データベース設計の中でよく耳にする「正規化」という言葉。これは、データベースのテーブル(表)を整理し、データの冗長性を減らし、一貫性を保つためのプロセスです。この記事では、正規化の基本概念について、わかりやすく解説します。
正規化とは?
正規化とは、データベース内のテーブルを設計する際に、データの重複を排除し、データの整合性を保つための方法です。これにより、データの更新や削除が容易になり、データベースのパフォーマンスが向上します。正規化は複数の「正規形」に分けられ、それぞれの段階でテーブルを再編成します。
正規化には、第一正規化~第五正規化とボイスコッド正規化といった、正規化には複数のレベルがあります。一般的に使われるのは、第一正規化~第三正規化までのことが多いです。
今回は第一正規化~第三正規化について、まとめました。
第一正規形(1NF)
第一正規形は、データベーステーブルがデータを整理するための最初のステップです。この段階では、テーブルの列が単一値であり、繰り返しの項目がなく、各レコードが一貫していることを保証します。
・単一値が属性でない例(複数の商品がひとつのカラムに入っている)
・繰り返しがある例(商品カラムが繰り返しになっている)
これらのテーブルは第一正規形ではありません。この例では、商品と数量が複数の値を含んでおり、第一正規形の要件を満たしていません。
この状態では以下の問題が発生します。
データの検索が困難になる
例えば、上のテーブルでは、「商品」と「数量」が複数の値を持っています。これにより、次のような問題が発生します。
特定の商品に関連する注文を検索する場合、文字列操作が必要になります。たとえば、「マウス」を注文したすべての行を検索するには、複雑なクエリが必要です。
データベースで表現することができない
下のテーブルでは、2つしか商品を持てませんが、商品数が可変の場合、データベースで表現することができません。
第一正規形にするためには、これらの繰り返し項目を別々のレコードに分割する必要があります。
第一正規化すると以下のようになります。
第一正規形にすることで、各フィールドが単一の値を持ち、データの検索や更新が容易になります。
第二正規形(2NF)
第二正規形は、第一正規形を満たし、かつ、部分関数従属を排除します。すべての非キー属性が主キーに完全に従属している状態にします。
複合キーとは?
複合キー(Composite Key)とは、テーブルの主キーとして複数の列を組み合わせたものです。単一の列では一意にレコードを識別できない場合に、複数の列を合わせて一意の識別子を作成します。複合キーを使用することで、複数の属性の組み合わせでデータを特定することができます。
このテーブルの複合キーは「受注ID」と「商品ID」です。つまり、テーブルの行はこの2つのカラムの組み合わせで一意に識別されます。受注IDと商品IDの組み合わせが一意のレコードを決定します。
部分関数従属とは?
部分関数従属は、複合キーを持つテーブルにおいて、非キー属性が複合キーの一部のみに依存する状態を指します。
この場合、複合キーが「受注ID」と「商品ID」であるため、以下のような部分関数従属が存在します。
– 顧客ID と 顧客名 は 受注ID にのみ依存
– 商品名 と 単価 は 商品ID にのみ依存
この状態では以下の問題が発生します。
データの更新が非効率
たとえば、「ノートパソコン」の名前を「ラップトップ」に変更する場合、すべての関連するレコードを更新する必要があります。
不整合が発生する
また、更新中に参照された場合、一方は「パソコン」でもう一方「ラップトップ」と表示されてしまう、など不整合も発生します。
第二正規形にすることで、そのような無駄を排除します。
部分関数従属する属性を別テーブルとして切り出します。
第三正規化(3NF)
第三正規化では、推移的関数従属を排除します。
推移的関数従属とは?
Xが決まればYが決まる(X→Y)、Yが決まればZが決まる(Y→Z)場合、ZはXに対して推移的に関数従属していると言います。
「顧客名」は「顧客ID」に依存しています。そして、「顧客ID」は「受注ID」に依存しています。したがって、「顧客名」は「受注ID」を通じて「顧客ID」に依存していることになります。
このままだと、同じ顧客情報が複数のレコードに重複して存在するため、データの更新の非効率さや不整合が発生しやすい状態です。
これを切り出します。
(これはそのまま)
(顧客情報を切り出す)
(これはそのまま)
ここまでの正規化で、顧客情報や商品情報が一貫して管理され、データの更新や削除が容易になり、データの不整合が発生しにくくなります。
正規化のデメリット
正規化には、データの重複を排除し、整合性を保つための多くの利点がありますが、デメリットも存在します。特に、パフォーマンスに関しては以下のような影響が考えられます。
複雑なクエリによるパフォーマンスの低下
正規化により、データが複数のテーブルに分割されるため、データの取得のクエリが複雑になりがちです。複雑なクエリは、データベースの負荷を増加させ、応答時間を長くする可能性があります。
例えば、顧客情報と注文内容を取得するには、複数のテーブル(顧客テーブル、受注テーブル、受注明細テーブルなど)を結合する必要があります。このため、クエリが複雑になり、実行速度が遅くなることがあります。レスポンスの低下が大きく影響する場合、あえてテーブルに冗長性を残してレスポンスを向上させる方法があります。
注意点
正規化によって必ずしもパフォーマンスが低下するわけではありません。データベースのパフォーマンスは、主キーやインデックスの設計、クエリの最適化、データベース管理システム(DBMS)の性能など、さまざまな要因に依存します。適切な設計とインデックスの利用により、正規化のデメリットを最小限に抑え、効率的なデータベース運用を実現することが可能です。
まとめ
正規化はデータベース設計においてデータの冗長性を排除し、データの一貫性と整合性を保つために重要です。第一正規形から第三正規形までの基本的な段階を理解することで、より複雑なデータ構造に対処することができます。
正規化にはデータの整合性と効率を高める利点がある一方で、複雑なクエリ、パフォーマンスの低下といったデメリットも存在します。
過度の正規化はテーブルの分割が増え、データの操作が複雑になる可能性もあります。特に、データの読み取りが頻繁に行われる場合、正規化を一部緩和することでパフォーマンスが向上することもあります。これらのデメリットを理解し、特にパフォーマンスや実際の運用を考慮した設計が求められます。
正規化と非正規化のバランスを見極めて適切な正規化のレベルを選択し、実際のニーズに合わせたデータベース設計を行うことが、効率的で信頼性の高いデータベース設計において重要です。
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