【情シス豆知識】愛される情シス・嫌われる情シス
情シスというキーワードを検索してみると、その存在感を賞賛する記事はあまり多くはありません。なかには「嫌われる情シス」などのタイトルもあり、情シスあるあるではありませんが、会社での情シスの立ち位置が懸念される情報がちらほら。なぜ、そのようなネガティブイメージが蔓延してしまっているのでしょうか?そしてどうすれば愛される情シスになれるのでしょうか?
この記事の目次
【風当たり強い?】情シスは、社内でどう見られているか
あまり知らない相手であれば、第一印象がその人のすべてになってしまうことも。高圧的なら「イヤな人」、無口なら「暗そうな人」。逆に、面白かったら「楽しそうな人」、褒めてくれたら「素敵な人」・・・。思えば勝手なものですね、人間の感情って。
さて、こんな“たぶん”なイメージも、人対人ならまあよいものの、これが会社の部門だとすると困りもの。なぜなら、“変”なイメージがつくと仕事がしづらくなるから。でも残念ながら、その最たる部門が実は情シスという声も。 『関わりたくない部門だなんて、ソンナコトイウナヨ・・・。』今回はそんなお話です。
どんな遺恨があったのか、はたまたどこで地雷を踏んだのか? なぜだか他部門からイヤなイメージを持たれがちだという情シス。日経×TECH(日経クロステック)の記事に目を向ければ、『嫌われる情シスをPRAは救うか』なんてタイトルも。「きらい=情シス」はすでに代名詞なのでしょうか・・・。
そこで、情シスが嫌われる理由について調べてみました。すると、こんなところが代表例のようです。
・「融通がまったく利かない」
・「わざわざ使いづらいシステムにする」
・「口を開けば、セキュリティ&ガバナンス」
・「いちいち言葉がむずかしい」
言葉がむずかしいのは、確かにそうかも知れません。例えば、「これほどまでにセキュリティ徹底の啓発やインシデント事例の詳細な収集を行うのは、ハインリッヒの法則とドミノの法則の観点からみても当然」とか、「このスクリプトはシーケンシャルマッチングしたソート済みのCSVデータの各結果をファイル出力するため」等など。まず日常では使わないし、意味を知らない人にとっては宇宙語かと感じさせてしまいそう。
でも、「融通が利かない」「使いづらいシステム」「セキュリティ&ガバナンス」は、会社としての安定運用を考えてのこと。ネットワーク&マスタは業務の基盤だし、ソフトはビジネスの手足。使えなくなったら困るのは会社です。
では、そんな情シスを会社としてはどう思っているかというと、経営層からは「何をやっているのかわからない」というお声もちらほら。
なるほど。経営層の役目は当然経営で、そこを左右するのは事業部門。情シスは直接的な利益貢献が計れる機会がとても少ない為、わかりづらいといえばわかりづらい。でも、今やITがなければ業務が立ち行かない世の中であることも事実。そのリテラシーを会社に変わって習得し、事業部門がスムーズに稼働できるようにしているのが情シスであるはず。
このように、それぞれの理由をつぶさに見ていくと、情シスは嫌われる理由はなんらなく、会社の情報システム業務に日ごと夜ごと粉骨砕身。もっと、褒めてやってくれてもよいのではと感じます。
それでも止まらない情シスのネガティブイメージ。一体、なぜなのでしょうか?
【提案】情シスに足りなかったこと。愛される情シスになるには・・・
確かに、情シスの安定運用は先手必勝の事業部とは真逆。だから、然るべきことをやっていても、疎まれるのはなんとなくわかる。でも、実はそれは本質ではなくて、冒頭のように、“たぶん”なイメージがそのまま尾を引いているような気がします。であれば、必要なのはやはり・・・、
にあるのではないでしょうか。
お互いの方向性が異なるのであれば、まず「理解し合う」ことが大切。そこから、ときには衝突したり歩み寄ったりしながら、関係性をつむいでいく。良いことも悪いことも屈託なく言い合える、そんな対等の関係であれば、まず“嫌い”などというキーワードは出てこないでしょう。
しかしながら、「イヤなイメージを勝手に抱かれて、何故こちらから歩み寄らなければならないのか?」と、感じる人もいることでしょう。確かに、システムを使う事業部門が、はたまたリテラシーのない経営層が、“今まで誤解していた”と言って欲しいものが正直なところ。でも、そこはグッとこらえておきましょう。大切なのは、旧来からの情シスのイメージを打破することです。
【施策】コミュニケーションを情シスのエンジンに!
