続2020年問題:もう目前!Microsoft製品の更なるサポート終了

企業そして情シスにとって「2020年問題」とまで言われたMicrosoft「Windows 7」の延長サポート終了。大多数の企業がこれを機にWindows 10へ移行したことでしょう。しかしながら2020年問題にはまだ続きがあります。今度はOffice 2010がこの10月にEOSを迎えます。直前の今、情シスが取るべき行動とは!?

2020年、Office 2010のサポートが終わる!

MicrosoftのOffice製品は、企業人であれば誰もが使い、使われた(!)経験があるため、もうおそらく説明するまでもないでしょう。

しかしながら、あえて説明しておくと、Officeとは、Microsoftの開発した、企業業務に必要な書類作成や計算機能やコミュニケーションツールのセットであります。
具体的には文章を書くためのWord、表計算を行うことのできるExcel、Eメール機能のOutlook、プレゼンテーションスライドのPowerPoint、チラシ作成DTPツールのPublisher、データベース管理のAccessといった機能が含まれています。(購入するバージョンによりバンドルされる機能が異なります)

さて、このMS Officeですが、Office 20XXシリーズはパソコンにインストールするソフトウェア型のツールです。3年ごとに新バージョンがリリースされており、現在はOffice 2019が最新です。
Office 2019の製品は4つの対象に分けられます。対象ごとに「個人(家庭)向け」、「個人(家庭)とビジネス(法人)向け」、「ボリュームライセンス(大企業向け)」、「学生/教職員向け(アカデミック版)」の4種類です。尚、各製品で使用できるOfficeアプリケーションには違いがあります。

また、Officeを使うには、前述のもの以外にも「Microsoft 365(旧Office 365)」というサービスを利用する方法があります。Microsoft 365は従来のOfficeアプリケーションを含みストレージやコミュニケーションツールなどを統合した企業向けツールセットとなっており、ユーザーごとにサブスクリプション契約を行い、契約している限り最新のOffice機能を使うことができます。こちらにはWeb版とデスクトップ版(但し、Microsoft 365 Business Standardプラン以上)のOfficeが含まれています。

さて、「続2020年問題」の話に戻りましょう。この未だに多くの企業で使われているOffice 2010に関するEOS、サポート終了の問題が「続2020年問題」なのです。

 

Officeのサポート期限とは

Officeにはそれぞれのバージョンにサポート期限が設定されています。

メインストリームサポート
このサポートは「メインストリームサポート」と言われるもので、この期間内であれば、対象製品に対するバグ修正・脆弱性対応などのセキュリティ更新プログラムの提供、また追加機能などの更新を受けることができます。
逆に言えば、このサポート期限を過ぎてしまったらそのままではあらゆる更新プログラムを受けることができなくなります。そしてメインストリームサポート期限はおよそ5年とそう長くはありません。
もっと長いサポートを必要とするユーザーのために、メインストリームサポート終了後も延長サポートを受けることができます。

延長サポート
延長サポートを契約すれば、セキュリティ更新プログラムと有償または無償のサポートに関して受けることができます。ただし、新機能追加の更新はありません。
とはいってもセキュリティ更新を受けられるため、使用可能期間はさらに伸ばすことができますが、やがてそれにも終わりが来ます。そして、Office 2010の延長サポートも終わりを迎える最終期限が、目の前に迫っている2020年10月13日なのです。

 

サポート期限後に使い続けることのリスク

(画像出展:Office 2010のサポート終了を告げるMicrosoftのWebサイト

以前から、情シスNavi.ではたびたび、“EOS後の製品使用継続に関するリスク”をお伝えしてきました。さて今回も、このリスクをお伝えする時が来たようです。

Office 2010で作りかけの書類が端末の中に入っている人、きっとまだまだたくさんいることでしょう。
Office 2010の移行をしようとしているのに、目の前の業務がいっぱいいっぱいでなかなか手を付けられないなんて人も…。

そんなときは、自分に問いかけてみてください。
「だからって、自分と会社を社会的な破滅の危険にさらしてもいいのか……?」と。

釈迦に説法とは思いますが、改めてそのリスクについておさらいしておきます。

リスク1・・・マルウェア感染

サポートを受けられなくなった製品では、マルウェアに感染するリスクが高くなります。脆弱性が見つかっても修正されることがないため、そこを突かれて悪意のある者の侵入を許してしまうかもしれません。セキュリティ更新を受けられないことで日々世の中に増え続けている新しいウイルスに対抗することができなくなってしまうのです。

リスク2・・・詐欺被害

セキュリティ更新を受けられないと、新しい手口の詐欺にも引っかかってしまうことがあります。2020年、フィッシング詐欺被害やビジネスメール詐欺は昨年からIPA調査の情報セキュリティ10大脅威ランキングの上位を占めています。
フィッシング詐欺やビジネスメール詐欺は、一見何の不正もなく見えるメールを起点に行われる攻撃です。メール自体がマルウェア本体というわけでないため、その時点で見破るのは難しいのです。
それでも、セキュリティ更新があれば、そこからアクセス先の不正サイトの検出など既知の手口には対応できることがあります。

しかしながら、常に最新のアプリケーションを使っているからと言って“被害にあわない”とは言い切れないのが、このフィッシング詐欺やビジネスメール詐欺のつらいところです。

