IT業界における深刻な課題とIT人材育成・新人教育の重要性

  • 2016/11/4
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2016/11/04

近年、ITはあらゆる産業にその裾野を広げてきた。そして、時代は今、世界中で進むIoT、ビッグデータ、ロボット、AI分野による技術革新「第4次産業革命」の真っ只中だが、それを支えていくのもまたITだ。さらに、これまで政府がITを重要な成長戦略の一つとしてきたことをみれば、今後の日本の成長を担うのは、間違いなくIT業界だといえる。だが一方で、業界は現在慢性的な人材不足となっており、日増しに高まるニーズに対応できない状況が深刻化しているという。そこで、ジョーシス編集部では、「IT人材育成」を事業とし、企業より依頼を受け過去全国38都道府県で、6500名以上の新入社員にIT技術者研修を行なっている株式会社エンベックスエデュケーション代表取締役・荒木泰晴氏に、IT人材における状況や課題、人材育成の重要性・メリットなどについて話を伺った。(取材・文:坂本嶺 撮影:松波賢)

離職率を下げ、IT人材を成長させる新人教育。秘訣は要素技術とヒューマンスキルの学びにあり

エンベックスエデュケーション 荒木社長

——IT業界とIT人材をとりまく状況についてお聞かせください

 

IT業界と一口にいっても、SI系とよばれるシステム構築からソフトウェア開発、コンテンツやアプリ、ゲーム制作等々、非常にその領域は広いわけですが、共通して人材が不足しているといわれています。その反面、さまざまな業種の中で唯一といってもいいぐらいにIT業界は成長を続けていて、今後もより伸びていくと感じています。現状でも、例えばスマートフォンアプリや電子決済システムなどは、私たちが情報を得るために欠かせないものとなっていますし、また今後、社会に大きな変化を及ぼすだろう「第四次産業革命」のIoT、ビッグデータ、ロボット、AIなどの技術革新を下支えするのもITです。しかし、人材については、こういったニーズに対応していけるほどの人数を確保できているとはいえません。需要と供給のバランスが崩れているのが現状であり、IT業界における深刻な課題だといえます。

 

——人材不足には、どのような背景があるのでしょうか?

 

まず、2つのパターンに分けることができます。ひとつは、就職先としてIT企業・IT業界を検討する学生が少ない。もうひとつは、せっかく入社しても数年で離職してしまうことです。

 

これほどITサービスが浸透している世の中でも、IT企業を就職先に希望する学生は実は多くはありません。おおよその値ですが、まず大学を卒業する学生は年に60数万人ほど。そのうちIT企業に就職する新社会人は、10パーセント未満といわれています。この要因は、企業の知名度と業界のビジネスモデルの『わかりにくさ』にあると私は考えています。一般によく使われるITサービスでも提供会社は知られていなかったり、また、IT企業がそもそもどんな仕事をしているのかわからないなどの理由から、学生にとって、就職しても自分の将来を描きづらいというイメージがあるのかもしれません。また、IT企業での仕事は激務という、ひと昔前のイメージも少なからず影響しているのではないでしょうか。

 

離職については、複雑な問題が潜んでいます。総務省の統計によれば、ここ3年間の業界の離職率は43パーセント。他の業種に比べ明らかに高い値ですが、この数値の背景にあるのが「実社会との乖離」です。どういうことかといえば、大学で学んだことが活かせず、仕事についていけずに辞めてしまう新入社員が、IT業界では少なくありません。

 

なぜ、このような現象が起こるかというと、学生が、企業が求めるスキルを大学で学べていないんですね。先端や最新の技術を学ぶけれども、要素技術に触れる機会がない。企業が求めるのは先端技術ではなく、さまざまなサービス開発に応用できる基礎の部分、つまり要素技術のスキルですから、ミスマッチが生じてしまっているわけです。加えて、近年の企業では、知識の有無がそのまま評価に直結する傾向にあるので、仕事で必要な技術を知らないということは明らかにネックとなります。

 

——だからこそ、IT人材の新人教育が重要ということですね

 

そうです。弊社のような事業は、例えるなら、新入社員と企業をつなぐ架け橋のような役割といってもいいかもしれませんね。必要な基礎技術を教えながら、一人ひとりがやりがいを持って仕事に取り組めるように育成していきます。ただ、IT人材育成というと、技術や知識の研修というイメージがあるかもしれませんが、実はそればかりではありません。社会人としてのヒューマンスキルを教えていくことも非常に重要な要素になっています。

 

——IT人材にはどんなヒューマンスキルが求められるのですか?

 

決して特別なことではなく、上司への報連相や社内でのコミュニケーションなど、極めて基礎的なことです。しかし、それらができない新入社員はかなり多く、近年で増加傾向にあるようにも感じています。

 

具体例を挙げれば、まず「電車の遅延が理由なら遅刻してもしょうがない」というケース。自分は定時に間に合うように家を出て、遅延することは会社にも連絡してある、だから遅れても問題がないと思ってしまうんです。このような場合、遅刻の要因はあくまでも電車なので、次回は遅延しても間に合うようにもう少し早めに家を出ようという気持ちがありません。また、「上司からの連絡にSNSで返信する」など、私生活と会社や上司との立場の違いの区別がつかないというケースも多々あります。こういった行動は、私たちの年代からすれば違和感を感じますが、本人たちは悪気があるわけではない。ただ、各ロケーションに応じて何が最善か? ということを判断できないんです。

 

だからこそ、そういったヒューマンスキルの教育も欠かせませんし、弊社でも注力して取り組んできました。今年で10年を迎えますが、「要素技術」、「ヒューマンスキル」双方のアプローチからの研修が、離職せず日々成長していけるIT人材の育成に貢献していると確信しています。(つづく)

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