット通信速度をあきらめたくはないという場合、DSDV対応機種で両方4G回線を使うのが良い手となります。
DSDV対応機種は数多く販売されていますが、選ぶときには契約したいプランに対応しているかを確認する必要があります。
具体的には、キャリアとプランごとに回線の周波数帯が割り当てられて決まっているので、その周波数帯に対応しているかどうかを調べる必要があります。
周波数帯は「Band1」「Band26」、「B1」「B26」と表されることもあります。「Band」「B」のあとの数値がキャリアの割り当てによって異なります。
DSDVには、片方で5G回線の利用ができ、5G+4Gとすることのできる機種も登場しています。
日本ではまだそんなに広まっていない5Gですが、早く試してみたい、でも全然使えなかったらどうしようと迷っている人もいるはず。まずはDSDVで試してみるというのも有りかもしれません。
二段目 ITが苦手な経営者向け
とある会社の社長、週末は山で山菜取りをするのが趣味です。週明けのある日、社長が足を怪我したという連絡が関係者に入りました……。
社長:「ごめんごめん、この週末に山荘へいったんだけどね、その際にうっかり足をくじいてしまって。皆さまには悪いけど、向こう3日間はリモート対応とさせてください」
出尾さん:「社長、大丈夫ですか、お大事になさってください。でも山から下りるときは大変だったでしょう」
社長:「そうなんですよ。家族に連絡しようにも、山の中だからスマホがなかなかつながらなくてね。かろうじて3Gがつながったから何とかなったのですよ。でも3Gはあんまり電波が良くないですね」
出尾さん:「電波が良くないというのは、3Gは通信速度が遅いし、音声品質もあまり良くないってことですね。」
社長:「そうそう。難しいことはよくわからないんだけど、そういうことです」
出尾さん:「3Gといえば、こんどの業務用端末の更新の件で、DSDV対応機種を考えているのですが」
社長:「デュアル……?? なんかの呪文ですかね」
出尾さん:「いえいえ。海外営業さん達が使う業務用端末の件です。デュアルスタンバイといって、1つのスマートフォンに2つのSIMを入れられる機能がついているものにしようと思っているんです。2つSIMを入れられると、1つのスマートフォンで2つの電話番号が使えるようになるんです」
社長:「はいはい。先週の会議で聞いたアレですね。現地の格安SIMを使ってコストダウンするという話ですね」
出尾さん:「そうです。その端末についてですが、2つのSIMが4Gと3Gが使える機種と両方とも4Gが使える機種があるんです」
社長:「そうなんですね。いやいや、いくら海外とはいえ3Gはちょっと通常業務には使えないでしょう。資料を見るのにも時間がかかりますよ。私も山で地図を見ようにも時間がかかりましたからね。国内では3Gも使えなくなりますしね」
出尾さん:「はい、そうなんです。そして時代はもう5Gですからね。海外でも4G対応にしておく必要があるかと思います」
社長:「はい、良いと思いますよ。両方4Gだと機種代が高いんですか?」
出尾さん:「価格はメーカーや性能によりますが、DSDV対応のものも多く市販されていて、差をつけて高いということはないようです」
社長:「わかりました。ではDSDV端末にしましょう。やっぱり3Gはちょっとね、今回の件でトラウマが……なーんちゃってね」
出尾さん:「ありがとうございます。ではDSDVで稟議にかけさせていただきます」
三段目 小学生向け
小学生のヨウちゃんは左利き。左手の方が上手に使えます。
でも、おはしを使うのやボールを投げるのは左手でも字を書くときは右手で書くのです。
「ヨウちゃん、右手で字書けるんだね」
クラスメイトのサンちゃんが話しかけてきました。
「右手で書くと、横書きのときに手にえんぴつの粉がつかなくていいもんね」
「いいなあ。ヨウちゃんは器用で」
実はサンちゃんも左利き。でも、右手で字を書くとグニャグニャしたヘンな字になってしまうのです。
「ぼくも右手で字を書く練習はしているんだけどね」
「わたしも、小さいときはそうだったよ。でも小学校に入るときに、毎日右手で書くように練習したら書けるようになってきたんだ」
「ヨウちゃんは左手でも字が上手だもんね」
ため息をついたサンちゃん。ガンバレ!
さて今回のテーマ「DSDV」は、いうなればヨウちゃんの両手のようなものです。え、どういうことかって?
DSDVとは、1つのスマートフォンで2つの電話番号を使えるようにできる機能のことです。
2つの電話番号には、それぞれドコモ、au、楽天モバイルやUQといったいろいろな会社のプランの中から選び、好きなプランを割り当てて使うことができます。
1台のスマートフォンで2つの番号を使えると、お仕事用の電話と自分の生活用の電話を使い分けられて便利なのですが、2つのプランを選ぶときに注意が必要となります。
DSDVの仲間にDSDSといって、1つは速くて使いやすい4Gといわれる通信回線、でももう1つは3Gという古くて少し遅い通信回線となってしまう機種があるのです。これは左手で上手に字を書けるけど右手では上手に書けないサンちゃんのように、片方は使い勝手が悪いということになってしまいます。
その点DSDVでは両方が4G回線を使うことができ、どちらの手でもきれいな字を書けるヨウちゃんのように、どちらの電話番号でも快適な通信を行うことができるのです。
もちろん、右手で字が上手に書けないからといっても左手でじょうずに字を書けるサンちゃんは、「絶対に右手で字を書かなければならないテスト」なんてものが開催されない限り特に困ることはないでしょう。
でも、2つの番号を使うスマートフォンでは、3Gの方の番号を使うときに不便となってしまうので、DSDVのほうが便利で良いのです。
さて、皆様のご理解は深まったでしょうか?
【執筆:編集Gp 星野 美緒】