AI Vol:07「人類がはじめて経験するパラダイムシフト? 『シンギュラリティ』がやってくる」
ここ最近、AIブームといえる状況であるが、業務システムへの展開により、情シスにとってもAIに関わることも増えつつある、またはこれから増えるのではないだろうか。
そんなAIについて、本シリーズでは、その生い立ちや基礎知識、動向などAIの様々な面を解説する。
今日のテーマは「シンギュラリティ」。
遠くない未来に、ワタシたちは人の知能を超えるそうです
少し唐突ですが、「シンギュラリティ」という言葉を知っていますか? もしかしたら、なんか最近聞いたような、という人もいるかもしれません。
前回の記事でAIの脅威について、世界をリードする人々がどう考えているのかを紹介しましたが、実はシンギュラリティはそことも深い関わりをもつ重要キーワード。
それでは、今回は「シンギュラリティ」とはなにか? について見ていきましょう。
技術的特異点とは、いままでにない世界の訪れでもあります
まず、シンギュラリティは日本では「特異点」と呼ばれています。そして、特異点とは「あるルール上の物事がこれまでのルールからはずれてしまう境目」のこと。わかりやすく例えると、“トンビが鷹を産む”でしょうか。予想外の現象が起きる、またはがらりと変わる瞬間とイメージしておけばよいのではないでしょうか。
もともとは数学用語ですが、AIやテクノロジー界隈では、「技術的特異点」をシンギュラリティといいます。技術的な特異点、つまり、「ある日を境にして、今までにない技術的な進化があらわれる」ことです。
では、どんな進化が現れるのか?
それは、「人間の能力を超える」AIやロボットの誕生。このままコンピュータ・テクノロジーが加速度的なスピードを維持し進化を続けると、人間の知性レベルでは予測のできない能力を持つAIやロボットが生まれると予測されていて、シンギュラリティに大きな期待を寄せる人がいる一方、畏怖の念も抱かれています。
シンギュラリティは、「“全人類”の知能の総和を超えるAIの誕生」で到来するといわれています。そして超知能をもつAIは、人の手を必要とせず、自分より知能の高いAIをつくり、さらにそのAIがまた・・・と、爆発的に自らテクノロジーを進化させていく。その連鎖のなかで人間はAIのつくりだすテクノロジーを理解することができなくなるともいわれているそうです。つまり、シンギュラリティは「テクノロジーが人間の手を離れてしまう瞬間」とも考えられます。
それは、2045年といわれています
やはり、ここで気になるは「いつやってくるか」でしょう。
結論からいえば、「2045年」。そして、人工知能が人の能力を超えるのは「2029年」と予測されています。
この予測をし、技術的特異点としての「シンギュラリティ」の概念を広めたのは、人工知能の世界的権威「レイ・カーツワイル博士」。Googleの技術ディレクターでもある人物です。
カーツワイル博士は2005年、『The Singularity Is Near: When Humans Transcend Biology』という書籍を発表し、シンギュラリティは世に広まっていきました。日本では、2010年に翻訳版『シンギュラリティは近い−人類が生命を超越するとき−』、2016年には同題でエッセンス版も刊行されました。興味のある人は、ぜひ読んでみてください。
シンギュラリティに不安はありますか?
さて、現実問題として、どんな未来がやってくるのか? そう考えると、少し不安も残ります。そこで最後は、「私たちが抱く一抹の不安」について、検証していくことにしましょう。
不安の理由、これはおそらく「超越」という部分。ただの機械だと感じていたものが、急に人間の理解を超える。これまで自分の手の内にあったと考えていたものが、突然そうでなくなるのは、確かに不気味です。
しかし、よくよく考えてみると、すでにテクノロジーは私たちを超えているのかもしれません。
例えば、スマホ。アクセスがわからなければ、地図か人に聞くしか方法がなかったものを、勝手に調べてくれる。自分の好みのお店も探してくれる。さらに、世界中の人とリアルタイムでつながることもできる。これまで人間が行なってきた情報を得るという知的活動と探索という行動性、また人とのコミュニケーション。これは、すでにスマホに代替されています。加えて、ニュースでも、SNSでも、食べログでも、スマホに表示される情報が、私たちの行動を左右する。しかし、そんなスマホに対して、不気味だとか、負けてしまったと感じている人は果たしてどのくらいいるのでしょうか?
ここから考えると、シンギュラリティも大きなインパクトであるものの、いずれは社会に馴染んでいくと考えてもよいのではないか? つまり、まだ見ぬ未来はAIにより今よりもっとスマートな世界になっていく。そう思えば、不安は希望に変わります。そして前回の記事で触れたように、今、正しくAIを扱うためにはどうするか? という議論が世界中で行われています。これは、まずあたらしい技術が生まれ、そのリスクを人類が把握してコントロールできるようにしていくこと。
例えば火に対する防火技術、自動車に対する安全技術と同様です。
シンギュラリティ以後のAIが果たして、制御できない存在になり得るか?は不明ですが、そこに至るまでに人類もまた進化を経ていると思いたいものです。未知を解き明かそうとする姿勢、そこからあらたな叡智が生まれるのですから。
【執筆:編集Gp 坂本 嶺】