アーキテクチャ根底技法 Part1

はじめに

ソフトウェアアーキテクチャの設計は、ただコードを書く以上に、システムの効率性、保守性、拡張性を確保するための深い思考と戦略が必要です。アーキテクチャ根底技法は、こうしたソフトウェア設計の基礎となる10の技法(抽象・カプセル化・情報隠蔽・パッケージ化・関心の分離・充足性、完全性、プリミティブ性・ポリシーと実装の分離・インターフェースと実装の分離・参照の一点性・分割統治)を示しています。これらの技法は、ソフトウェア設計の根本的な原則を理解し、それを実践することで、より良いソフトウェアを作るための鍵となります。本記事では、その中から最初の5つの技法について詳しく解説します。

アーキテクチャ根底技法とは何か?

よいコードの基礎原理

アーキテクチャ根底技法は、ソフトウェア設計の基本的な原則を指し、良いソフトウェアアーキテクチャを構築するための指針となります。これらの技法は、歴史的に多くのプログラマが蓄積してきた実践的で膨大な経験に基づいており、よくある問題に対する優れた解決策として再利用されてきました。

よいコードには「型」がある

よいソフトウェアの構築は、いくつかの基礎となる原理に基づいています。これらの原理は、多くのプログラマが経験を通じて見つけた「型」とも言えるもので、これに従うことで効率的で保守性の高いコードを書くことができます。

「型」を身に着ける

根底技法は特定のソフトウェア技術から導出されたものではなく、もっと根本的で本質的なものです。これらは開発方法論やプログラミング言語に依存せず、幅広い文脈で適用可能です。以下に、具体的な技法を紹介します。

抽象 (Abstraction)

概念的な「線引き」

抽象化とは、システムの特定の側面を取り出し、それに焦点を当てる技術です。複雑なシステムを理解しやすくするために、重要な性質に集中することがポイントです。抽象化は「捨象」と「一般化」の二つの観点から成り立っています。

  • 捨象:複雑な対象の一部の性質を捨て去り、重要な性質に集中すること。
  • 一般化:具体的な対象から共通の性質を抽出し、より汎用的な概念にすること。

複雑さへの対抗手段

抽象化は、複雑な問題に取り組む際の強力なツールです。捨象により不要な部分を省き、本質に集中することで問題解決の効率を高めます。一般化により、複数の事象に共通する特徴を抽出し、広く応用可能な解決策を見つけることができます。

「捨象」と「一般化」を駆使

複雑な対象に取り組むときは「捨象」を活用し、不要な部分を捨て去って本質に集中します。一方、異なる対象に取り組む際は「一般化」を活用し、共通の性質を抽出して汎用的な概念を構成します。

カプセル化 (Encapsulation)

データとロジックをグルーピング

カプセル化とは、関係性の強いデータとロジックを1つのモジュールにまとめることを指します。これにより、異なるモジュールを分離して扱うことができます。

抽象概念が混ざらない

カプセル化により、関連のある要素だけがモジュールに集まり、以下のメリットがあります。

  • コードが見やすくなる
  • 変更の影響がモジュール内に限定される
  • 独立した部品として再利用しやすくなる

仲間の要素をカプセルに込める

関係のあるデータやロジックを1つのモジュールにまとめてグルーピングします。これにより、モジュールが独立して動作しやすくなります。

情報隠蔽 (Information Hiding)

必要ないものは見せない

情報隠蔽とは、モジュールの内部実装を隠し、そのモジュールを使用するクライアントには必要最小限の情報だけを公開する技術です。これにより、データや関数の内部ロジックは非公開にされます。

関連を整理してシンプルに

モジュールの内部を隠蔽することで、インターフェースが小さくなり、やり取りがシンプルになります。公開されている部分が小さいほど、モジュール内部の変更が外部に影響しにくくなります。

内側は隠蔽する

モジュールはシンプルな機能のみを公開し、内部状態や内部機能はすべて隠蔽します。これにより、モジュール間の依存関係を最小限に抑えることができます。

パッケージ化 (Packaging)

モジュールをグルーピング

パッケージ化とは、関連のあるモジュールを意味のある単位にまとめ、これをグループ化することです。ソフトウェア全体を意味のある単位に分割し、パッケージとして整理します。

モジュール群の複雑度を下げる

大規模なソフトウェアでは、モジュールが増えることで複雑度が増します。パッケージ化により、ソフトウェア全体を小さな単位に分割し、管理しやすくします。

ボトムアップでパッケージを設計

関連のあるモジュールを集めてパッケージ化し、ソフトウェアのビルド方法を示すマップとして設計します。パッケージ設計は一度で終わりではなく、プログラミングの進行とともに進化させます。

関心の分離 (Separation of Concerns)

関心ごとにコードを分離

関心の分離とは、ソフトウェアの異なる機能や目的に関するコードを独立したモジュールとして分離することです。これにより、各モジュールが特定の関心に焦点を当てることができます。

関心単位で変更が行われる

コードの変更は、関心ごとに発生します。そのため、関心ごとにコードを分離することで、修正が容易になり、変更の影響範囲を限定することができます。

関心単位でモジュール化

関心ごとにモジュールを作成し、異なる責務を持つコードを分離します。これにより、コードが整理され、変更時の品質が安定します。

まとめ

アーキテクチャ根底技法の理解と適用は、ソフトウェア設計において極めて重要です。これらの技法を活用することで、効率的で保守性の高いシステムを構築することができます。

次回の記事では、残りの技法(充足性、完全性、プリミティブ性・ポリシーと実装の分離・インターフェースと実装の分離・参照の一点性・分割統治)について詳しく解説します。これらの技法も含めて、総合的にアーキテクチャ設計を行うことで、堅牢で保守性の高いソフトウェアを構築することができるでしょう。

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