『リモートワークノススメ』情シスにもリモートワークは可能か!?

政府は11月をテレワーク月間と定め、時間と場所を選ばない働き方を推進しています。中には完全リモートワークにしてしまい、オフィスを廃止してしまった企業もあるとか。

果たして情シスにおいてもリモートワークな働き方は成立するのでしょうか?今回はそんなテーマでお話しします。

【働き方改革】リモートワーク(テレワーク)はなぜ必要?

リモートワークとは、インターネットを活用して、自宅やカフェなどオフィス以外の場所で時間を選ばずに仕事をする形態を指します。テレワークも同じ意味で使われます。

日本生産性本部「日本の労働生産性の動向2017年版」によると、2016年の日本の労働生産性は、OECD加盟35カ国中21位で加盟国平均を下回っています。

画像出典:「労働生産性の国際比較

その一方で多くの人に長時間労働が強いられているのが現状で、結婚・育児・介護の問題で望まない退職をしている人もいます。

少子高齢化社会に拍車がかかり、人手不足がますます深刻になるなか、仕事とプライベートをどちらも大切にしつつ、生産性を高めていくこと求められています。

さらに2018年には働き方改革関連法案が成立し、一億総活躍社会に向けて、誰もが働きやすい環境を構築していく取り組みが加速しています。

画像出典:「テレワーク推進に向けた政府の取組について

こうした働き方改革の一環として注目されているのがリモートワーク(テレワーク)です。往復の通勤時間が削減できるうえに、仕事をしながら介護や育児で見守る、子どものお迎えの時間だけ仕事を中断するなど、柔軟な働き方が可能です。

また、2011年に東日本大震災が発生し、その後も各地で深刻な災害が発生していることも注目される理由です。もし、災害が発生して会社が勤務できない状態でも、それ以外の場所で勤務することができれば、事業へのダメージを抑えることができます。

【賛成?反対?】導入する企業、禁止する企業

導入する企業でシンボル的な存在が、ワードプレスを開発しているオートマチック社です。ワードプレスはもともとオープンソースなので、世界中のエンジニアが改修をしながら育てていったシステムです。

そのため会社となった今でも700人以上いる社員は世界中に点在しており、世界中を旅しながら働いている社員もいます。以前はオフィスがありましたが、誰も使わないためクローズしました。

ちなみにオートマチック社は、年に1回1週間、社員全員が集まるミーティングがあり、世界各国で開催しているのだそうです。もちろん旅費・滞在費は会社が支給。夢のような会社です。

日本でも完全リモートワークの会社は増えてきています。なかでも株式会社ソニックガーデンは、リモートワーク導入の草分け的存在です。

2016年にオフィスを撤廃し、全員がリモートワークで勤務しています。管理職を置かず、会社全体・社員全体の売上などすべての情報を公開するというユニークな経営方式をとっています。

受託開発についても「月額定額制(サブスクリプション)」というユニークな契約形態をとり、クライアントの満足度を高めつつ、エンジニアの働き方に配慮したビジネスモデルを推進しています。

新卒者はまず経営者が対面で教育し、それからはリモート師弟制度によって優秀なエンジニアと組んで仕事を学んでいくという体制がとられています。

一方で、アメリカではリモートワークを導入したにもかかわらず、一転して禁止した企業もあります。

例えばアメリカのYahoo!は2013年に在宅勤務が原則禁止となりました。当時CEOのマリッサ・メイヤー氏は「在宅勤務はスピードと仕事の質が損なわれる」旨のメールを在宅勤務者あてに送付しました。

また、アメリカのIBMは2009年に社員の40%がリモート勤務をしていると公表し、リモートワークをひとつの戦略として位置付けました。しかし、2017年に数千人のリモートワーカーをオフィス勤務に戻したという報道がなされ、リモートワークについてはかなりトーンダウンした印象があります。

また、中には最初からリモートワークを禁止している企業もあります。メルカリではコミュニケーションを大切にしているという理由でリモートワークを推奨していない方針を明言しています。

LINEもリモートワーク非推奨企業と言われており、2017年に移転した新オフィスには保育園や防音個室スペース、ビリヤードスペースを用意するなど、楽しくコミュニケーションを図る仕掛けづくりに注力しています。

【業務を振り返る】情シスでもリモートワークは可能?

