【情シス女子】第37回 「“アジャイル”で働き方を変える! 毎日が試行錯誤です」南嶋千春さん
アクサ生命保険 IT アジャイル推進チーム マネージャー 南嶋千春さん
今回の情シス女子は、アクサ生命保険の南嶋千春(みなみじま・ちはる)さんです。主にIT畑を歩んできた南嶋さん。保険業界の経験がなくてもオファーをしてくれた今の会社に魅力を感じて入社を決めたといいます。「5年先、10年先、その先も常に新しいことにチャレンジしていきたい」という南嶋さんに、今取り組んでいる「アジャイル(※注)」の導入について、そして仕事でも役立っているという“気持ちを落ち着かせ集中できる”趣味についてもお聞きました。(取材・文:山際貴子 撮影:Austin Studio ヘアメイク:高橋純子)
<南嶋千春さんプロフィール>
アクサ生命保険 IT アジャイル推進チーム所属。大学卒業後、NECソフト(現NECソリューションイノベータ)入社。同社でシステムサポート、エンジニアとして勤務した後、米国でインターン、新生銀行でエンジニア、UL JapanでのITマネージャーを経て、2014年9月にアクサ生命保険入社。2017年1月には「アジャイルセンター」を立ち上げ、アジャイル導入による会社の変革を目指している。
この記事の目次
アジャイルはメンバーの考え方を変えてこそ効果がある
――現在の取り組んでいる「アジャイル」について教えてください。
アジャイルは一般的には短期間で小規模単位の開発を繰り返す手法と捉えられがちですが、当社では「価値は何か?」を常に共有してチームとして仕事を進めることを重視しています。
仕事の進め方を変えるというのは単純にプロセスを導入するだけでは上手くいきません。チームメンバー全員の考え方を変えてこそプロセスが効力を発揮します。現在は「意識付けのフェーズ」としてトレーニングや説明会を開催しています。
次のステップでは、私もアジャイルコーチとして各プロジェクトのコーチングをしていきます。アジャイルは最初は試験的にIT関連部門に導入し、その後ビジネス部門に展開していく予定です。
「私にやらせて!」 自らチームを立ち上げ大きな目標に挑む
――ご自身でアジャイルセンターを設立した理由は?
海外のグループ会社ではアジャイルの導入を進めていて「会社のトランスフォーメーション(変革)にはアジャイルが不可欠」という認識がどんどん広まっていました。日本でもアジャイルに取り組んでいましたが、担当者が本来の業務と兼任でやっていたため、なかなか思うように進んでいなかったんです。
私はアジャイルについて、その取り組みをモニタリングする立場で知りました。そして、グループ会社からアジャイルコーチを招いて話を聞いていくうちに「アジャイルを導入できたら働き方が変わるのではないか?」と考えるようになりました。
一般的にアジャイルは開発手法の1つです。しかし、私は開発だけでなく会社で働く全ての人がモチベーションが上がり、仕事をもっと好きになり、それによって生産性が上がっていくのではという可能性を感じたんです。
しかし、私自身はアジャイル導入の経験はありませんでした。でも「アジャイルは専門の組織を作らないと導入できないと思います。私にやらせてください!」と上司に訴えたんです。すると、「じゃあ、やってみれば?」と言われて、やらせてもらえることになったんです(笑)。
アジャイルセンターは、社内のフランス人社員2人とチームとして立ち上げました。ただ、今は何から手を付けてよいのか試行錯誤の連続です(笑)。でも、新しいことに挑戦するチャンスをもらえて、やりがいがありますし、とても楽しく仕事をしています。
アジャイルセンターのメンバー、エリックさん(左)、グレッグさんともにアジャイルの導入に取り組んでいる
――アジャイルを導入すると、なぜ仕事が好きになるのですか?
アジャイルによって「チームとして働く」という意識が生まれます。その意識を持って仕事をすることで「自分にはどんな価値があるのか」「自分の仕事が会社にどのようなインパクトを与えるのか」ということを、ひとりひとりが実感することができるからです。
仕事は「言われたからやる」のではなく「自分がやるべきことは何か」を考えて自発的に動くと、とてもやりがいを感じますよね。だから、仕事が好きになれるんです。また、そうした社員が増えることでボトムアップで会社全体の生産性を上げていくこともできます。それが目標です。
情報を発信する立場として“思い込みはしない”ことを学ぶ
――今まで仕事で失敗したことはありますか?
