Windows10時代のPC調達術~「ライフサイクル」を意識して賢くPCを使う~6
PCの「ライフサイクル」を意識したPCの導入について解説する「Windows10時代のPC調達術」。最終回の6回目は、PC導入におけるライフサイクルの終わりとなる「古くなったPCの処分」について考えます。(構成・文:三好裕紀<Yu-Factory>)
この記事の目次
第6回 ライフサイクルの終点「PCの処分」を考える
処分にもコスト 簡単には捨てられないPC
「性能が落ちて使い続けるのが難しくなった」「故障が頻繁に起こるようになってきた」など、理由はさまざまですが、PCは入れ替えの時期が必ず来ます。その時、今まで使っていたPCはどのように処分すればよいのでしょうか。
PCの処分というと、みなさんが最初に思い浮かべるのは、「不要だから捨てる」ということでしょう。しかし、PCは、自由に廃棄はできません「資源有効利用促進法」という法律で、不要になったPCはメーカーに回収義務があるからです。そのため、法律にしたがって処分する必要があります。
実際の処分では「PCリサイクルマーク」が貼られている家庭用PCはメーカーが無償で回収してくれます。しかし、業務用の法人向けPCにはマークが付けられていません。1台あたり数千円程度のお金を払って回収してもらうことが基本になります。つまり、業務用PCを処分するためにはコストがかかるのです。
買い取りサービスを利用すれば処分費用が不要に
もし、処分のコストをかけたくないのであれば、「中古PCの買い取りサービス」を利用する方法があります。これは、中古PCの回収・引取り専門会社や事務機器ディーラーなどが行っているサービスです。
サービスを利用すれば、廃棄の費用が不要になる上に、PCの状態に応じて買い取ってもらった金額を受け取ることができるので得です。また、サービスを行う事業者の中にはHDD(ハードディスク)などのデータ消去を無料で行ってくれる会社もあります。消去サービスも利用すれば廃棄コストをトータルで削減することも可能になるわけです。
買い取りサービスで回収されたPCは、一般的には再整備が行われ「リユースPC」として市場に売りに出されます。その結果、間接的になりますが、廃棄物の発生を抑える環境負荷低減という社会貢献活動にもなります。
業務用PCを処分したい会社にとっては、いいことずくめの買い取りサービスですが、一方で事業者によって買い取りの台数などの制限があるケースもあります。そのため、利用する際にはサービス内容などを十分に調べることが必要です。
また、リースやレンタルで調達したPCの場合は処分の費用はかかりません。リースでは終了時に再リースや買い取りをしなければリース会社が回収します。レンタルはPCを借りているだけなので、利用期間が終了すれば返却をするだけで済みます。
「データ消去」も忘れてはいけない
一方、PCを処分する時に忘れてはいけないのが「情報漏えい対策」です。具体的には「ディスク内のデータ消去」になります。
ディスク内のデータ消去では「初期化すれば大丈夫」と考えている人は少なくないと思います。しかし、これは大きな違いです。実は、OSによるフォーマットやリカバリーディスクによる初期化は、ディスクの内容をほとんど削除しません。「ディスクのどこにどんな情報を書き込んだのか」という情報を消すだけなのです。もし、悪意を持った技術力のある人がディスクを入手した場合、ディスク内に残っているデータを直接読み取ったり、ファイルの復元ができたりしてしまいます。
そこで、PCの処分やリユースを手がける会社では、ディスク内のデータを完全な形で消去するサービスを行っています。その方法には、データを上書きする「上書き消去」、ディスクをV字に折り、穴を空けて壊す「物理破壊」、強力な磁気をあててデータを消す「磁気消去」などがあります。
ディスクの消去サービスは、基本的には有償です。しかし、中古PCの買い取り業者の中には無償でサービスを行ってくれる会社もあります。処分はもちろん、データ消去にもコストをかけたくないというのであれば、こうした会社を選びましょう。
ライフサイクルを意識して、PCの「コスト」だけでなく「プロフィット」も考えよう
これまで6回にわたって解説してきた「Windows10時代のPC調達術」。お読みいただいた方の中にはPCの導入から処分まで「ここまで考えてはいなかった」という人も少なくなかったと思います。
PCは「業務には欠かせない道具」です。だからこそ、ライフサイクル全般を通してコストを意識することはもちろんですが、PCが生み出す「プロフィット(利益)」も考えることも大切になります。
例えば、出社して10分間は起動に時間がかかるPCを使っていた場合、1か月で200分のロスタイムが発生している計算になります。これを全社で考えると、その損失は決して少なくはありません。もしかすると動作の遅いPCが社員の残業時間を増やしているかもしれないのです。
今後はこうしたシミュレーションを、ぜひ行ってみるようにしてください。すると、PCの導入で「新しくて速い機種は生産性から見ると決して高くはない」という考えや、運用では「保証に少しお金を払ってもすぐに直してもらった方が、PCの故障による機会損失を最小限に抑えられる」という発想につながります。そうすれば、自社にベストな調達方法を選択できるようになるでしょう。
この記事が読者の方々が働く会社の生産性向上につながることを願っています。<了>