kintoneを“必修”科目に初導入!大阪産業大学のチャレンジで見えたもの vol.4 「情報システムとは? “そもそも”を考えることが重要なワケ」
- 2016/9/15
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「kintoneが、初めて大学の必修科目のカリキュラムで採用される」という知らせを受けて、サイボウズ社のkintoneビジネスプロデューサー中村龍太氏とともに、大阪産業大学 デザイン工学部 情報システム学科の山田耕嗣先生を訪ねた。授業の中で、山田先生が学生たちに伝えたかったこととは何か。(全6回 取材・文:井ノ上美和)
情報システムとはどういうものか?
「確かにプログラミングは必要です。でもそれだけではない、ということをこの授業の中で伝えたい」(山田先生)。
「みなさん、テレビを見ていて『しばらくお待ちください』って画面を見たことないでしょ」と、山田先生は自身が携わった放送送出システムなどの具体例をあげて、まず“何のために情報システムを作るのか”という話から授業をスタートさせた。「“ユーザーが満足するシステム”かつ“オーナーが満足するシステム”でなければ意味がありません。そして、“何をもって満足なのか”が重要です」(山田先生)。
その後、山田先生はシステムの開発手法についてウォーターフォールと非ウォーターフォール(アジャイルモデルとスパイラルモデル)の違いを解説し、今回の授業では非ウォーターフォール型開発のスパイラルモデルの実習としてkintoneを使ってアンケートのアプリを作成するのだと説明した。
ごく基本的なことだが、学生からは「情報システムの意味をちゃんと知らなかったので、ためになった」「大学では、普段ウォーターフォールモデルの一部分しか学んでいないと知った」といった感想があったように、意外と押さえられていない部分なのかもしれない。
実は、学生だけではなく、プログラムを作ることが情報システムだと思い込んでいる先生や、アジャイルの意味を知らないという情報系学科の先生も世の中には結構いるようだ。大学の先生だけではない。企業で情報システムに携わっている人たちの中にも、本来の情報システムの意味をきちんと理解していない人や見失ってしまっている人をちらほら見かける。
なぜkintoneなのか?
1回目の授業では、サイボウズ社の青野社長からのビデオメッセージも流れた。
「今、まさにIT業界は大きな変化をしています」と切り出した青野社長は、3つの変化を分かりやすく学生に語りかけた。
「まず1つはクラウド化。以前は、お客さんのところにサーバーを建てないといけなかった。今はサービスを申し込めば雲の上で利用できる。こういう使い方が当たり前になってきています。それにより、システムの作り方も大きく変わってきています。今までは半年から1年以上かけて作らないと使えなかったものが、お客さんがチャカチャカっと目の前で作って、すぐ使ってみることができる。使いにくいところはすぐ直していける。アジャイルにシステムを作るやり方に変わってきています。それとともに、使われ方も変わってきています。今までだと、閉じた組織の中で使わなければいけなかったものが、これからは会社を越えて、例えば地域で情報を共有して、地域で問題を解決していく。そんなシステムまで出てきています」。そして、「kintoneを通して学んだ知識は、必ず将来役に立ちます」と締めくくった。
クラウド化が進んで、アジャイル型開発が可能となり、システムの使われ方も変わってきている。
なぜ、クラウドコンピューティングを学ぶのか、将来役に立つことなのか、前提をきちんと説明してあげれば、学生たちも目的意識をもって授業に臨むことができる。
今回の授業では、まず1回目の授業でkintoneアプリの活用例をあげ、kintoneとはどんなものなのかを見せた後、実際に操作しながら基本的なアプリの設計方法を学ぶ。その後、2人1組でチームを作り、アンケートアプリを作成してみる。アンケートが出来上がったら、別のチームが作成したアンケートにどんどん回答していく。他のアンケートに答えることで、ユーザー視点に立つことができる。
翌週の2回目の授業では、1回目に作ったアンケートの回答結果を踏まえて、質問項目を追加するなどの修正を加える。C言語では手間のかかるプログラムの修正がこんなに簡単にできるのだということを体感してもらうためだ。
アプリとしてではなく、アンケートとして成り立っているか
山田耕嗣先生(右)と中村龍太氏
今回のカリキュラムのベースを作ったのは山田先生で、そこに2点ほど変更を加えたのが中村龍太氏。
1つ目の変更は、仕様書について。
「最初、山田先生に仕様書を作りましょうって言われたんですよ。仕様書がいらない、なくても使えるのがkintoneなのに(笑)」(龍太氏)。
「昔、情報システムを作っていたころの延長で考えてしまっていましたね。なぜ仕様書?と、中村さんに言われてハッとしました。まったく大ボケですわ」(山田先生)。
仕様書を作成するのはやめて、指導書にはスクリーンショットを貼付けた操作手順だけを準備した。実際にアプリを作成する際には、画面に操作手順が表示されるし、ほとんどドラッグ&ドロップだけで感覚的に作成できるものなので、操作手順をわざわざ紙面に印刷する必要もないのだが、他の授業とは全く違うということが指導書を見ただけでもわかるようにしたいという意図があったのだろう。サイボウズのキャラクター“あーみん”の挿絵も入っており、「教科書に女のコのキャラクターが書いてあって驚きました」と、学生たちの間でもちょっとした話題になった。
2つ目の変更は、アンケートアプリを作成した後の流れ。当初はアンケートを作成して終了、の予定だった。しかし、kintoneが本領を発揮するのはこの後から。実際にクラスのみんなに自分たちが作成したアンケートに答えてもらい、その結果が自分たちの予想通りのものだったのか、修正点や改善点はないかを検証し、必要があれば項目の追加など修正を行う。他のプログラミングと違って、簡単に修正や変更ができ、すぐに反映されるのがkintoneの特徴のひとつだ。
アンケートを実施してみて、欲しかった情報は得られたのか、想定していた結果になっているのかどうか、改善点はないか、妥当性確認やレビューをすることができる。
システムはデータを入れて運用をして、初めてそれがいいものかどうかわかる。アプリとして機能しているか、ではなく、アンケートとして成り立っていなければ意味がない。
世の中に情報が溢れ、どんどん複雑になっていくからこそ、“そもそも…”と、原点に還って物事を考え、本質を捉えることが重要になってくる。
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