【脱!SIerへの丸投げ】IT投資効率を悪化させるSI業界 vol.4 ~100%直を探そう~

本連載は、今まであまり語られてこなかったシステムインテグレーション業界(以下SI業界)の実態を交えながら、情シスの皆さまに知っておいていただきたいお話を全4回にわたってお届けします。

今まであまり語られてこなかったSI業界の実態を交え、SIer依存のシステム開発における問題点やその解決策を提案する【脱!SIerへの丸投げ】シリーズ。最終回となる第4回は「100%直を探そう」と題し、その真意について解説していきます。

「日本の情シスで働く皆さまがこの事実を知ることで、日本はきっと変わる」という思いで書いておりますので、どうぞ最後までお付き合いください。

 

成功へのキーワードは「100%直」

これまで「クライアントのIT投資効率を低下させてしまう多重下請け構造」、「某経済紙サイドで『プロ未満』と称されてしまうエンジニアのスキル」、「経営余力がない零細企業で勤務するエンジニアが大多数」といったことを解説してきました。
SI業界の問題点を皆さまと情報共有したく、いろいろお話してきましたが、結果「解決するのは到底無理なのではないか」と気分が滅入ってしまった方も少なくないと思います。
ところが、これら問題のほぼ大半を解決する方法が実はあるということを連載の最後にご紹介したいと思います。読者の皆さまにとって「目から鱗」となることを願っております。

 

カギはクライアントと「100%直取引」

SIerへの丸投げでIT投資効率が悪くなる主な要因として、以下の2点をお話ししてきました。

  • 目の前でエンジニアとすり合わせながら開発していない問題
  • 開発しているエンジニアのスキルがプロ未満

この2点を解決する最善の方法は、自社でエンジニアを雇用して内製化することです。しかしながら、社内に開発案件が無くなってエンジニアの仕事がなくなったり、開発のフェーズによって必要なエンジニアの人数が大きく上下することもあります。
IT投資に対する理解・積極性のある企業でなければ実際には厳しい方法といえるでしょう。

実は「脱SIer」には、別の方法もあります。それは「クライアント企業と直で取引しているソフトウェア開発会社を探す」ことです。
近年、エンジニアを雇用するソフトウェア開発会社の中からクライアントと直接開発することができるエンジニアを抱え、ユーザー企業と直接取引する会社が出現し始めています。

その一例は、私が所属する情報戦略テクノロジーであるとも言えます。これは、一括請負で持ち帰ってシステム開発するのではなく、「クライアントの横で密にコミュニケーションを取り合い、細かく確認をしながらシステムを開発する本来のあるべきシステム開発の形」を実践し、これを『ゼロ次請け』と名付けた会社です。
ユーザーとしてシステムを使う、社内でビジネスを企画する人の真横でビジネスモデルや要望、UIなどを確認しながら開発できるため、新しいアイディアを具現化するシステム開発には最適です。
また、その会社特有の業務フローをキャッチアップしながら作業を行い、且つ、その内容が合っているか合っていないかをシステムが全て出来上がってから確認するのではなく、機能毎に都度確認しながら開発できるため、業務システムのカスタマイズも得意としています。

今風に言えば「業務システム開発のサブスクリプション」でしょうか?

クライアント企業と直接取引をする会社は少ないながらも増えていますが、このようなのソフト会社は非常に稀といえます。一部だけはゼロ次請けを行うには会社として発展途上なため、直で開発できる力量を持つ“できるエンジニア”の数も少なく、そのようなエンジニアはすでに他のクライアントに囲われてしまっていることも多いでしょう。
エンジニア不足のこのご時世、“できるエンジニアは希少価値がある“のです。
結果、普段は3次請けの立場で働いているエンジニアが来て、全く機能しないと言う事になっているのです。

それでは、どうすれば脱SIerを実現できる発注先、優良なソフト会社を探す事が出来るのでしょうか?

 

「100%直」が見つからなければ

100%直請けのゼロ次請けに特化した会社は存在したとしても非常に稀であり、探し当てるまでの労力と時間を考えると現実的な話ではないかもしれません。仮に探し当てたとしても、その会社が本物か否かを判断するには、会社の実績ではなく、「提案されたエンジニアが本当にゼロ次請け開発できるエンジニアなのか」を見分ける能力も必要になります。
良い言い方ではないかもしれませんが、ソフトウェア開発会社は「どのエンジニアも優秀だ」と売り込みますが、その売り文句を鵜呑みにせずにスキルシートを読み取り、的確にヒアリングし、キッチリと見極めをする必要があります。実際、現実的な事ではないと思います。