このように企業によってリモートワークの捉え方はさまざまですが、情シスの仕事もリモートワークは可能なのでしょうか。

情シスの主な仕事としては、以下の4つが挙げられます。

1)システム企画
2)システム・社内インフラ構築
3)運用・保守
4)ヘルプデスク

それぞれの仕事がリモートワークでできるか改めてみてみましょう。

1)システム企画
システム企画は、社内にITを戦略的に導入するために、業務・システムの概要定義を行う仕事です。各部門からヒアリングを行い、システム範囲を定義し、外部に委託する場合はRFPを作成します。
各部門や経営層とのコミュニケーションを円滑に行うプロセスさえ確保できていれば、リモートワークも可能となります。

2)システム・社内インフラ構築
社内の基幹システムの開発をする、メールやチャットツールといった社内で使うツールを導入するといった仕事です。
システム構築を外部に委託している場合でも、外部の企業と定期的なミーティングが欠かせません。そのような場合にはWeb会議システムを活用するなどで遠隔でも打ち合わせが可能です。
昨今ではシステムをオンプレミスからクラウドに移行する流れが加速しており、オンラインでシステム構築・社内インフラ構築をできる範囲も広がっています。このようなことからもリモートワークも不可能ではありません。

3)運用・保守
構築した基幹システムや社内システムのトラブル対応やシステムの監視を行うのが仕事です。
監視作業についてはアウトソーシングしてリモートで作業する形態も増えており、リモートワークとは親和性が高いです。システムメンテナンスについても昨今ではサーバーやスイッチはブラウザから設定を変更できるようになっており、サーバルームへ駆けつけて作業する場面も減ってきています。
これらのことからリモートワークは可能かもしれません。

4)ヘルプデスク
社内のパソコン、業務システム、ネットワークに関して技術的なサポートを行う仕事です。また、社員のためにパソコンの環境設定を行い配布する仕事(キッティング)もあります。
ネットワークやシステムのトラブルであればオンラインでも完結できますが、パソコン、特にハードウェアに起因するトラブルはオンラインでの解決が難しい部分ではあります。
パソコンの初期設定や社内FAQに掲載されているような質問は、チャットボットなどを活用し、そもそもヘルプデスクの業務を手放し、社員が独力で解決できる環境を提供することなどで、リモートワークの可能性も少し近づくのではないでしょうか。

【始めてみよう】リモートワークはスモールスタートから

情報シスについても日数を限定してリモートワークを認める企業が増えてきました。週に1日でもリモートワークをすると「生産性が上がりプライベートのちょっとした困りごとが解決できる」という声も聞かれます。
作業自体にチームワークが必要な場合は難しいかも知れませんが、基本的な作業が個人ベースであれば、あとは作業を実行するための情報収集、すなわちコミュニケーション環境が整っていれば、あなたのオフィスでも情シスのリモートワークは可能かも知れません。

しかしながら、限定的なリモートワークは、コミュニケーションの場が結局のところオフィスに限定されてしまうため、生産性が上がらないという指摘もあります。

また、リモートワークによる生産性の向上を追求するなら、ひとつのチームだけ完全リモートワークにするという方法などもあります。

働き方は企業風土に深くかかわるため、向き不向きがあるのも事実。ひとつのチームでお試し完全リモートワークにすることで、さまざまな効果や課題が洗い出されます。

そもそもそれ以前に社内インフラがリモートワークに適しているかが大前提となります。これからは働きやすい環境にするという観点で社内のシステムを見直していくことも情シスの大切な役割になっていくでしょう。

【執筆:編集Gp 山際 貴子】

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