【情シス豆知識】すべての企業のITを応援!? 「IoT税制」ってなに?
- 2018/8/20
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- IoT税制, コネクテッドインダストリー, 助成
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「IOT(コネクテッド・インダストリーズ)税制」の受付が今年6月よりスタートしました。コネクテッド・インダストリーズとは、日本版インダストリ4.0。つまり、企業のIoT事業を支援する税制です。IT税制としては、15年ぶりということもあり、大きな注目を集めています。その概要とメリットをご紹介します。
この記事の目次
【15年ぶりのIT税制】国内企業のIT投資をがっちり支える、税制がふたたび
2018年6月6日より、「IoT(コネクテッド・インダストリーズ)税制」の受付がスタートしました。別名“IoT税制”ともいいます。なにやら、カッコいい感じのする名前の税制ですが、一体どんな内容なのでしょうか? 今回は、「中小企業にも大きなメリットが期待できる」IoT(コネクテッド・インダストリーズ)税制について触れたいと思います!
すべての企業のIT投資を促進させる、IoT(コネクテッド・インダストリー)税制とは−−
2017年12月22日に閣議決定された「平成30年度税制改正大網」で創設されることが決まった、「企業のIT投資を促進」させるための税制です。
IT投資促進というと、まず思い浮かぶのが「IT投資促進税制」。
こちらは2003年にスタートした税制で、すべての企業が自社利用するIT投資について、「取得価額の50%を特別償却」または「10%の税額控除」できるというもの。それ以前の「IT投資減税」では「中小企業のハードウェア投資のみに7%の税額控除」が認められていましたが、IT投資促進税制では会社の規模は不問。加えて、ハードウェアだけではなくソフトウェアも対象になった、“大盤振る舞い”の税制といえました。
さて、そこから時を経ること15年。今回のIoT(コネクテッド・インダストリーズ)税制に至るわけですが・・・、こちらも大盤振る舞いは変わりません。IT投資促進税制のように会社の規模、業種関係なしで申請できます。
つまり、ふたたびすべての国内企業のIT投資を促進させる大きな波が、やってきたのです!
【確認】IoT(コネクテッド・インダストリー)税制の概要とメリット
それでは、コネクテッド・インダストリー税制の概要・メリットを見ていきましょう。
まず対象は、業種や資本規模による制限はありません。「青色申告事業者」であれば、誰でも申請を行えます。
メリットは、最低合計額5,000万円〜の設備投資の「30%の特別償却」または「3%の税額控除」です。税額控除については、「平均給与等支給額の対前年比増加率が3%以上」の条件を満たすことで、3%→5%の控除となります。ちなみに、IoT(コネクテッド・インダストリー)税制の適用期間は2021年3月末の3年間とのこと。
出典:http://www.kanto.meti.go.jp/seisaku/iot_robot/iot_zeisei.html
税制借置を受けるためには、「一定のサイバーセキュリティ対策が講じられたデータ連携・利活用により、生産性を向上させる取り組み」を、「事業計画」として作成・提出。主務大臣の認定を受ける必要があります。要件は以下の3つです。
①:「データ連携・利活用に関する一定の取組」
社外データやこれまで取得したことのないデータを社内データと連携。または、企業の競争力において重要となり得るデータをグループ企業間や事業所間で連携させる取り組みであること。
②:「セキュリティ面」
「データへの不正アクセス対策」「システムの脆弱性がない」「ネットワークのセキュリティ対策」など、情報漏えいを防ぐ対策が講じられていることを、登録セキスペ等*により担保されていること。
*大企業・・・情報処理安全確保支援士、中小企業・・・ITコーディネーターなど(外部でも可)
③:「生産性向上目標」
投資年度から一定期間において、「労働生産性:年平均2%以上」「投資利益率:年平均15%以上」の見込みがあること。
投資設備について—
いちばん気にかかるのが、投資すべき設備はなにか? ということ。経済産業省は「ソフトウェア、器具・備品、機械・装置」としています。
これは、先述の「一定のサイバーセキュリティ対策が講じられたデータ連携・利活用により、生産性を向上させる取り組み」に必要な、「ソフトウェア、器具・備品、機械・装置」となるわけですが、極端に言ってしまえば計画に欠かせない設備であれば、なんでもよいのかも? でも、以下のように対象外のものもあるので注意が必要です。
<対象外の設備>
しかしながら、さすがに税金が使われるだけあって、景気向上に直結する新規購入が原則です。「中古設備」、「貸付設備(賃貸資産)」、「試験研究、ソフトウェア業、情報処理サービス業、インターネット付随サービス業の事業に用いられる資産」。加えて、資産計上できるもののみが対象となるため、費用計上される「クラウドサービス利用料」は対象外となります。
【税制のねらい】レガシー・システムの刷新にあり!?
コネクテッド・インダストリーズやIoTに関連する税制というと、「先端テクノロジーを明日から事業に生かそう!」という印象も受けますが、内情は少し違うようです。
文脈的には同様かもしれませんが、IoT(コネクテッド・インダストリーズ)税制のねらいは、「先端テクノロジーを活用したシステムの導入」に重きを置くよりも、おそらく「レガシー・システムの刷新」を重視しているように思われます。つまり、先端を求める企業より、旧来の環境を維持してきた、またはそうせざるを得なかった企業に向けた税制なのではないでしょうか。(聞いたところでは、これとは違ったレガシー刷新の助成の話もあるとかないとか。)
製造業では、現在でもすでに生産が終了している「PC-98シリーズ」で製造設備を制御している会社が少なくないといわれています。このような環境では、当然データ連携・活用はきわめて困難であり、「日本版インダストリ4.0」であるコネクテッド・インダストリーズの実現も遠い。そして、日本の企業は海外に比べIoTに消極的です。そこに対するテコ入れが、IoT(コネクテッド・インダストリーズ)税制なのでしょう。
時代は今やIoT時代。好む好まざるを問わず、あらゆる産業の基盤をITが担いつつあります。この状況にあって、税制借置を受けながら、ゼロから本格的なIoT環境を構築できる。これは大きなチャンスにほかなりません。無論、IoTは手段であって、目的ではないので、何のために導入するかはキチンと見極めておかないといけないことは大前提ですが。
レガシー・システムを持つ企業が、新しい時代の新しいビジネスへと向かう。IoT(コネクテッド・インダストリーズ)税制は、そのためのステップアップを支えてくれる税制なのです。
【執筆:編集Gp 坂本 嶺】
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