ABテストという言葉を聞いたことがある、「異なるパターンを提示して良い反応を得られたほうを採用するのだな」とぼんやりとわかるという人は少なくないと思います。しかし、どのように実施すればよいのかまでは具体的に想像がつかないかもしれません。
この記事ではABテストの導入から実施までを簡単に紹介します。
この記事の目次
ABテストとは何か?
ABテストとは、マーケティング手法のひとつです。
これはウェブサイトやアプリケーションの最適化を図るために広く使用されている手法で、ユーザーに対して2つ(またはそれ以上)のバージョンを提示し、どちらがより効果的かを統計的に測定します。通常、現在のバージョン(またはパターンA)と、1つまたは複数の変更を加えた新しいバージョン(パターンB、パターンCなど)を比較します。
ABテストは、小さな変更から大きな変更まで、あらゆる規模の変更に適用できます。例えばボタンの色を変えるような小さな変更から、ランディングページの全体的なデザインを変更するような大規模な変更まで、幅広く活用できます。
ABテストを実行することで得られるメリット
ABテストを実行するには多くのメリットがあります。以下に主なメリットを挙げます。
- データに基づく意思決定
直感や推測ではなく、実際のユーザーデータに基づいて意思決定を行うことができます。これにより、より確実に成果を上げることができます。 - リスクの最小化
大規模な変更を全面的に導入する前に、小規模なテストを行うことで、潜在的なリスクを軽減できます。期待したような反応が得られなかった場合は、ABテスト実施ツールから数分で変更前の状態(現在の状態)に戻すことができます。 - ユーザー体験の向上
ユーザーの好みや行動パターンを理解することで、より優れたユーザー体験を提供できます。 - コンバージョン率の向上
効果的な変更を特定し実装することで、コンバージョン率を向上させることができます。 - 継続的な改善
ユーザーフィードバックを反映し、ABテストを繰り返し行うことで常にサイトやアプリを改善し続けることができます。 - 投資対効果(ROI)の最大化
リソースを最も効果的な改善点に集中させることができます。 - 顧客理解の深化
ユーザーの行動を観察することで、顧客のニーズや好みをより深く理解できます。 - 競争力の強化
継続的な最適化により、競合他社に対する優位性を維持できます。
ABテストの策定から実施までの基本的な流れ
ABテストの基本的な流れは以下の通りです。
- テストの目的を明確にします。
例えば、「購入ボタンのクリック率を10%向上させる」などの具体的な目標を設定します。 - 何を変更し、どのような結果を期待するかを明確にします。例えば、「ボタンの色を赤から緑に変更することで、クリック率が向上する」という仮説を立てます。
- テストする要素を選択します。ページビュー数が多く、重要な指標に直接影響を与える要素を選びます。
変更対象となる要素は自由に選択でき、複数の要素も同時に変更できます。 - 変更を加えた新しいパターンを作成します。このとき最初に作成されるパターンはパターンBとなります。
- 流入するユーザーのアクセスするパターンをランダムに振り分けます。多くのツールでは、それぞれのパターンを同じ比率で読み込ませたり、任意の割合で読み込ませたりすることができます。
- 統計的に有意な結果を得るために必要な実施期間を決定します。
この実施期間中にユーザーの行動を観察し、データを収集します。実施期間は2週間以上の期間を設定することが多いです。 - 適切なABテストツールを使用して、トラフィックを分割し、各パターンにユーザーを振り分けます。
- データを慎重に解釈し、どのバージョンが優れているかを判断します。
収集されたデータ数が少ない場合は実施期間を延長します。逆に実施期間中に十分なデータを収集できた、またはコンバージョンが大きく下がったといった理由から途中終了する場合もあります。 - テスト結果に基づいて、どのような対応を取るかを決定します。
パターンBだけでなくパターンCでのテストも実施していた場合、慎重に比較し、より良い結果を出したパターンを採用します。 - 一度のテストで満足せず、継続的にテストを行い、常に改善を図ります。
