自動化もデータ連携も、求められれば“いろんなことができる”Excelと Access。万能系の呼び声高い”鉄板”業務ツールですが、「属人化」という大きな落とし穴も。そこに対する懸念は年々高まっており、現在は数多くのソリューションがリリースされています。今回は、属人化の問題とその対策を見ていくことにしましょう!
この記事の目次
【危険?】Excel&Accessはいつの間にかガラパゴス
世の中のビジネスサイクルは早く、人手も足りないのが現状。さらに高齢化も加わり、悠長に引き継ぎしているヒマもありません。さて、そんな状況のなかで、必須の業務ツールとしてPCに鎮座しているExcelやAccessを見つめ直すのが今回のテーマ。必須というより“あって当たり前”のツールですが、実は長期にわたり活用、しかもかなり依存していると少し危ないかも?そんなお話です。
まず、Excelについて。単なる「表計算ソフト」というイメージがあるものの、VBAマクロを使えばルーチンまたは複雑な作業の自動化も可能。さらに、下のようなきれいな風景画も描けちゃったり、VBAで往年のゲームソフトも再現可能な万能系ツールです。
<画像出典元:http://pasokonga.com/Gallaly013.htm>
続いて、Access。言わずと知れた「データベース管理ソフト」。DB作成だけじゃなく、データ加工&分析に加えて、顧客/在庫管理システムなどのアプリもつくれちゃう。こちらもExcel同様の万能さ。
世の中、万能ツールほど、ユーザーにとってはありがたいものはない。でも、近年の業務では、そんなありがたさが“アダ”になっています。それが「属人化」であり、Excel & Accessではかなり根深い問題のようです。
【Excel属人化①】レポートが、どうつくられているのか他人に理解不能
要望に応えるべく作成した全社的レポート。複数のシステムからさまざまなデータを引っ張り出して統合。見やすいように、グラフも入れていっちょ上がり。最高の出来栄えだ。多彩なデータを要するレポート作成もExcelではなんのその。
しかし、それはレポートを作成する“当人だけ”のこと。複数のデータを扱う場合、その手順が属人化しやすくなり、レポートがどうつくられているのか、他人からは理解できず、担当者以外はレポートがつくれない懸念があります。
【Excel属人化②】マクロ地獄
VBAを使ってマクロで作業を自動化。「入力フォーム作成」「データの自動集計」「複数のPDFのテキストを一覧」「グラフ自動作成」など、多くの人がその恩恵を受けていると思います。このように、“こんなことできるかも”に対応してくれる便利な機能がマクロ。でも、いろいろと試した結果、作成したソースコードの内容が第三者と共有できず修正・カスタマイズ不可に。加えて、長大なソースコードがPCメモリを圧迫するなど、業務効率を低下させる傾向にあります。
【 Access属人化①】他のDBMSとの連携が困難
他のDBMSと異なり、GUI操作で簡単にデータベースを構築できる Access。でも、慣れていない初心者でも操作できる一方、 Accessのみで扱えるデータになりがち。簡単にできるからとあまりに巨大なテーブルを構築してしまうと、他のDBへの移行が困難になります。
【 Access属人化②】ファイル破損が起こりやすい
Accessのファイルは壊れやすいと耳にすると思います。複数のPCから同時にファイルを扱うと破損、Accessバージョンアップで破損。さらには、PC→ノートなどでバージョンの異なる Accessで開いたり、Windowsの定期アップデートでも。つまり、Accessは「同じ環境」で扱うことが求められ、結果部門ごとや担当者に依存しがちです。
【 Access属人化③】テーブル作成や動作設定がそれぞれ異なる
テーブルやフォームの作成やVBAマクロによる動作設定など、 AccessでのDB構築は自由度が高く、担当者それぞれが扱いやすいようにカスタマイズできます。でも、それが問題となり、退職などの理由により制作者不在の場合、DBの修正が不可能になってしまう懸念があります。
「自分だけの業務効率化」に待った!−−
