【国際ドローン展】日の丸ドローンの逆襲が始まった

  • 2016/4/27
  • 【国際ドローン展】日の丸ドローンの逆襲が始まった はコメントを受け付けていません
2016/04/27
国際ドローン展会場ロング

今回のドローン展では、「ソリューションの提案」を意識した展示が多く見られた。機体そのものとそれを制御するソフトは、すでに高いレベルに達している。そうなると、「その機体を使って、どのようなニーズにどのように応えていくのか」という点が産業用ドローンとしての価値になってくる。そこで、出展各社は技術力やノウハウなど自社の強みを活かし、ユニークな提案を行っていた。

1年で格段に進歩したドローン

今回の展示会はメカトロニクス&エレクトロニクスの専門展示会である「テクノフロンティア2016」との共催という形で、およそ80社からの出展があった。

ホビーではなく産業用ドローンの展示会のため、来場者もほとんどが「背広組」。しかし、それだけに、各ブースでは担当者をつかまえて質問攻めにしたり、説明に熱心に耳を傾けたりといった光景が見られた多くの業界、多くの企業が、ドローンを介したビジネスに現実的な可能性を見出しているということだろう。

また、会場で感じたのは「パワフルな推進力」。前へ出ようとする力、ラグビー選手がスクラムを組んだ時に見せるような、マッチョな筋肉に込められたパワーを感じられた。

各社ブースのデモには多くの人が集まった。

各社ブースのデモには多くの人が集まった。

今回の展示会では特に国内メーカーの奮闘ぶりが目立った。出展企業の多くが日本企業ということもあるが、それを差し引いても、国内企業の躍進ぶりは目覚ましいといえる。「前回(1年前)のドローン展と比べたら、格段に違う。各社さんとも、想像以上の進歩を遂げている」と、ある出展社の担当者はいう。この言葉は、今回のドローン展を端的かつ的確に言い表していえるだろう。

産業利用に向けて超えるべき壁

ドローンを産業利用する場合、乗り越えるべき課題が多くある。技術面では、まず「安定飛行できるだけの機体の制御」だ。

ドローンは機体を傾けることで進路のコンロトールを行っているが、そのため軌道修正のたびに高度が落ちる。また、機体の形状や重量によっては、横風を受けた時の影響も異なる。

自律飛行をさせるとなると、こうした細かな位置の変化を正確に感知して、修正しなくてはならない。カメラや貨物を積むとなれば積載量を大きくしたいところだが、あまりに機体が大きくなると、今度は扱いにくくなる。つまり、軽量化と堅牢性、さらに機体の重量バランスなども考慮した設計が必要になってくるわけだ。

会場ではドローンの飛行デモも行われた。

会場ではドローンの飛行デモも行われた。

課題は今後、さらに増えるだろう。コストダウンもあるし、ハードとソフト両面での共通規格化も考えられる。また、「墜ちない」という信頼性は必須だ。万が一の場合には損害を最小限に食い止める安全性も求められる。市街地の上空を飛ばすなら、騒音問題も含めて、地域住民の理解も必要だ。これらの課題をクリアして初めて、産業用ドローンは初めて離陸できる。

課題のすべてが、解決されたわけでは決してない。しかし、その多くを、展示会の出展社は解決しつつある。少なくとも、解決へ向けての道筋を描いていると今回の展示会では感じられた。

ドローンが提供するソリューション

実はドローンはすでに「飛ばすこと」から一歩先、あるいは二歩くらい先を行っているだろう。今回の出展社の展示を見ていると、そんな印象を受けた。

そもそもドローンの活用法としては何があるだろうか。

一般的な認識でいえば、まずカメラを搭載しての空撮だろう。これまでの常識では不可能だった映像や画像をドローンならば撮影ができるし、実際にドローンで撮った映像はすでに世間に出回っている。

また、「運搬」もある。注文した商品がドローンで運ばれ、自宅の玄関先に届けられるというのは今や決して絵空事でも夢物語でもない。ドローンによる配送実験はすでに行われている。5月からエリア限定ながら、ドローンによる搬送をビジネスとしてスタートさせる企業もある。

機体はある程度できあがった。飛行を制御し、安定的に飛ばす技術は、満足できる水準まで来た。用途に応じてカスタマイズを加えた機体の数々も、出そろいつつある。まだまだ発展の余地は大きいが、産業用として実用に耐えるレベルのドローンは、すでに実現している。次に焦点となるのは、「そのドローンで何をするのか、何ができるのか」ということだ。今回の展示会で出展社の多くが、そうしたソリューションを展開していた。

各社の強みを投入した独自のアプローチ

このような状況の中で開催された今回の国際ドローン展では、日本企業の「本気」が、強く感じられた。

これまでドローンというと、海外製品が圧倒的だった。今もその状況は変わっていないが、その中で気を吐く国内企業も存在する。

あるメーカーはドローンのパーツ販売を行っていたが、顧客からの要望に応える形で機体製作に関わり、ユニークな機体を生み出している。ある企業は200社にものぼる産学複合企業のプラットフォームとなって、さまざまな用途に特化した先進的な機体を製作している。またあるメーカーはラジコンヘリで培ってきた技術を用いて小型から大型までの完成度の高いドローンをラインナップしている。

