いまさら聞けない【情シス知識】Microsoft365とは?
Windows 7サポート終了でWindows 10に切り替わるこの時期、アプリケーションや端末利用の見直しをするには良い機会です。Microsoftは企業ユーザーをターゲットに、社名を冠したサービス「Microsoft 365」を展開していますが、この新しい“365サービス”は、今までの365とは何が違い、どこが新しいのでしょうか。
この記事の目次
新しい働き方のためのビジネスツールパッケージ、Microsoft 365
2019年4月から、時間外労働規制や有給取得の義務化などの働き方改革関連法案が施行され、世の中は労働者の都合に合わせた働き方ができるようにと変わっていく流れとなりつつあります。そうはいっても、企業の風土がそう劇的に変わるわけでもないと思っている皆さん。現場レベルでも少しずつ、外出からの直帰がしやすくなったり、在宅勤務がしやすくなったりといった変化が起き始めているのではないでしょうか。
Microsoftから提供されている企業向けサービス「Microsoft 365」は、そうした社会の流れの中で変わっていく働き方をサポートするサービスです。
Microsoft 365とは、Windows 10と、Office 365と、Enterprise Mobility+Security(EMS)を全てセットにしてクラウドベースで使うことができるサービスです。ざっくりいえば、「OS」と「ビジネスで使うアプリ一式」と「セキュリティ機能」という企業で使用する製品が全て詰め込まれている、“オフィスのIT丸ごとセット”といえるでしょう。
Microsoft 365には、大きく以下の4つのメリットがあります。
・企業クラウドにどこからでも参加でき、ドキュメントの共有や共同作業が可能に
・時間も場所も選ばず作業が可能、オフライン作業の反映もできるため生産性が高い
・ID、アプリ、データ、デバイスの保護機能を有する
・資産管理はクラウドベースで行える、デバイスとユーザーを単一のダッシュボードで管理できる
Microsoft 365はサブスクリプションモデルで提供されるサービスです。Microsoft 365の大きな特徴である“クラウドベースで使うサービス”であることと“サブスクリプションモデル”であることが、企業でリモートワークという働き方を力強く推進するエンジンとなります。Microsoft 365の具体的な機能とメリットについて解説します。
企業人が使うIT機能が全てセットになったMicrosoft 365
Microsoft 365には、以下の機能が含まれています。
・Windows 10
Windows 10 Enterprise/Proが使用できます。EdgeやOne Noteなどが使え、コミュニケーションツールを通してユーザー同士の作業連携が図れます。端末セキュリティ機能Windows Defender、更新管理機能のWUfBやキッティングツールのプロビジョニング機能も含まれます。
・Office 365
MicrosoftのグループウェアExchangeやSharePoint、メールサービスのOutlookとクラウドストレージサービスのOne Driveが使用できます。またWordやExcel、PowerPoint、Access、Publisherの定番Officeソフトウェアが使用できます。Word、Excel、PowerPointのオンライン版の使用もできます。(契約プランにより各機能が含まれない場合もあります。)
・EMS
クラウド上で端末管理ができるIntuneを含むセキュリティツールです。ID管理とアクセス制御の機能があり、デバイスとアプリの一元管理を行うことができます。また企業のデータをデバイス上・クラウド上でも連続的に保護することができます。データやユーザー行動の監視、攻撃検出から対処までがパッケージ化されています。
このように、デバイスがあってMicrosoft 365があればすぐにでも仕事が開始できるようになっています。
Microsoft 365がこれまでのサービスと違うところ
Microsoft 365に含まれている3つの機能は、今までも個別に販売され普及しています。Microsoft 365になって何が変わったのか?といえば、それはMicrosoft 365がクラウドベースで使うことを目的としていること、デバイス単位でなくユーザー単位のサブスクリプションモデルであるということです。
クラウドベースで使うMicrosoft 365
Microsoft 365では、ユーザーがログインすればどこからでも同じ仕事環境を安全に使用できます。従来の、人とデバイスを結び付けて管理していた運用では、社員の移動/異動が多い企業ではどこへ行くにも自分の端末を持っていくことが必須でした。社員の移動時の負担もさることながら、運搬時のセキュリティリスクも軽視できません。また、在宅ワークを行う場合に私用端末からSaaSなどを使って業務を行うにも、情シスは私用端末に保存されたデータの漏えいなどのセキュリティリスクについて気をもんでいたことでしょう。