「詰めが甘いなあ」と反省することはよくあります。先日、アジャイルについて経営陣に説明会を開催した時のことです。
当社の社長は米国人、COO(最高執行責任者)はフランス人です。だから、経営陣との会議は通訳機がないと始められません。しかし、会議で使用する社内の通訳機が新しくなっていて、通訳の人も自分たちも使い方が分からなかったんです。
そのため説明会の開始が5分遅れ、10分遅れ……。やがて出席者がザワつき出しました。そして、「アジャイルのセッションなのに、進行が遅いね」と言われてしまったんです。
その時は、本当に冷や汗が出ました。前日までにパソコンやプロジェクターは完璧に準備したのに「通訳機は通訳の人が来たら分かるだろう」と思い込んでしまったのが原因でした。
――その失敗から学んだことは。
思い込みをなるべく排除することに気を付けるようになりました。
これはコミュニケーションにもいえると思います。例えば、ビジネス部門の人に対して説明会を開催する場合に「アジャイルについて、このくらいのことは知っているだろう」と思い込んではいけないんです。なぜなら、バックグラウンドを理解した上で、今までの経緯を含めて過不足なく情報を伝えないと、彼らに納得してもらえないからです。
そうしたことが分かった今だからこそ、情報を発信する側として、「みんなが同じレベルの知識を持っているわけではない」ということを常に意識して伝えるようにしています。
深い呼吸でリラックスすれば“気持ちが波立たない”
――オフは何をして過ごしていますか?
ヨガです。週一回レッスンに行って、家でもストレッチをしています。以前はベリーダンスを習っていましたが、同じ教室でヨガも開催されていたので並行してやるようになったら、いつの間にかハマりました(笑)。今では筋肉がプルプルするくらいのハードなレッスンにも挑戦しているんですよ。
ヨガは続けていると、できなかったアーサナ(さまざまなポーズ)ができるようになったり、今までは何となくやっていたポーズで呼吸を意識するようになったりします。日々進歩を感じられて体も心もスッキリするのが魅力なんです。
ヨガを通じて相手を受け入れることを学んだという南嶋さん。今では難しいポーズもできるようになったといいます
――ヨガから学んだことはありますか。
ヨガの先生から「ヨガでは気持ちを波立たせるのはよくない」と言われたことが強く心に残っています。
「気持ちが波立つ」というのは、例えば「怒り」といった感情のことを指しています。なぜ人は怒るのかというと、相手に対して過度な期待をしているからなんです。価値観が違う人でも「そういう人もいるよね」と相手を受け入れて期待をしすぎない。そうすればいつも穏やかでいられるということをヨガから教わりました。
仕事では時に職場で怒ってしまうこともあります。そんな時こそ、先生の言葉を思い出して、深い呼吸をしてリラックスするように心がけています。深い呼吸で気分が落ち着き、自分に集中できるということもヨガが教えてくれたことなんです。
――旅行も好きだそうですね。
長い休暇が取れた時には必ず海外旅行に行きます。今まで訪れた国は30か国ぐらい。去年の夏はコスタリカに行きました。コスタリカの山でヨガをするというツアーがあって、山の上でヨガのレッスンを受けたんです。そして海でサーフィンに挑戦しました(笑)。旅行は仕事とは全く違う環境に身を置くことができます。それが心身をリフレッシュになるんです。
これからは情シスこそがビジネスを作っていく
――最後に、南嶋さんにとって情シスとは?
これまではビジネスに合わせてシステムが作られてきました。しかし、これからはシステムがビジネスを作っていくと考えています。だから、私は情シスこそが「Business Enabler(ビジネスイネーブラー、ビジネスを成功に導く)」として会社によい影響を与えていけると思うんです。これは私が思う、当社の情シスの目標で、今後なりたい姿です。アジャイルの導入で会社や働き方がもっとよくなるように、私としては、これからもチャレンジを続けていきたいですね。
最後に今後の目標について書いてもらいました!
※注:短期間でソフトウエアやシステムを開発する手法
<インタビューを終えて>
どんな質問にも快活に、分かりやすく答えてくれた南嶋さん。大きなミッションを背負いながらも、楽しそうに仕事について語る姿が印象的でした。「今後はアジャイルセンターを大きくしていきたい」という南嶋さんのさらなる挑戦に注目したいと思います。
アクサ生命保険
https://www.axa.co.jp/
■事業内容:生命保険業
■本社:東京都港区白金1-17-3 NBFプラチナタワー
■設立:1994年7月
■従業員数:7774名(2016年3月末時点)
■売上高(保険料などの収入):6044億(2016年3月期)
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