いまさら聞けない【情シス知識】テレワーク/リモートワーク/モバイルワークの違い
働き方改革の盛り上がりもあり、近年、耳にする機会が増えた「テレワーク」と「リモートワーク」。これに対して昔からあったのが「モバイルワーク」や「在宅勤務」です。似たようなイメージを持つこれらの“ワーク”の本当の意味をスパッと答えることができますか? 似た言葉をここで整理してみましょう。
この記事の目次
テレワーク、リモートワーク、モバイルワークの違い
古くは“在宅勤務”に始まると考えられる“オフィス外”での勤務制度。働き方改革を実現するツールの一つとして注目を浴びています。まずはそれぞれの定義を整理してみましょう。
テレワークってなあに
テレワークとは、「tele = 離れた所」と「work = 働く」の意味を合わせて「オフィスに出社せずに離れた場所で働くこと」を指します。
働き方改革を推進する当の総務省は以下のように定義しています。
“テレワークとは、ICT(情報通信技術)を利用し、時間や場所を有効に活用できる柔軟な働き方です。” (総務省HPより)
つまり、パソコン端末や電話、タブレットなどを使って自宅や外出先などの会社外の場所で仕事をすることです。
近年、モバイル回線における通信速度向上や通信料金の低下、そして企業においても社外からのリモートアクセス環境が整備されたことから、従来はオフィスの中でしかできなかった業務を外に持ち出すことが可能となってきました。また、Office365やBOXなどどこからでも同じ作業環境につなげることができるクラウドサービスの普及も、オフィスの外での業務を後押しすることとなりました。
一方で働き方改革の名のもとに、ワークライフバランスの向上や災害時の通勤緩和のため等、テレワークを導入する企業も増えています。
テレワークの具体例としては、例えばプライベートで育児や介護を行っている従業員が出勤せずに自宅で業務を行う場合や、外回りをする営業部員が帰社せずに外出先で業務を行う場合などが当てはまります。
昨今、テレワークは育児や介護といった福利厚生目的ではなく、社員の生産性を上げるための施策の一つとして導入し始めている企業もあり、その成果も目を見張るものがあることから、ますますその利用は広がると考えられます。
リモートワークってなあに
さて、リモートワークの方はというと、「remote = 遠隔」と「work = 働く」を合わせた言葉であり、実はテレワークと同じ意味の言葉なのです。
“リモート-ワーク(remote work): 「テレワーク」に同じ。リモートワーキング。” (コトバンクより)
こちらも、出社せずに遠隔地で業務を行う働き方を指しており、テレワークの指す働き方と何も変わりありません。
ただ、サーバーなどの“リモート環境”という言葉になじみがあるためか、IT系企業では「リモートワーク」が使われることが多いようです。
なお、テレワーク(リモートワーク)は“毎日出社しないで勤務”、“日により出社する時もあるが、出社しない勤務”の両方を含みます。これらのうち、毎日完全に出社しない働き方は「フルリモート」と呼んでいるところもあります。(しかしながら、「フルテレ」とは言いませんのでご注意を。)
モバイルワークってなあに
モバイルワークとは、「mobile = 可動性」と「work = 働く」を合わせた意味として、場所に固定されずに移動しながら働くことを指します。可搬端末やタブレット、スマートフォンなどのモバイル機器を駆使して業務を行うことを指します。
クラウドも、その前はSaaS、ASPなどと時代とともにその名前は移り変わっていきましたが、モバイルワークもこれ同様、少し古い「デスクで仕事が中心」という時代の表現なのかもしれません。
例としては、営業部員やユーザーサポートなどの顧客対応を行う従業員が、その移動中や顧客先で業務を行うケースなどが当てはまるでしょう。
場所を選ばずどこでも働けるというワークスタイルで、モバイル機器から社内システムに接続して業務を行うなどがこれに該当します。
なので、自宅のデスクトップ環境を使って行う場合などはモバイルワークにとは言いません。
広義のテレワーク(リモートワーク)の一部としてモバイルワークが存在するといえるでしょうか。(しかしながら、本質的には古い表現と思っています。)
テレワークって、実際どこで働くの?