ここで、情シスに求められるコミュニケーション事例を詳細に挙げていきたいところですが、情シスの業態は千差万別。それゆえ、先例を再考してみます。
①「融通がまったく利かない」
②「わざわざ使いづらいシステムにする」
③「口を開けば、セキュリティ&ガバナンス」
④「いちいち言葉がむずかしい」
①〜③と感じさせてしまう理由、それは結局、「なぜなのか?」が事業部門にはわからないから。意思疎通のない状態で定型文のような説明をしても当然理解は得られません。まず事業部の立場に「寄り添う」ことが重要です。そして、“なんでも頭ごなしに断る”のは要注意。いつしか事業部の打診を断るのがルーチンになったという話も聞きますが、それは忌避感をあおることにつながります。大切なのは、「内容を受け入れ、考える」こと。そこからコミュニケーションもはじまります。
④では、「自分の業務をわかりやすく伝えるスキル」を身につけましょう。専門用語を誰にでも理解できるようにするのは骨が折れます。でも、それを心がけていけば情シスがどのような仕事をやっているのか、明確なPRにもなります。
社内SNSや掲示板の活用も効果的−−
コミュニケーションの基本は、相手の質問を待つのではなく、まず「自分の思いを伝える」ことです。情シスは管理・運用がコア業務になるからか、情報発信については消極的になりがち。そうではなく、社内SNSなどを活用して、自らのことを積極的に社内に知らせ、コミュニケーションづくりをしていきましょう。
ベンダーとのうまい付き合い方−−
事業部門とベンダーが直接やり取りをして、情シスは手続きのみで蚊帳の外という話を聞くことがあります。その理由もやはり、コミュニケーションにあると感じます。
「業務を効率化し生産性を向上させる」観点では、事業部もベンダーも一致。一方、セキュリティ&ガバナンスを一義とするのが情シス。それゆえ、情シス、事業部、ベンダーこのトライアングルのなかで、情シスは脇役です。とはいっても、運用がはじまれば情シスが担当することになるのですから、ここはあらためなければいけません。
そのためにはまず「自社の事業を知る」ことです。「業務に必要なものはなにか?」を判断できる知識を養い、ベンダーとも対等な立場でやり取りを行う。そうすれば、幾多の装飾語で飾られた“きらきらシステム”ではなく、自社システムのベストプラクティスをめざせるはずです。結果、これも事業部とのコミュニケーションにつながります。
【時代】情シスの未来はコミュニケーションの先にある
さて、上述した事例を実行に移すのはかんたんなことではありません。しかし、根底にある課題は「コミュニケーション不足」。ちょっとした心がけで関係性は変わっていくのも事実です。
はじめに紹介した日経×TECHの記事のタイトルのように、今RPAに注目が集まっています。その詳細は別の記事で触れようと思いますが、この業務ツールは情シス、事業部門双方にメリットがあります。例えば、このようなツールを、コミュニケーションのきっかけとして提案してみるのもよいでしょう。「情シスの提案で生産性が向上した」となればしめたものです。
よいコミュニケーションの構築は、必ず情シスに活躍の場を提供してくれます。理解されないとは思わず、ぜひ、事業部門とのよい関係性の構築にチャレンジしていきましょう。今日注目を集める「攻めの情シス」や「IT戦略部隊へのシフト」も、結局コミュニケーションなくしては成り立たないのですから。
【執筆:編集Gp 坂本 嶺】