情シスリーダーのための時間管理術7 「残業ゼロ」にするために必要なこと
「残業ゼロ」にするための原則
情シス部門には「残業ゼロなんて、とても無理」という人が多いと思います。例えば、トラブルに対応しなければいけない場合などに残業するのは仕方ないでしょう。でも、「うまくやればもう少し残業を減らせるかも?」と感じている人も多いはずです。ゼロは無理でも、残業を減らすためには何が必要か考えてみましょう。
まずは、私たちが普段行っている仕事と、そのための時間について少し考えてみましょう。この連載の第1回の「情シスリーダーのための時間管理術 なぜ時間が足りなくなる? リーダーが抱えがちな時間に関する誤解」でも紹介したように、時間管理の観点では、仕事は3タイプに分けられます。
(1)タスク(T)
時刻が決まっていない仕事。デスクワークの多くはこの「タスク」です。
(2)アポイントメント(A)
決まった時刻に、決まった場所で行う仕事。会議や面談、出張などが該当します。
(3)予定外の仕事(U)
事前に予定しておくことができない仕事。相談や問い合わせなどの対応。トラブルへの対処などです。
この3つの仕事を、私たちは自分のリソース(R)、つまり勤務時間を使って行っています。
残業ゼロで仕事をするには、この4つが「R>T+A+U」の関係になっている必要があります。勤務時間よりも仕事量が少なければ残業しなくて済むし、勤務時間よりも仕事量が多ければ残業せざるを得ないということになります。当り前といえば当り前ですね。残業をゼロにする、あるいは、ほどほどに抑えるためには、この関係をキープすることが必要です。
ただし、本当に「R>T+A+U」の関係をキープできるかを確認するのは、かなり難しいことです。タスクは毎日次々と追加されますし、そもそも「予定外の仕事」は事前にわかるものではありません。そのなかで、できるだけ状況を整理し、ある程度の予測を立てるのが「時間管理」の重要な目的の1つです。
タスクを書き出すだけではわからない
では、「R>T+A+U」の関係を確認するには、どうすればよいのでしょうか?
まず、予定外の仕事(U)が問題です。日によって多かったり少なかったりするし、事前にわかるものでもありません。ですから、平均値として、どれだけ時間を取られているか把握しておき、その時間を確保しておくという対応が現実的です。平均値がどのくらいになるかは、実績を記録しないと確認できませんが、目安として少なめの人で1日1時間半程度、多めの人で2時間半程度と見ておけば、大きく外れてはいないはずです。
次に問題なのが、タスク(T)です。例えば、自分のタスクをすべて書き出したとしても、それだけでは実は何もわかりません。それぞれのタスクには、それぞれの期限があります。それまでの期間内にやれるかどうかが重要なのですが、ただ並べただけではわからないのです。一例として、私が昔やっていたように「ふせん」にタスクを書いて貼っておくと、どうなるでしょうか?
たくさんの「ふせん」を見ると、タスクがたくさんあることは、よくわかります。しかし、時間(R)と関連づけられていないので、それらのタスクを本当にやれるのか(時間が足りるのか)という自信が持てません。たくさんのタスクに囲まれて、「本当に間に合うのかな?」と絶望的な気分になることもありました。このような「R>T+A+U」の関係が見えないタスク管理、時間管理は、忙しい人にはおすすめできません。
タスクを時間と関連づける
そうならないために、そして「R>T+A+U」の関係をつかむためには、タスクを時間と関連づけて整理する必要があります。これはそれほど難しいことではありません。
第2回「情シスリーダーのための時間管理術2 そもそも時間管理とは? タスク管理方法に正解はあるか?!」で紹介したように、タスクを実行する日(実行できそうな日)に書く(入力する)ことで、時間と関連づけることができます。ふだんからタスクを実行日に書くようにすれば、「R>T+A+U」の関係をつかめるようになります。
まず、自分のアポイントメントを見て、「アポイントメントが入っていない時間」に注目します。これがR-Aに相当します(お昼休みの時間は省いて考えましょう)。仮にアポイントメントが2時間で、残り(R-A)が6時間あるとしましょう。予定外の仕事(U)が2時間半程度あると想定すれば、タスク(T)に使える時間は3時間半程度となります。その日のタスクの所要時間の合計が3時間半以下なら、残業せずにこなせる見込みになります。
これは正確に計算するというより、ざっくりとした見通しを立てるくらいの感じで構いません。そのかわり、今日のことだけでなく、明日、明後日……と先の日付についても見ておきます。常時チェックする必要はなく、タスクやアポイントメントを書き加える時に「R>T+A+U」の関係を確認します。
実行する段階では、タスクの所要時間の予測が外れることもありますし、予定外の仕事の量も変動します。ですから、その日に予定したタスクをこなしきれない場合もあるはずです。その際は、一部のタスクの実行日を変更して対応します。余裕がない日はタスクの一部を翌日に繰り越し、余裕がある日は翌日のタスクも先取りして実行するわけです。いざという時にこういった微調整ができるように、タスクの実行日は期限ギリギリではなく、可能な範囲で早めにしておきます。
このような微調整は必要ですが、「R>T+A+U」の関係が大まかにつかめていると、いろいろ先を読んで考え、動くことができます。自分にどれだけの余裕が残っているかがわかるからこそ、「本当に間に合うのかな?」と不安を感じることがなくなりますし、余裕がない時期には、うかつにタスクを引き受けすぎないように気をつけることもできます。また、タスクを「中止する」「断る」「人に任せる」といった判断もしやすくなります。
「R>T+A+U」の関係にふだんから気を配っていれば、自然に仕事量を先読みでき、仕事量を平準化することができます。残業時間をコントロールするためだけでなく、自信を持って仕事をするためにも役立つので、ぜひ試してみてください。
もし時間が余りそうだったら?
「R>T+A+U」という式は不等式になっていますから、厳密に守れれば時間は余ります。余った時間をどう使うかは自由ですが、おそらく、みなさんは「マストではないけど、やっておきたいこと」をいくつもお持ちだと思います。「時間があれば、ちょっと直しておきたいこと」「時間があれば、ちょっと整理しておきたいこと」などですね。これをやれるとよいですよね。
こういったマストでないタスクは実行日を決めなくて構いませんが、忘れないように書きとめておくのがおすすめです。「時間があればやりたいこと」のリストであり、いわゆる「ウィッシュリスト」みたいなものです。時間に余裕ができたらまずこのリストを見て、やろうと思うものがあればやってみる。そんな感じで時間を使ってみてはいかがでしょうか。
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