ERP及びCRM・SFAのクラウド利用率調査-矢野経済研究所
矢野経済研究所は、国内の民間企業を対象として郵送アンケート調査を実施し、ERP及びCRM・SFAといった業務ソフトウェアの利用状況を調査し、SaaSの利用率について分析・発表した。
自社の導入を控える企業の情シスにおいては、他社の状況については気になるところではないだろうか。ベンダーとの折衝などで何かヒントになることも。
調査結果概要
2018年7月から11月にかけて、国内の民間企業を対象として業務ソフトウェアの導入実態に関する郵送アンケート調査を実施し、528件の回答を得た。ERP(財務・会計、人事・給与、販売管理、生産管理・SCM)やCRM・SFAを現在導入している企業に、SaaSを利用しているかどうかを質問。
財務・会計システムを導入している495社、人事・給与システム導入483社のうち、SaaSを現在利用している比率は、財務・会計で2.8%、人事・給与5.0%となった。直近の調査では、「財務・会計」「人事・給与」における”次回SaaS導入予定”の比率は高まっており、サービスの普及・多様化と共に注目の領域であることがうかがえる。
ERPにおいては、2012年の調査開始以降、利用率は概ね横ばいで推移している。利用率が上がらないのは心情的な理由なのか、サービスが”帯に短し、襷に長し”でマッチしないためなのか、以前に比べれば、安価で利用できるようになっているので、金額以外の理由があるものと思える。
SaaS利用率は短期的に大きく伸びる傾向はみられないが、アンケート結果からは将来的には利用したいという意向はあるため、長期的には緩やかに増加していくと見込む。但し、SaaSよりも、システム基盤にクラウド(IaaS/PaaS)を利用する利用形態のほうが先行して拡大していると考える。
一方で、CRM・SFAを導入している132社では、SaaSの利用率は28.0%であった。過去の調査結果と比較してもSaaS利用率は順調に上昇しており、CRM・SFAについては今後ともSaaSを中心に導入が進む見通しである。
尚、これらのSaaS利用率はアプリケーションを利用するパブリッククラウドのSaaSを対象としており、システム基盤のみをクラウド(IaaS/PaaS)とする利用形態は対象としていない。
SaaSの利用率と次回システム更新時のSaaS導入予定
今後SaaSを利用したい比率は、財務・会計と人事・給与で1割程度
今後システムの導入・更新計画がある企業(財務・会計165社、人事・給与89社、販売管理146社)に対し、予定している導入形態について質問した。
SaaSと回答した比率は、財務・会計システム9.1%、人事・給与システム9.0%、販売管理4.1%となった。高い比率ではないが財務・会計と人事・給与では1割程度あり、今後システム更新のタイミングではSaaSが検討される機会は増えるであろう。
販売管理システムや生産管理システム・SCMについては企業毎に業務内容が大きく異なるが、財務・会計システムと人事・給与システムは企業による差が小さいため、SaaSで提供し易い。ベンダーから提供されるSaaSの種類も最近徐々に増えてきており、長期的には緩やかに上昇していくと矢野経済研究所では見込んでいる。
本調査の詳細
矢野経済研究所『ERP/業務ソフトウェアの導入実態 2019』(A4判、265ページ)