データベース設計の基本

データベースは現代のソフトウェア開発において欠かせない要素であり、データベース設計は、システム開発において非常に重要なステップです。

効果的なデータベース設計は、システムのパフォーマンスや拡張性に大きな影響を与えます。データベース設計の基本的なステップやポイントについておさらいしましょう!

1. データベースとは?

まず、データベースとは何かを理解することから始めましょう。データベースとは、データを整理して保存するためのシステムです。データベースには、リレーショナルデータベース(RDB)と呼ばれる形式が一般的に使用されます。RDBは、テーブルという構造を持ち、各テーブルは行(レコード)と列(フィールド)で構成されています。

参考までに、リレーショナルデータベースの具体例として、データベース管理システム(DBMS)を紹介します。

MySQL
オープンソースのリレーショナルデータベースで、広く使用されています。特にWebアプリケーションのバックエンドとして人気があります。

PostgreSQL
高度な機能を持つオープンソースのリレーショナルデータベースで、ACID特性を完全にサポートしています。複雑なクエリやトランザクション処理に強みがあります。

Oracle Database
商用のリレーショナルデータベースで、大規模な企業向けの高性能なDBMSです。高い信頼性とセキュリティを提供します。

Microsoft SQL Server
Microsoftが提供する商用のリレーショナルデータベースで、Windows環境における統合性とパフォーマンスに優れています。

2.データベースの重要な基本概念

データベース設計にはいくつかの重要な基本概念があります。

2.1 エンティティと属性
エンティティとは、データベース内で管理されるオブジェクトや概念のことです。例えば、顧客、注文、商品などがエンティティに該当します。属性は、エンティティに関連する情報です。例えば、顧客エンティティには、名前、住所、電話番号などの属性があります。

2.2 主キーと外部キー
主キー(Primary Key)は、テーブル内の各レコードを一意に識別するためのフィールドです。例えば、顧客テーブルの主キーは顧客IDです。外部キー(Foreign Key)は、他のテーブルの主キーを参照するフィールドです。これにより、テーブル間の関係を確立することができます。

2.3 正規化
正規化とは、データの冗長性を排除し、データの整合性を保つためのプロセスです。正規化にはいくつかの段階がありますが、一般的には第三正規形(3NF)まで行います。正規化の目的は、データの重複を避け、更新時の不整合を防ぐことです。

3.データベース設計の概要

データベース設計は、データベースを効率的かつ効果的に構築するための全体的なプロセスを指します。このプロセスには、要求分析・要件定義、概念設計、論理設計(スキーマ設計)、物理設計のステップが含まれます。

テーブル設計は、論理設計(スキーマ設計)の一部として、個々のエンティティ(テーブル)とその属性(カラム)を詳細に定義し、データの冗長性を排除するプロセスです。

テーブル設計
テーブル設計は、個々のエンティティとその属性を詳細に定義し、データの冗長性を排除するためのプロセスです。エンティティの特定、属性の定義、正規化が含まれます。

  • テーブル名
    テーブルの名前を決定します。
  • カラム(フィールド)
    テーブル内の各カラムの名前とデータ型を定義します。
  • 主キー(Primary Key)
    テーブル内の各レコードを一意に識別するカラムを定義します。
  • 制約(Constraints)
    カラムに対して、データの一貫性を保つための制約を設定します。
    例:非NULL制約、ユニーク制約、外部キー制約など。

スキーマ設計
スキーマ設計は、データベース全体の構造を設計し、テーブル間の関係を定義するプロセスです。エンティティ間のリレーションシップの定義が含まれます。

  • テーブルのリスト
    データベース内のすべてのテーブルを定義します。
  • テーブル間のリレーションシップ
    テーブル間の関係(例えば、1対多、多対多など)を定義します。
    例:顧客テーブルと注文テーブルの間には1対多の関係がある。
  • データベースの構造
    データベース全体の構造を定義し、各テーブルの配置と関係を示します。
  • スキーマレベルの制約
    テーブル間の整合性を保つための制約を設定します。
    例:外部キー制約を使用して、注文テーブルの顧客IDが顧客テーブルの顧客IDと一致するようにします。

4.データベース設計の手順

4.1 要求分析、要件定義
まず、ユーザーやシステムの要件を収集し、必要なデータを特定します。これにより、どのようなデータが必要か、どう管理したいのか、どのように使用されるかが明確になります。データベースが管理すべき情報とその目的を明確にします。