日本メーカーは個性豊かなドローンを出展

日本メーカーは個性豊かなドローンを出展

出展社のほとんどが、自社ならではの強み、一芸を持っており、それをドローンに惜しげもなく投入しているのだ。まさに日の丸ドローンが攻勢に打って出たという感がある。

ドローンというと、首相官邸や祭会場への墜落事件で、広く一般にも知られるようになった。そのためネガティブなイメージを持つ人々は少なくないだろう。しかし、そんな世間の評判はさておき、ドローンは着実な進歩を続けている。人々の暮らしの中へと飛び立っていこうとしている。

過去、モータリゼーションの発達によってクルマのある生活が当たり前になっていったように、ドローンもまた、私たちの生活になくてはならないものになっていくかもしれない。それは、遠い未来のことではないだろう。展示会ではその可能性を感じることができた。

今回、ジョーシス編集部では、この「国際ドローン展」を取材。さまざまなアプローチでドローンソリューションを展示していた各社ブースについてレポートしていきます。

バックナンバー

編集部おすすめデジタル機器全般

【国際ドローン展】日の丸ドローンの逆襲が始まった

【国際ドローン展】日の丸ドローンの逆襲が始まった
2016年4月20~22日の3日間、幕張メッセで「第2回国際ドローン展」が開催された。産業用ということで一般来場者の姿はほとんどなかったが、取材して感じたのは、国産メーカーの奮闘ぶりだ。ドローンの分野でモノ作りの国ニッポンが、その本領を発揮し始めている。
編集部おすすめデジタル機器全般

【国際ドローン展】既存システム+ドローンで可能性を広げる NEC

【国際ドローン展】既存システム+ドローンで可能性を広げる NEC
NECの展示はドローンを使ったソリューションの提案だ。ソリューションは、国産メーカーのドローンを使い、そこに用途に応じたカスタマイズを加える。さらに必要なソフトを実装し、それらを全体的なシステムとして統合する。こうした、いかにも「NECらしい」といえる展示が行われていた。
編集部おすすめデジタル機器全般

【国際ドローン展】タフな災害救助ロボットを生み出せ! ImPACT

【国際ドローン展】タフな災害救助ロボットを生み出せ! ImPACT
内閣府が主導する革新的研究開発推進プログラム「ImPACT(インパクト)」。プログラムで行われているのが「タフ・ロボティクス・チャレンジ」だ。これは自然災害などの被災地で、人に代わって被災者救助に活躍する、ロボットによる救助システム。このシステムでは、空からのアプローチを支えるものとしてドローンが位置づけられている。ブースでは、その展示が行われていた。
編集部おすすめデジタル機器全般

【国際ドローン展】ユニークな機体で注目集める TEAD

【国際ドローン展】ユニークな機体で注目集める TEAD
TEAD(テッド)のブースは明るくカラフルだ。ブースにはさまざまなドローンが並んでおり、多くの人々でにぎわっていた。パーツから組み立て、ホビードローン、メンテナンスから機体製作と、ドローンのすべてを提供している同社。実は「純国産」を志向しつつ、ドローンの将来にも冷静に目を向けていた。
編集部おすすめデジタル機器全般

【国際ドローン展】研究室から世界に飛び立つ最新ドローン 自律制御システム研究所

【国際ドローン展】研究室から世界に飛び立つ最新ドローン 自律制御システム研究所
千葉大学の研究室から始まった自律制御システム研究所。その名の通り、自律制御システムの研究開発をメインとしている。大学発ということもあって、その開発パワーは圧倒的だ。ハード・ソフトにわたる先進的な技術を、数多く生み出している。
編集部おすすめデジタル機器全般

【国際ドローン展】ドローンで高齢社会を支える三河屋に MIKAWAYA21

【国際ドローン展】ドローンで高齢社会を支える三河屋に MIKAWAYA21
「21世紀の三河屋さん」をそのまま社名にしたMIKAWAYA21。ほかの出展社とは異なり、既存のサービスにドローンを組み込み、省力化を図るという新たなサービスの展示を行っていた。過疎地の高齢者層にとって福音となるそのサービスとは?
編集部おすすめデジタル機器全般

【国際ドローン展】スピード重視で海外も狙うドローンベンチャー テラドローン

【国際ドローン展】スピード重視で海外も狙うドローンベンチャー テラドローン
日本を含めアジア地域に複数の拠点を持つテラドローン。展示そのものはシンプルで小規模だったが、すでに土木測量の分野で多くの実績を収めている。現在はその活動分野をさらに広げており、アジアの拠点を通じて世界への飛躍をも視野に入れている。
編集部おすすめデジタル機器全般

【国際ドローン展】完成度の高い機体で圧倒的存在感 プロドローン

【国際ドローン展】完成度の高い機体で圧倒的存在感 プロドローン
小型機から大型機まで、完成度の高い機体をラインナップしているプロドローン。スピード重視の機体や積載量重視の機体、水面に着水可能な機体など、特徴的なドローンを手がけている。今回の展示会では一風変わった、特殊用途のドローンも見ることができた。

この情報は役に立ちましたか?


フィードバックをいただき、ありがとうございました!

関連記事

カテゴリー:

レポート

情シス求人

  1. チームメンバーで作字やってみた#1

ページ上部へ戻る