Excelも Accessも非常に便利なツールであるがゆえ、上記のように属人化を促す性質を持っています。簡単に扱え、VBAは他の言語よりも覚えやすく、自動化もデータ連携もやろうと思えば初心者でもマクロを使える。ここから、万人向けのツールのはずが、いつの間にか“自分専用のツール”に変貌してしまうのです。しかし、業務ツールは、「習熟度、知識に依存しない」ものであるべき。属人化を招く活用は、十分に注意を払わなければいけません。とは、いうものの・・・、業務効率化は必須。スムーズに作業でき、かつ属人化の心配もない、そんなよい方法はないものでしょうか? そこで、「脱Excel」「脱 Access」のソリューションを紹介していきましょう。
【脱Excelソリューション】
『kintone』:言わずと知れたサイボウズの業務アプリ開発サービス
「脱Excel」目的で導入するユーザーが多いことでも知られる。データを登録しておくだけで自動集計しグラフを作成してくれる機能があり、エクセルでは複雑だった多彩なデータのレポートも楽々。クラウドサービスの特性を生かし、メンバー追加だけで過去データや処理状況を共有できるので、引き継ぎもスムーズ。また、従来では困難だった複数名によるデータの同時更新・編集も可能。さらに、メンバーのリアルタイム共有、マルチデバイス対応によるスピーディな確認・承認もできる。
だが、kintoneは従来のExcelのように、「大量のデータの一覧表示」が不得意な点には注意が必要。この場合、プラグインであある「krew Sheet」の活用がオススメ。krew Sheetは「kintoneをExcelのように動作させる」ものであり、従来のExcel感覚で扱える。
<kintone:https://kintone.cybozu.co.jp/jp/>
<krew Sheet:https://krew.grapecity.com>
『プリザンター』:脱エクセルを目的につくられたクラウドサービス
表・グラフ、テキストデータの保存・編集など、従来のExcel作業をWebで行えるサービス。使い方は「テンプレート」を選ぶだけど簡単。たとえば、情シスであれば「パソコン資産管理」「ソフトウェアライセンス管理」、営業であれば「営業日報」「顧客情報管理」など、目的に合ったテンプレートを選ぶだけで、作業環境が整う。データの共有もスムーズで、業務に合わせた項目の追加や計算式設定などのカスタマイズも可能。利用人数3名まで無償で利用でき、かつライセンス費用不要のOSSも用意されている。
<プリザンター:https://pleasanter.net>
どうしても、脱Excelが難しい場合は?−−
上記のようなソリューションがあるのはわかっている。でも、実際にやめるのは難しい・・・。そんな場合に期待できるソリューションもあります。それがこちら。
『軽技Web』:誰でも簡単に扱えるシンプルBIツール
シンプルなGUIと操作性で事業部でも扱えるBIツール。「Excelテンプレート機能」では、軽業Webから、従来のExcelデータの検索結果をダイレクトに呼び出せる。また、明細集計やクロス集計などの機能もあり、Excelでの編集も可能。また、グラフ自動作成機能や、さまざまなDBの複数データを軽業Web上でまとめて検索・集計できるのも魅力。
<軽業Web:https://www.karuwaza.com>
【脱 Accessソリューション】
『UnitBase』:ノンプログラミングで構築できるWebデータベース
Webブラウザで構築できるデータベース。OSやバージョンにかかるメンテナンスは不要。DB構築は必要項目をドラッグ&ドロップと初心者でも簡単で、ExcelやCSVデータの入出力にも柔軟に対応。Accessでは難しかった「アクセス権設定」「メール通知機能」も手軽に追加でき、ノンプログラミングなので引き継ぎも楽々。
<UnitBase:https://www.justsystems.com/jp/products/unitbase/>
PCに依存しない「管理の見える化」で安心な環境を−−
上記で紹介したソリューションの大きな特徴が「クラウド」や「誰でも同じように、管理やカスタマイズが可能」なこと。ローカルPCに依存せずプログラミングが不要なことから、属人化を未然に防ぎます。脱Excel、脱 Accessともにソリューションは他にも複数ありますが、「管理が見える」や「共有がスムーズ」である点を重視し、適したツール/サービスを選ぶとよいでしょう。
【執筆:編集Gp 坂本 嶺】
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