リーダーのための「時間管理」解決クリニック2「重箱の隅をつつく上司に困っています」

2016/12/27

ここは時間に追われ、忙しいリーダーのために開設されたクリニック。

このクリニックには時間管理にお悩みのリーダーが処方箋を求めて来院します。

おやおや、今日もお悩み抱えたリーダーがやってきたようですよ……。

【今回のお悩み】

田中さん(仮名)係長職(34歳)

うちの村本課長に困っています。重箱の隅をつつくタイプで、私が作成した資料などにいつも細かい指摘をしてきます。誤字脱字を指摘されるのは仕方ないですが、「細かい言い回しを変えろ」と言ってきたり、グラフの作り方や配色、フォントのサイズにまで注文をつけてきたりします。

どう考えても指摘が多すぎるように思います。前回指摘されたポイントに気をつけて資料を仕上げても、今度はまた別の指摘をされるので嫌になってしまいます。こんな上司とうまくやっていくには、どうしたらいいでしょうか?

※このお悩みは実際の相談の内容を元にしたフィクションです。


このお悩みのように「重箱の隅をつつく上司」「完璧主義の上司」に困っているという声はときどき聞きます。

「上司の要求にはできるだけ応えたいとは思うけど、細かいところにこだわると時間がいくらあっても足りない」

「上司の要求が細かすぎるのではないか?」

「そもそも、すべてに応える必要があるのか?」

そんな疑問がわいてくることもあるでしょう。

時間管理の観点では、この上司の要求にすべて応えようとすることはおすすめできません。そもそも、この上司を相手に、まったく指摘されない仕事をしようとすることに無理があるのかもしれません。それよりも、もう少し気楽に構えて、最初から指摘してもらうつもりでやっていく方がいいかもしれませんよ。

では、対策を解説していきましょう。

【重箱の隅をつつく上司への対策】

修正が多いとタイパは下がる

まず前提として、前のシリーズ(「情シスリーダーのための時間管理術」第10回)でも紹介した「タイパ(時間対効果)」について考えてみましょう。ある1つの仕事にかける時間と得られる成果は比例しません。まず、仕事が形になるまでは成果はほとんどゼロ。一応の形になればそれなりの成果が期待できます。そこからさらに時間をかけてていねいに仕上げていっても、かけた時間の割に成果は、それほど増えません。

ざっくりいえば、一定の水準さえ満たしていれば、できあがりの水準が低ければ低いほど(時間が短いので)タイパは高くなりますし、細かい点を修正すればするほど(時間がかかるので)タイパは低くなってしまいます。成果が格段に高まるなら別ですが、現実には細かい点を修正したからといって、仕事の成果はそれほど変わらないものなのです。

例えば、その上司に指摘された点を直す前と直した後、両方の資料を第三者に見くらべてもらい、どれだけの違いを感じるか聞いてみるといいでしょう。おそらく、それほどの違いはないという答が返ってくると思います。

よほど時間が余っているのでないかぎり、細かいところの修正に時間をかけすぎないようにしていきたいものです。

指摘を受けるのは悪いことではない

ただし、上司の指摘が無意味だとはいえません。いろいろ指摘してくれる上司がいてくれるのは、ありがたいことでもあります。ロクに資料を見てくれないくせに、結果がよくなかった時は部下に責任をなすりつける、そんな上司よりはいいですよね。

むしろ、今回の相談で本質の問題は、「上司の要求に完全に応えよう」としている部分にあるのではないでしょうか? 相談者の田中さんの言葉からは「上司に指摘されない資料を作らなければいけない」「上司から指摘を受けるのは悪いことだ」といった思いが感じられます。田中さんの方にも完璧主義的な考え方があると思えるのです。

完璧主義的な上司が何も指摘しないくらいのすき隙のない資料を作ろうとすれば、自分はさらに上をいく完璧主義にならなければいけませんし、それこそ時間がいくらあっても足りません。完璧主義に対して完璧主義で対抗するとタイパは最悪になるわけです。それよりも、「指摘されるのは当り前」「指摘してもらって助かる」というくらいに考えている方が、うまく仕事が回るはずです。

上司はなぜ重箱の隅をつつくのか?

次は視点を変えて、「こういう上司はなぜ重箱の隅をつついてしまうのか?」という点を考えてみましょう。重箱の隅をつつく上司にも2つのタイプがあります。

1つは、「気付いたことは言わずにはいられないタイプの上司」です。気付いたことを、よかれと思って言っているわけです。このタイプの人は気付いたことは全部言ってしまいますが、それを「手間をかけてでも直す意味がある」とまで思っているとは限りません。

ですから、もらった指摘のすべてにすぐ対応する必要はなく「このアドバイスを次回に活かさせていただきます」という態度でいても問題ないことが多いのです。すべてを真正面から受とめず、指摘にどこまで対応するか(今回の仕事にどこまで手間をかけるか)は、自分で判断していきましょう。

もう1つは「なにか指摘しないといけない」と思っている上司です。「部下の成長を促したい」「上司の威厳を保ちたい」「自分の存在意義を示したい」など、理由はいろいろですが、「指摘するのが自分の役割」だと思っていて、どんなに完璧な資料でも、指摘するところを無理やりにでも探します。

つまり、このタイプの上司から指摘を受けない資料を作ることは、ほぼ不可能なのです。それならば、完璧を目指すのではなく、適当に指摘してもらうつもりでやっていく方が得策です。

ラフな段階で見せる

指摘してもらう前提で仕事を進めていくのであれば、指摘は早い段階でもらう方がいいでしょう。ていねいに仕上げた資料にダメ出しされるよりも、まだラフな段階でダメ出しされる方が被害は少なくて済みますし、腹も立ちません。1人で最後まで仕上げるよりも効率的に進む場合だってあります。上司を利用して、自分が少し楽をさせてもらうくらいの気持ちでいきましょう。

先に述べたように、完璧主義的な上司に、完璧主義で対抗すると時間はいくらあっても足りません。自分の完璧主義的な部分はちょっと抑えてみてください。完璧な資料、隙のない仕事を見せようとするのではなく、まだ完全に仕上がってないラフな段階で見せる。「指摘されるのは当り前。逆に利用させてもらおう」。そんなふうに割り切ると、時間的にも気持ちの上でも楽になると思います。

 

最後に「重箱の隅をつつく上司」に困っている人への処方箋を出して今回の診察は終わりです。

 

【「重箱の隅をつつく上司」に困っている人への処方箋】

■指摘された点を直す前後の資料を第三者に見比べてもらう
■自分にも完璧主義的な傾向がないか考えてみる
■指摘のすべてにすぐ対応しなくてもいい。次回に活かせばOK
■「指摘は当り前」「指摘してもらって助かる」と、頭を切り換える
■早い段階、ラフな段階で隙だらけの資料を見せる

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