テレワーク(リモートワーク)=在宅勤務、というイメージがあるかもしれませんが、実はイコールではありません。在宅勤務とは、その字の通り自宅での作業を指しています。
しかしながらテレワーク(リモートワーク)を行う場所として、自宅以外も以下のような場所があります。
・サテライトオフィス、スポットオフィス
本社から離れたところにある事業拠点。特定の企業が所有する拠点で、その企業に所属する人が利用することができ、郊外や地方に設置される場合もあります。
・レンタルオフィス
レンタルすることで利用できるオフィススペース。オフィス機器や設備が一通り整っていて、利用者に個別の空間が仕切られています。レンタル料を支払って使用することができます。
・コワーキングスペース
公開されていて、特定の企業に所属する人でなくても利用できるオフィス環境の整った場所。何人もの利用者が一つのスペースに集まって使うことができます。無料で使える場所もあります。
・シェアオフィス
一つのオフィススペースを複数の人(または組織)で共有するタイプのオフィスです。こちらもレンタル契約することで利用できるオフィススペースですが、個別の空間はない場合もあります。コワーキングオフィスと似ていますが、公開されていないことが違いといえます。
もちろん、顧客企業の社内やカフェ、ファミリーレストランなどの利用も考えられますが、利用しやすさやセキュリティ上のことを考慮すると、こうした環境の整っている場所が望ましいといえます。
会社から離れて、どうやって働くの?
実際の働き方として、基本的には就業時間が決まっており、その時間帯に社内システムにアクセスしたり、手元の端末上での作業をするなどして業務を行います。組織やケースにより時間帯が決まっていない場合もあります。
最先端を行く会社では、コアタイムレスフレックス制を採用し、そもそもオフィスもない完全テレワークという強者な会社も存在します。
企業からすれば顔が見えない働き方であり、勤怠管理が一番の課題となります。これについては様々な手法で各社が取り組んでおり、事情もそれぞれに異なるため正解はないでしょう。しかしながら、社員をやる気にさせ、生産性を上げる、またはイノベーティブな取り組みを加速させるために採用することですので、あまりにがんじがらめな制度としてしまっては本末転倒といったところでしょう。先に紹介した強者な会社では「管理するということはコストセンターでしかないので、管理する人がいない会社を目指す」として日々努力がなされています。
このように課題の多い勤怠管理ですが、解決の糸口は制度を利用する側(社員)にもあると思います。会社側も性善説で取り組まねば普及も成功もしないテレワーク/リモートワークですが、社員側もこれに対し、自立した大人として真摯な態度で取り組むことで、効果が最大化されるのではないでしょうか。
また、労使関係がクリアとなれば、企業が次に恐れるのは、残業代未払いなど社会問題となることです。しかしながら、これらはシステムをチェックするなどITの力で今やいかようにも解決可能です。例えば、社有PCへのログイン/ログアウト時間や社内サービスの利用時間の記録を行い、本人の勤務申告時間と差異があった場合は確認を行うことで、残業代不払いなどを未然に防ぐことができます。
テレワークを採用することで、オフィスコストの節約ができるなど企業にとってもメリットがありますが、通常勤務の難しい従業員にも継続して働いてもらうことができたり、社員のQoLが上がったりと社員満足度を高めることに一役買うかもしれません。
まとめ
場所に縛られないテレワークは、従業員にとっても企業にとってもメリットのある働き方です。
働き方改革の推進により、導入する企業は確実に増えています。しかしながら、未だ在宅勤務は週1~2回を限度としていたり、対象者が育児・介護従事者のみと限られていたりと限定された適用であるケースも見られます。
今後、少子高齢化によって介護従事者の増加や働き手の不足などの社会的課題に後押しされ、企業はもっと柔軟に働き方を許容するよう変革が求められるようになるでしょう。
また、先日の台風や大雨でも証明されたように災害時の通勤が困難となったときにテレワーク環境が整っていれば、業務を止めなくても済みますし、通勤の負担も解消します。
備えあれば憂いなし。テレワーク環境・制度の備えは、これからの企業にとって必要なものなのではないでしょうか。
【執筆:編集Gp 星野 美緒】