そうした負担やリスクを解決するのが、豊富なセキュリティ機能を備え、クラウドベースで使えるMicrosoft 365なのです。
ユーザーにしてみれば、事業所を移動しても空き端末からすぐに自分の作業環境へログインできるメリットが得られます。情シスにとってのメリットは、デバイス管理のしやすさとセキュリティの高さでしょう。端末管理サービスのIntuneを使ってデバイス・アプリの管理を一元化でき、例えば私用端末から企業のデータのみを削除したりすることもできます。
サブスクリプションモデルのメリット
Microsoft 365のもう一つの特徴は、ユーザー単位のサブスクリプションモデルであることです。サブスクリプションモデルとは、製品そのものを購入してユーザーのデバイスにインストールして使う形式ではなく、月額課金で製品を使うことができるという契約形式です。
社内用端末、社外持ち出し用端末、自宅でのBYOD(Bring Your Own Device、私的デバイスの業務利用のこと)など場所を問わず一人がいくつものデバイスを使用することが増えている中、デバイスに紐づけられるライセンスは使い勝手がよくありません。デバイスごとではなくユーザーごとの契約形式がマッチしています。
また、セット販売であることで購入時の手続きやライセンスの更新管理が簡易になり、さらに3つの機能を別々に買うよりもお得な価格に設定されています。
Microsoft 365のプラン、内容と価格
Microsoft 365では、いくつかのプランを設定しユーザーが自分の使用形態に合った形を選べるようになっています。プランは企業向けと教育機関向けに分かれており、企業向けのプランと価格は以下のようになっています。
・Microsoft 365 Business 月額:¥2,180/ユーザー
内容は、Windows 10 Business、Office 365 Business、EMS(機能限定)。
EMSは一部機能の提供となります。300ユーザー以内の中小企業向け。OfficeアプリやWindows 10、Intuneの主機能がシンプルに使えます。
・Microsoft 365 Enterprise3月額:¥3,690/ユーザー
Windows 10 Enterprise E3、Office 365 E3、EMS E3。300ユーザー以上の企業向け。Businessとの違いは、より充実したセキュリティ機能、コンプライアンスツールが含まれることです。
・Microsoft 365 Enterprise5 月額:¥6,640/ユーザー
Windows 10 Enterprise E5、Office 365 E5、EMS E5。300ユーザー以上の企業向け。E3との違いは、主にEMSやWindows 10の標準セキュリティの上位機能「Windows Defender ATP」などセキュリティ機能が充実していること、より高度なコミュニケーションツールや業務分析ツール、コンプライアンスツールなどが含まれることです。
・Microsoft 365 F1 月額:¥1,090/ユーザー
Windows 10 Enterprise E3(機能限定)、Office 365 F1、EMS(機能限定)。F1は、接客業やサポート業務、ヘルスケアなどいわゆる現場「Firstline(最前線)」での使用を考慮したモデル。Word、ExcelなどのOfficeアプリはオンライン版のみ含まれ、シフト管理ができるスケジュールツールStaffHubを含みます。
リモートワーク改革を後押しするか
これまでは、メールや電話会議などのコミュニケーションツールを使ってもリモートワークでは共同作業がしづらいというのが従業員の本音だったのではないでしょうか。Microsoftは、そうした壁をとりはらってどこでも誰でもパフォーマンスを落とすことなく働ける環境を用意することを目指しているようです。チャットやOfficeアプリとの連携もできるコラボレーションアプリMicrosoft Teams、商用ユーザー向けプレビューの始まったMicrosoft ホワイトボードWebアプリなど、Windows 10で次々と共有機能が開発されています。
日本では少子高齢化による労働人口の減少が社会的な課題となっています。その反面、従業員のライフステージの変化による離職や長時間労働による離職の問題も依然として残っており、多種多様な働き方への変革が望まれています。こうしたサービスの登場が、今までより効率的で柔軟な働き方を後押しするのかもしれません。
【執筆:編集Gp 星野 美緒】