最近では、エンジニアのスキルの見極めるプログラミング「学習・試験」プラットフォーム『track』などのソリューションも登場しており、これらを活用して技術スクリーニングを行うことも可能です。しかしながら、そこにはコストがかかることなので、ついつい二の足を踏んでしまいがちではないでしょうか。

そこで、この問題を解決する一つの方法をご紹介したいと思います。
それはWhiteBox(ホワイトボックス) というサービスです。

WhiteBox
https://white-box.co.jp/

 

これはソフトウェア開発会社に所属するエンジニアのスキルシート (エンジニア専用の職務経歴書)をデータベース化したクラウドサービスになります。
このスキルシート、抑えるべき基本はあると思いますが、各社が独自のフォーマットを作り、使っている状態であり、定型化されているとは言えません。
その為、読み取れる情報の質も量もバラバラという状態でもあります。
WhiteBoxでは、このスキルシートのフォーマット統一化が一つの目標であり、これによりエンジニアの強み弱みを明確にすること、エンジニアスキルを的確に把握・比較することができるようになります。その結果、クライアントの要望に合った最適なエンジニア、プロジェクトチームをクラウド上で組むことが可能になります。

従来からの人材派遣のように仕事と会社をつなぐマッチングサービスや、ランサーズのように必要な時に必要なだけ仕事とフリーランスをつなぐサービスは世の中にいくつもあります。
しかしながら、システム業界においての仕事の成果はエンジニアの能力に紐づく割合が高いため、会社の実績があったとしてもプロジェクトチームのエンジニアの能力が低ければ、思うような結果にならないのは、皆さんも肌でお感じになっているのではないでしょうか?

また、エンジニアの個の能力にフォーカスしたフリーランスのマッチングサービスにおいては、成果以前にプロジェクト完了前に“突然いなくなってしまう”等のトラブルが多いと言う事もよく耳にする話です。
このWhiteBoxはそういった従前のマッチングサービスの欠点を全て補う形で提供されるサービスであり、ユーザー企業の内製開発に有効です。

このWhiteBoxのプラットフォームは、2019年1月から、試験運用を開始。今では登録企業数約400社、登録エンジニア数も約12,000名に達しています。この約12,000名のスキルシートからクライアントの希望を反映したエンジニアに出会えるのです。目標として、3年後までには約50,000名のスキルシート登録、そして5年後の時点では約10,000の開発会社に利用いただき、約15万名のスキルシート搭載を予定しているといいます。

 

IT投資の無駄をなくすために

「脱!SIerへの丸投げ」というタイトルで4回にわたりお話しして参りました。システム開発を丸投げすることのマイナス要因について、少しでもご参考になっていましたら幸いです。

第1回でも少しお話ししましたが、日本ほどSI業界が巨大なピラミッドと化している国はありません。海外では、エンジニアは自社で直接雇用しプロジェクトが終わったら解雇する流れが普通です。ですが日本は雇用規制が厳しく労働者が守られています。雇用者の視点、被雇用者の視点、それぞれで見方が異なるので一概にどちらが良いとは言えませんが、国の制度が今の仕組みに影響しているのも事実です。
そのためクライアント企業がエンジニアを直接雇おうものならば、簡単に解雇などできませんので、雇用にリスクが生じてしまいます。
このような理由もありSI業界が生まれ、三次請け以下の下請け企業にエンジニアを雇用させる構造がどんどん膨らんだのです。

多重下請け構造が大きくなればなるほど、仲介業者も蔓延します。
自社でエンジニアを雇用せず、他社のエンジニアを紹介するだけの仲介手数料ビジネスに走る企業もたくさんあります。仲介業者が介在すればするほど、必要以上に手数料を払うことになりますので、クライアント企業にとって何一つメリットはありません。

 

最後になりますが、世界の企業の時価総額ランキングで、海外のIT企業が上位を占める中、一部メディアでIT後進国と表されるのが今日の日本です。
ITが遅れているだけの国ではなく、明らかに経済後進国です。
景気への不安が増す中、莫大なお金が無駄になるようなIT投資は絶対に避けなければなりません。

業界の方にとっては耳が痛い話がかなりあったかも知れませんが、ぜひこの記事が、IT投資・IT戦略の見直しのきっかけになれば幸いです。


稲葉 徹(イナバ トオル)

株式会社情報戦略テクノロジー

社長直下の組織として会社の未来を描いていく「未来創造室」所属。
スローガンである「IT投資効果を最大化するゼロ次請け」を実践し、顧客のビジネス課題解決という「結果」にこだわる同社において、「ゼロ次請け」を業界に浸透させる活動を行う。

 

 

<バックナンバー>

Vol1:なぜ丸投げが問題なのか

Vol.2:IT投資をゆがめるSIer

Vol.3:SI業界のエンジニアスキル不足

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