【SORACOM Discovery 2019】IoTだけじゃない、情シス向けSORACOM活用術

2019年7月2日、グランドプリンスホテル新高輪・国際館パミールにて「SORACOM Discovery 2019」が開催された。

年を増すごとにその規模も大きくなるこのイベント。今年も多くのパートナーブースの出展もあり、朝早くから来場者が多かったことからも、その注目度の高さがうかがえる。

ソラコムといえば、AWS上にパケット交換等の機能を構成し、バーチャルキャリアを実現した画期的なMVNO事業者であるが、IoT/M2M向けにワイヤレス通信を提供するプラットフォームと理解している人も多いのではないだろうか。
セルラー、LPWA(LoRaWAN、Sigfox)を、1回線からリーズナブルに利用でき、それらの通信は、ウェブコンソールやAPIを通じて一括操作・管理することができるというのは、他のキャリアと異なるユニークな点である。また、その他にもIoTシステム構築に必要となる、セキュリティやデバイス管理、クラウド連携などのサービスが用意されており、これらを必要に応じて組み合わせて利用することで、少ないリソースでスピーディにIoTシステムを構築し、ビジネス活用を始めることができるという特徴を持っている。
実はこれらの特徴は何もIoTに限ったメリットではなく、情報システム部門にも役立つことが多い。今回のSORACOM Discovery 2019の中でも唯一IoT色のないセミナー「情報システム部門のSORACOM活用術」についてレポートする。

”SORACOMらしさ”が活かせる情シスの現場

基調講演では、「SORACOM Napter」や「SORACOM Funk」などの新サービス発表に会場は大いに沸いていたが、情シスさんには一見すると無縁と言ってもいい存在。しかしながら、改めてソラコムのビジネスモデルを見直すと情シスのお悩みを解決するソリューションが実現できる。

MVNOという回線速度の制約、またデータ単価問題から現実的なサービスにはならないと思っていたが、ソラコムもVPGの値下げデータ通信料の値下げに取り組んだ結果、SORACOM SIMを使った専用線サービスというのが、ペイラインに乗るかもしれないというのが、今回の大いなる興味である。

これまでの説明で「なんのこっちゃ」という方に、改めてソラコムの特徴を解説する。
ソラコムはクラウド上に自社開発通信設備をもっていることが、大きな特徴である。これにより、利用者(契約者)は、WebコンソールやAPIを通じてSIMの管理が独自に且つ個別に行えることにある。情シス的に例えるならば、自社Wi-Fiに接続できる端末をMACアドレスで管理するような感じといえばよいのであろうか? これに近い感覚で回線(SIMの有効化/無効化)を管理ができるのである。
次に、クラウド上に自社の通信設備があるからこそ、ネットワークとの親和性は高い。SORACOM DirectSORACOM Doorといったインターネットを介さないサービスが既に用意されており、自社サービスに閉域網接続できる点は大きな魅力といえよう。

<画像出展:SORACOMホームページより>

勘のいい方であれば、もう何ができるかはお分かりであろう。この二つの特徴を組み合わせることで、細かく利用状況を管理でき、且つ、外出先であっても、あたかも社内で作業しているかのような環境が構築できるのである。
少し乱暴かもしれないが、SIMスロット付きのPCにSORACOM SIMを入れておけば、VPN機器の設置や利用者のVPNに関するリテラシーの有無などを気にすることなく、セキュアなモバイル環境が約束されるのである。それも、妥当なレベルの利用料金で。
それが今回のセミナーでソラコムが提案した「情シス向けSORACOM機能活用」である。

情シス向けSORACOM機能活用とは

今回のセミナーでは、

・オンデマンドリモートアクセスサービス「SORACOM Napter」
・AWS閉域網接続「SORACOM Canal」+SORACOM Air SIMカード
・回線管理「ソラコム管理コンソール」

これらの3つの組み合わせで、セキュアなモバイル環境構築を提案していた。

「SORACOM Canal」にかかわらず、閉域網接続サービスを利用することで社内システムにようにアクセスができ、且つ、Active DirectoryなどのID基板連携やDNS設定が行えることは、端末管理の管理の観点から情シスの大きな助けになる。また、ソラコムらしさでもある自主的な回線管理は休眠資産のコストセーブに貢献し、IMEIロックによる紛失対策などコストセーブだけでないメリットも大きい。

では、なぜリモートアクセスは必要なのだろうか? この日発表された「SORACOM Napter」とは必要な時のみにPCやその他のデバイスへのリモートアクセスを許可するものである。SIM側でコントロールする為、端末側にエージェント不要という利点があるという。

セミナーでは、管理者のリモートメンテナンス(遠隔ヘルプデスク)などに効果があるという。「SORACOM Napter」により、任意のタイミングでリモートアクセスが行える。 仮に遠隔地に端末があった場合、(ハードウェアに起因する故障はどうにもならないが)何かソフトウェア的なトラブルがあった際や管理するネットワーク機器へのACL更新を行う際などに、管理者が端末に直接、そしてセキュアにアクセスができることは一つのメリットといえよう。

 

閉域網サービスのコストイメージ

閉域網接続ができることのメリットは理解できるが、では、実際にどのくらいの費用がかかるのであろうか?
当日は新料金体系の発表も併せて行われており、最新の試算内容の提示もあった。

1000回線契約時ではあるが、1回線当たり、「月額2,651円」で閉域網接続が提供されると考えれば、これは十分に検討に値する価格ではないかと思う。

ただし、その試算条件が3GB/月のデータ転送量となっている点には注意が必要である。モバイルでの利用が多い環境ではもう少し高くなることを念頭に置き、自社の実情にあてはめて、試算することをお勧めする。

 

5G、その他の技術は?

SORACOMにはauという後ろ盾もあり、必要に応じて5Gへの展開も始まるであろう。利用者視点で考えれば、通信回線の高速化はWelcomeでこそあれ、ネガティブな要素はない。強いて言うならば、データ利用料金であろう。(官房長官に4割削減とまで言われている状況で、5Gなので値上げしますとはならないだろうが)
現状、SORACOMは従量課金制の為、無駄がないという一面もあるが、今後、テレワークやリモートオフィスでの利用が加速することを想定すると将来的にはより魅力的な料金設定を求められるようになるかもしれない。

一方、「LTE over IP」(参考:使える! 情シス三段用語辞典59「LTE over IP」)を使ったサービスもようやく登場する。通信の秘匿性や公衆無線LANの有効活用など、メリットも大きいが、まだまだ立ち上がったばかりで、コスト的に今回の「情シス向けSORACOM機能活用」の提案と肩を並べるレベルになるまでは、もう少し時間がかかりそうである。

費用面で問題がないのであれば、まずはテスト導入してみることをオススメする。実務で使うことで見えてくる問題も多いからだ。

 

【執筆:編集Gp ハラダケンジ】

 

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