4.2 エンティティの特定(テーブル設計)
データベースに保存する主要なエンティティを特定します。エンティティとは、データベース内で管理するオブジェクトのことです。
例えば、簡単なオンラインショップのデータベースを設計する場合を考えます。
顧客、注文、商品などがエンティティに該当します。

4.3 エンティティと属性の定義(テーブル設計)
各エンティティに関連する属性(カラム)を定義します。属性はエンティティの特性や情報を表します。
例えば、オンラインショップの例だと、以下のようなカラムが必要となるでしょう。

  • 顧客エンティティ
    属性: 顧客ID(主キー)、名前、住所、電話番号、メールアドレス
  • 商品エンティティ
    属性: 商品ID(主キー)、商品名、価格、在庫数
  • 注文エンティティ
    属性: 注文ID(主キー)、注文日、顧客ID(外部キー)
  • 注文詳細エンティティ
    属性: 注文詳細ID(主キー)、注文ID(外部キー)、商品ID(外部キー)、数量

4.4 リレーションシップの定義(スキーマ設計)
エンティティ間のリレーションシップを定義します。これにより、エンティティ間の関係性を明確にします。
例:顧客と注文の間には1対多の関係があるため、注文テーブルに顧客IDを外部キーとして追加します。

  • 顧客と注文の関係
    1対多(1人の顧客が複数の注文を行うことができる)
    注文テーブルに顧客IDを外部キーとして持つ
  • 注文と注文詳細の関係
    1対多(1つの注文に複数の注文詳細が含まれる
    注文詳細に注文IDを外部キーとして持つ
  • 商品と注文詳細の関係
    多対多(1つの商品が複数の注文に含まれることができ、1つの注文詳細に複数の商品が含まれる)
    注文詳細に商品IDを外部キーとして持つ

4.5 正規化(テーブル設計)
前述の正規化を行い、データの冗長性を排除し、データの整合性を確保します。
※正規化はデータの冗長性を排除し、データの整合性を保つために重要なプロセスですが、いくつかのデメリットも存在します。

4.6 インデックスの作成
データベースのパフォーマンスを向上させるために、適切なインデックスを設計・作成します。インデックスは特定のカラムに対して高速な検索を可能にし、クエリの効率を向上させます。通常、ユニークカラム以外の 頻繁に検索されるカラムにインデックスを作成します。
※主キーやユニーク制約には暗黙的にインデックスが作成されます
※RDMSによっては外部キーについて暗黙的にインデックスが作成されません

例えば、注文テーブルの注文日に頻繁にクエリを発行する場合、注文日にインデックスを作成することで、検索速度を向上させることができます。
インデックスの設計には注意が必要で、適切なカラムに対して過剰なインデックスを作成することでパフォーマンスを損なうことがあるため、設計段階での検討が重要です。

5. 具体的な実装

データベース設計の具体的な実装段階として、DDL(Data Definition Language)を用います。DDL(Data Definition Language)は、データベース内のオブジェクトを作成(CREATE)、変更(ALTER)、削除(DROP)するためのデータ定義言語です。

以下に具体的なDDLの例を示します。

CREATE TABLE customer (

    customer_id INT PRIMARY KEY,

    name VARCHAR(100) NOT NULL,

    address VARCHAR(255),

    phone_number VARCHAR(20),

    email VARCHAR(100) UNIQUE

);

CREATE INDEX idx_customer_name ON customer(name);

CREATE TABLE product (

    product_id INT PRIMARY KEY,

    name VARCHAR(100) NOT NULL,

    price DECIMAL(10, 2) NOT NULL,

    stock_quantity INT DEFAULT 0

);

CREATE INDEX idx_product_name ON product(name);

CREATE TABLE orders (

    order_id INT PRIMARY KEY,

    order_date DATE NOT NULL,

    customer_id INT,

    FOREIGN KEY (customer_id) REFERENCES customer(customer_id)

);

CREATE INDEX idx_order_date ON orders(order_date);

CREATE TABLE order_details (

    order_detail_id INT PRIMARY KEY,

    order_id INT,

    product_id INT,

    quantity INT,

    FOREIGN KEY (order_id) REFERENCES orders(order_id),

    FOREIGN KEY (product_id) REFERENCES product(product_id)

);

まとめ
データベース設計は、ソフトウェア開発において非常に重要な段階であり、システムのパフォーマンスや拡張性に直接影響を与えます。
それぞれのプロジェクトや要件に応じて、さらに詳細な設計や考慮が必要ですが、これらの基本的なステップに基づいて取り組んでみましょう。

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