SAP ERPとは?基礎知識からメリットまで解説|導入企業の一覧も
企業の業務管理には、さまざまなITシステムが活用されています。
SAP ERPもそのひとつです。しかし、「SAP ERPとは何か」「S/4 HANAとの違いはどこにあるのか」と疑問に思う方も多いでしょう。
そこで今回はSAP ERPの基礎知識をはじめ、S/4 HANAとの違いを紹介します。
SAP ERPのメリットや導入企業もあわせて解説するので、ぜひ参考にしてください。
この記事の目次
SAP ERPとはSAP社が開発したITシステム
SAP ERPは「SAP社のERP製品」を指し、読み方は「エスエーピー・イーアールピー」です。
まずは基礎知識として、SAPとERPそれぞれの概要を見ていきましょう。
・SAPとはドイツのソフトウェア開発会社
SAPは、ソフトウェア開発会社「SAP社」を指します。
SAP社は、1973年にアセンブラ言語の会計システム「SAP R/1」を世に送り出しました。
その後、統合型の業務基幹システム「SAP R/2」や「SAP R/3」を開発し、世界で有数のソフトウェア開発会社へと成長したのです。
日本では1992年にSAPジャパンが設立され、2018年の段階では2,000社以上がSAP ERPを活用しています。
このように、SAP社はERP製品において確固たる地位を築きました。
それゆえに、近年では「SAP=SAP社のERP製品」とするケースも多くなっています。
・ERPとは多部門の業務を一元管理できるシステム
ERPとは、エンタープライズリソースプランニング(enterprise resource planning)の略称です。
直訳すると「企業資源計画」であり、次に挙げるような業務に関わるデータを一元管理できるシステムになっています。
- ヒト(社員などの人材)
- モノ(製品や製造機器など)
- お金(資金)
- 情報(顧客データなど)
ERP完成前は、部門ごとにそれぞれ独自のシステムを利用していました。
たとえば、経理部門が商品の売れ行きを記録するには、次のような手順が必要です。
- 販売部門から商品の販売数を聞く(メールやUSBの受け渡しなど)
- 在庫管理部門から在庫数を聞く(同上)
- 集めた情報を経理システムへ手入力する
上記のような手順だと経理にとって使いやすいシステムを利用できるものの、情報共有の点では非常に非効率でした。
しかし、ERP製品は各部門が持つデータを共有・管理できるため、業務効率を格段に改善させることになったのです。
とくに、SAP ERPは業務の一元管理において優秀であり、次のような管理業務を一手に担います。
- 販売管理
- 在庫購買管理
- 倉庫管理
- 生産管理
- プラント保全
- 人事管理
- プロジェクト管理
- 財務会計
- 管理会計
- 不動産会計
- 設備予算管理
- クロスアプリケーション
SAP・ERP・S/4 HANAの違い
SAP ERPは管理業務において、非常に役立つITシステムだとわかりました。
しかし、「SAP=SAPのERP製品」を指すケースもあり、混乱してしまう方も珍しくありません。
また、S/4 HANAが登場したことにより、その混乱は大きくなった方もいるでしょう。
ここではSAP・ERP・S/4 HANA、それぞれの違いを紹介します。
・SAPとERPの違い
SAPは社名として使うのが本来の使い方ですが、SAP社のERP製品を指すケースも少なくありません。
一方、ERPは企業の業務を一元管理できるITシステムの名称です。
「SAP=SAPのERP製品」とする場合、「SAP=ERP製品のひとつ」としても認識できます。
SAPとERPを混同しやすい方は、前後の文脈から何を示すか読み解くとよいでしょう。
【例】
- 「〇〇について、SAPに問い合わせる」=SAP社
- 「▢▢さんにSAPを調整してもらう」=SAP ERP
・SAP ERPとSAP S/4 HANAの違い
S/4 HANA(エスフォー・ハナ)はSAP ERPの次世代バージョンです。
SAP ERPの保守サポートが2027年に終了するため、S/4 HANAへ移行する企業が続々と増えています。
移行期間は1年半以上かかる見込みですが、大企業であればあるほどデータ量が多く移行に時間がかかります。
そのため、2022年の段階ですでに移行作業を開始あるいは終了している企業も増えているのです。
SAP ERPはなぜ強い?導入メリットを解説
SAP ERPはAppleやBMWなど海外の大企業でも導入されているシステムであり、日本でも2,000社以上の企業が導入しています。
ではなぜ、それほどまでに多くの企業でSAP ERPが採用されるのでしょうか。
その理由は、利便性にあります。具体的な導入メリットは、おもに次の5つです。
- CRM管理(顧客データの管理)などERP周辺システムと連携しやすい
- 分析レポートをExcelでダウンロードできる
- 30種類以上の言語サポートがある
- 国際会計基準に対応している
- セキュリティ対策を施しやすい など
とくに、ダウンロードできる分析レポートは、オフラインでの情報共有にも使いやすいでしょう。
また、グローバルな企業でも海外拠点の業務を一元管理でき、海外人員の削減や業務効率化を進められます。
他社製品はどちらかというと、各部門における業務の進めやすさを重視するものがほとんどです。
しかし、SAP ERPは企業全体の業務における整合性や連携のしやすさを重視しています。
つまり、SAP ERPは部門が多いほど導入メリットが大きくなるため、海外の大企業をはじめとした多くの企業で導入されているのです。
SAP ERPの導入企業一覧
最後に、SAP ERPの導入企業を見ていきましょう。
なお、以下の一覧にはS/4 HANAへの移行を検討中、あるいは移行済みの企業も含みます。
- NECグループ
- パナソニックグループ
- 味の素食品株式会社
- ヤマサ醤油株式会社
- 株式会社LIXIL
- NTTコミュニケーションズ株式会社
- 九州電力株式会社
- 株式会社資生堂
- あすか製薬株式会社
- 早稲田大学 など
参考:SAP|お客様が SAP の製品、サービス、テクノロジーをどのように活用しているかを知る
以上のようにSAP ERPは多様な業界・業種で導入されており、利便性や信頼性が高い製品といえるでしょう。
SAP ERPとは業務効率を向上させるシステム!
SAP ERPはSAP社開発の業務管理システムであり、その利便性の高さから国内外の企業で導入されています。
他社よりも部門間の整合性を重視しているため、業務効率の大幅アップも期待できるでしょう。
なお、SAP ERPは2027年に保守サポートが終了する予定です。
新バージョンであるS/4 HANAへの移行は企業規模が大きいほど時間がかかるため、すでに移行を開始あるいは終了しているところも少なくありません。
SAP ERPを導入している企業は、早めに新バージョンへの移行を検討していきましょう。