リスク3・・・情報漏えい

もしマルウェアに感染してしまったら、または不正サイトにアクセスしてしまったら、その端末から情報を盗み出されてしまうかもしれません。Officeで扱う情報は、企業の大事な会議資料だったり、個人情報や収支情報だったり、未発表の開発内容だったりとたいていとても重要なものですよね。社外秘と記された大事な情報も、マルウェアに感染してしまえば外部へ漏れ出します。
情報漏えいが起きた場合の経済的コストは、平均で4億円とも言われています。
失うお金と信頼、お客様にも迷惑をかけてしまう……まさに地獄の炎の中に投じられてしまう思いでしょう。

 

サポート期限を迎えるまえにできること

Office 2010から移行しよう

そんな地獄を見ないように、Office 2010ユーザーが今できることは「Officeの移行」だけです。
Office 2010を使うのをやめる≒G suiteに乗り換えるという選択肢もありますが、この短日程でその所業をやり切るのは時間的に不可能と言えるでしょう。

では、Officeの移行先にはどんな選択肢があるのか、ここでまとめてみましょう。
組織での使い方に合う選択肢を見つけて一刻も早く移行することが大事です。

Office 2019

Office 2019は2020年9月時点で最新バージョンのOfficeソフトウェアです。
この2019であれば、2023年10月までメインストリームサポートが受けられ、延長サポートはさらに2025年10月まで受けることができます。
使い勝手も機能もOffice 2019とほぼ同じですので、そう戸惑うこともないでしょう。

Microsoft 365

Microsoft 365は、クラウドサービスとして使うことのできるOfficeです。以前は「Office 365」という名称でしたが、サービス名が変更され、現在は「Microsoft 365」となりました。(しかしながら、以前からMicrosoft 365と名付けていたサービスもあり、若干の混乱を招いています)

Microsoft 365はサブスクリプション制の契約で月々使用料が発生し、これがそのままサポート契約となります。そのため、契約中はずっとサポートが切れることがありません。また、プランが3段階用意されており、使いたい機能によってプランを選び分けることができます。

 

以下にOffice 2019(買い切り型)とMicrosoft 365(サブスクリプション型)の簡単な比較をしておきます。

 

今の時代に向いているMicrosoft 365

EOSに関する問題でいえば、Microsoft 365は「買う」のではなく「使う」クラウドサービスでありサポート期限という概念がない製品であることは既にお話しした通りです。Office 2010から移行するならば、これを機にMicrosoft 365を選ぶというのもありかもしれません。

Microsoft 365には従来のOffice製品にはなかった便利な管理機能やメリットが多くあります。詳しくは情シスNavi.の記事「【Office365 導入編】情シスが知っておくべきメリット/デメリットとは?」にもありますが、いくつか抜粋してみます。

[メリット]

  • 常に最新化できる
    自動更新設定で、常に新しい状態を保つことができます。
  • 管理がしやすい
    Web上でライセンス数や利用状況が一元管理できます。ライセンスの増減もかんたんです。
  • マルチデバイスで使える
    必要なデータはクラウド上なので、使うのはいつも同じ端末である必要がありません。OSも、WindowsでもMacでも使えます。

Microsoft 365には、上記のようにクラウドならではのメリットがあります。Office Onlineを使いブラウザベースでの共同編集による資料作成なども可能ですし、自動更新やWeb上で一元的にライセンス管理ができることは情シスにとってもうれしいメリットです。

さらに、Microsoft 365にはOfficeシリーズの機能の他にもクラウドストレージ、コミュニケーションツールTeamsといった機能がついています。クラウドのメリットを活かしたこれらの機能は、昨今広がっているリモートワーク(在宅勤務)にも適しているといえるでしょう。

またマイクロソフトでは、中堅・中小企業向けにリモートワークスタータープラン! として月額399円/アカウントというサービスも提供をしています。
これまでは、Officeアプリとして一律に導入していたかもしれませんが、アプリケーションの利用頻度に応じて、一部の人はWebとモバイル版での利用のみとすることで、コスト削減することも可能です。(参考記事:Microsoft:中堅・中小企業向けリモートワークスタータープラン! 月額399円

さて、デメリットはどうかというと、それはもちろんあります。

 

[デメリット]

  • 障害が起きた場合は何もできない
    もしMicrosoft 365にログインができないなどの障害が起きたら、Microsoft 365が使えなくなり業務が滞ってしまいます。残念ながら障害発生時は自社では対処できず、復旧を待つことしかできません。
    (但し、事前にドキュメントをダウンロードしておくことは可能。デスクトップ版がインストールされていればローカルPC内で利用は可能。)
  • ネットワーク負荷が上がる可能性
    Microsoft 365を導入すると、従業員が頻繁にクラウドアクセスを行う状態となり、社内のネットワーク負荷が上がる可能性があります。通信が重くなったり、その他のデータ通信に影響が出たりする恐れがあります。
    特にOffice Onlineでの利用となるとこうした影響が顕著に表れます。

 

とはいえ、リモートワークを行う人も増えてきた昨今であれば、(そもそもそんなに頻繁に起こるものでもない)障害時は思い切ってリフレッシュ時間に充てたり、自宅で働く人が多ければ社内のネットワーク負荷も分散されるなど、デメリットは以前よりもカバーしやすくなっています。

またPremiumプランであれば端末管理やマルウェア・不正リンクに対する防御機能など高いセキュリティ機能を有しています。

 

 

10月に切れるOffice 2010のサポート期限はもう目の前です。
何度も言いますが、『まだ使えるからいいや』という考えは禁物です。

もしまだOffice 2010を使っていて、移行にとりかかるなら…『今でしょ!』

 

 

【執筆:編集Gp 星野 美緒】

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