パターンB、パターンCのどちらでも期待した結果が得られなかった場合、新たにパターンD、パターンEを用意してリベンジします。
ABテストで良い結果が得られた場合の対応
ABテストで良い結果が得られた場合、テストで効果が確認された変更を本番環境に実装します。
続いてチーム内や関係者と成功の要因を分析し、なぜその変更が効果的だったのかを分析して文書化します。これは将来のテストや意思決定に役立ちます。
良い結果を基にさらなる改善の可能性も探ります。
例えば成功した変更をサイトの他の部分にも適用できないか検討します。変更後も継続的にパフォーマンスを監視し、長期的にも良い効果が持続しているか確認することが重要です。
成功した結果から新しいアイデアや仮説を導き出し、ここからさらに次のテストにつなげることも可能です。
成功したテスト結果を踏まえて、より大きな視点からウェブサイトやアプリの戦略を見直すことも考慮に入れるべきでしょう。
ABテストで悪い結果が得られた場合の対応
ABテストで期待した結果が得られなかった場合でも、価値ある学びがあるはずです。
なぜ期待した結果が得られなかったのかを詳細に分析し、元の仮説が適切だったかどうかを見直します。全体では効果がなくても、特定のユーザーセグメントでは効果があった可能性があるため、セグメント分析も行います。
テストの設計に問題がなかったか、テスト期間やサンプルサイズなどを確認することも重要です。失敗から学び、新しいテストアイデアを生み出すことができます。大きな変更が効果を示さなかった場合は、より小さな変更から始めることを検討するのも一つの方法です。
定量的データだけでなく、定性的なユーザーフィードバックも収集し、理解を深めることが有効です。
変更が効果を示さなかった場合は元の状態を維持することも選択肢の一つです。
最後に、失敗から得られた知見をチーム内で共有し、今後のテストに活かすことが大切です。
たとえ望ましい結果が得られなくても、そこから多くを学び、次の改善につなげることができるのです。
ABテストを提供している主なサービスの紹介
ABテストを実施するためには、専用のツールやサービスを利用すると効率的です。以下に主なサービスをいくつか紹介します。
(Ptengine https://www.ptengine.jp/ より抜粋)
- Ptengine:
- ABテストだけではなく、ヒートマップも提供しています。
- Web接客というポップアップ形式でのアンケート、キャンペーンの実施が可能です。
- Dejam:
- ABテストだけではなく、ヒートマップ、競合リサーチ機能を提供しています。
- AB Tasty:
- 豊富なウィジェットときめ細かくパーソナライズされた顧客体験を簡単に作成することができます。
- Optimizely:
- 大規模なウェブサイトやアプリケーションに適した、高機能なABテストプラットフォームです。
- パーソナライゼーションや多変量テストなどの高度な機能を提供します。
- エンタープライズ向けの豊富な統合機能があります。
- VWO (Visual Website Optimizer):
- 使いやすいインターフェースと視覚的なエディタが特徴です。
- ヒートマップや録画機能など、ユーザー行動分析ツールも提供しています。
- Adobe Target:
- Adobe Experience Cloudの一部として提供される高度なテストツールです。
- AIを活用したパーソナライゼーション機能が強みです。
- Crazy Egg:
- ヒートマップやスクロールマップなどの視覚的な分析ツールと組み合わせたABテスト機能を提供します。
- 比較的小規模なウェブサイトに適しています。
- Unbounce:
- ランディングページに特化したABテストツールです。
- ドラッグ&ドロップのページビルダーを使って簡単にページを作成できます。
- Convert:
- 中規模から大規模のウェブサイト向けのABテストプラットフォームです。
- プライバシーと データセキュリティに強い注力をしています。
さいごに
株式会社HumAInではABテストの選定から実施、振り返りのほか、様々なサービスやウェブサイトの制作を行っています。詳しくはお問合せください。
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