チャットボットの導入で情シスは救われるのか?
企業のFAQや製品紹介のウェブサイトでチャットボットを目にしたことがある方も多いのではないでしょうか? 実はチャットボットの技術・知識のキャッチアップは情シスの業務を楽にしてくれる可能性があります。 今回は情シス目線でのチャットボットの使い道や活用事例を紹介します。
この記事の目次
チャットボットは情シスの救世主になるのか?
ひとり情シスやゼロ情シスなどという言葉も登場している現状に加え、そもそもその守備範囲が広いため、とにかく忙しそうにしているのが情報システム部門という印象がないでしょうか?
やはり、忙しくなってしまう原因は問い合わせ対応にあるかもしれません。問い合わせする側からすれば、すぐに聞いてもらえることがとても重要なのですが、この行為は相手の時間を使ってしまいます。仮に担当者が1日に6件、各20分の対応をしただけで2時間も消失してしまうのです。そして、即答できる内容だけとは限らないので、さらに時間は費やされるといえます。
しかしながら、ここ2~3年でチャットボットのサービスをクラウドで提供する企業が増えてきています。クラウドサービスとして提供されることで、HWのことを気にせず利用することが可能になるので、導入のハードルは大きく下がったといえます。そこで、今回はこのチャットボットを使って、“時間を稼ぐ”ことができないかを考えていきましょう。
おさらい:チャットボットとは
チャットボットはその名の通り「chat:会話」と「BOT:ロボット」を組み合わせた言葉で、チャットは人間と対話するインターフェース部分を指し、ボットは問い合わせ内容などの質問を理解して正しい回答を返す仕組みを指します。
また、チャットボットは大きく分けて2種類あります。ボットの仕組みによって、人工知能(AI)を持たない「人工無能チャットボット」と人工知能を持つ「人工知能チャットボット」に分けられます。
人工無能チャットボット(AIナシ)
人工無能チャットボットは与えられた質問に一問一答、あるいは後述するシナリオに沿った答えを返して、ユーザーの知りたい情報を提供するチャットボットです。
人工知能を使っていないため「人工無能」という通称が付けられていますが、シナリオ型チャットボットとも呼ばれます。
これはシナリオ(フローチャート)構造になっており、質問に対するユーザーの選択によって会話が分岐し、最終的な回答に導かれます。選択肢をクリックするだけで目的の情報まで誘導することができるので、ユーザーにとってオペレーターと気軽に会話をしているかのような体験を提供できます。
但し、設定は、あらかじめユーザーの行動を想定してシナリオを設定する必要があるので、ゼロから作るとなるとためらいを感じるかもしれませんが、実際は、回答から逆算することでスムーズに質問文も浮かんできたり、サービス提供者がテンプレートを持っていたりするので、「思っていたより簡単だった」という声も聞かれます。
人工知能チャットボット(AIアリ)
人工知能チャットボットはAIが問合せ内容や質問を理解して、あらかじめ登録されている最適な回答を選んでユーザーに返す、対話型のチャットボットです。一問一答型チャットボットと呼ばれることもあります。質問に対して複数の解があるときにはとても重宝します。但し、情シスへの問い合わせのほとんどは、解は一つであることが多く、AIが得意とするゆらぎをどう生かすのかが、コストに大きくかかわってきます。
一問一答型チャットボットは、 “一つの質問に一つの回答を返すチャットボット”のことを言いますが、人工知能型はこの中の一種といえます。一問一答型チャットボットは各企業のサービスにより使われている技術も異なります。「問い合わせ内容からキーワードを抜き出し、事前に設定した質問文を参照・ピックアップし、該当する回答をいくつか提案するもの」や、「(きちんと)AIを用いて問い合わせ内容を読み解き、最適と思われる回答を一つ返すもの」など多種多様です。
また、前者の単純にキーワードを参照するタイプは一般的にAIを搭載していませんが、一問一答型チャットボットを「AIチャットボット」と表記するサービスもあるため注意も必要です。
人工知能型であれば、ユーザーは選択肢にとらわれず自由にフリー入力で問い合わせをすることが可能となり、自分の困りごとを自分の言葉で伝えられることが特徴です。
導入・運用に際しては人の手で回答に必要なFAQの登録や新しいFAQの登録、AIが返答した内容の正確性を評価して学習させなければいけません。人工知能に任せっぱなしではチャットボットの性能は発揮できないのです。
人工無能チャットボットと人工知能チャットボットはどちらが良い?
人工知能があるからといって、性能が良いチャットボットだとは限りません。
人工知能の性能を発揮させるには、上に書いた通り人間の手によるFAQの登録や追加、評価など学習させなければならず、それなりの工数がかかります。またシンプルな問合せやあらかじめ質問が想定できる場合は、人工無能チャットボットでシナリオに沿った対応をさせるほうが良いケースもあります。
AIがあるから優秀と考えるのは早計で、使い道によって適したチャットボットを選ぶことが重要です。
では、情シス担当者を助けるチャットボットとはどのようなものであればよいのでしょう?
情シスにおけるチャットボットの主な用途
チャットボットがどのようなものかはお分かりいただけたかと思いますが、このチャットボットが情シスの業務の中でどのように活用できるでしょうか? 各社様々な業務を行う情シスですが、もっとも効果的な活用先は間違いなく、「社内問合せ業務(ヘルプデスク)」といえるでしょう。
社内問合せ業務のチャットボット化
社員からの問合せに対応する業務は、多忙を極める情シスには負担です。
しかしチャットボットを導入し、社員からの問合せはチャットボットに任せてしまい、チャットボットでは対応できない問合せだけを情シスの社員が対応することで、情シスの負担は大きく減るはずです。
質問に対する回答だけでなく、ワークフローとまではいかなくても、質問に応じた回答とそれを実行するために必要な資料情報も併せて提供するなど、次のステップに対するフォローができるかどうかなどもサービス選定時には重要な項目といえるでしょう。
気になるチャットボットの導入・運用コスト
チャットボットの導入コストには以下の6つが考えられます。
・ベンダーに依頼するチャットボットシステム構築費用
・FAQとシナリオ作成(人工無能チャットボットの場合)
・AIが使う初期FAQの整備(人工知能チャットボットの場合)
・AIの学習に必要な回答評価(人工知能チャットボットの場合)
・新しいFAQの追加(FAQの継続的な整備)
チャットボットシステムはその性能によって価格帯にはかなり大きな差があります。
自社の規模や問い合わせ内容にもよりますが、社員が自然文検索を利用する必要が無ければシナリオ型チャットボットや(AIのない)キーワード参照の一問一答型チャットボットが適していると考えられます。
このようにヘルプデスクの問い合わせ窓口としての利用を考えると、ほぼ「答えは一つ」に集約されることが多いように思います。
最初から難しいことはせず、まずはやってみて、少しでも時間を稼ぐことができるのかを試してみることがポイントだと考えます。
クラウドでサービスされるからこそ、試してみることも容易になるので、最初の足掛かりとしては、いつでもやめられて、それなりの機能で一番安いサービスを探してみるのも良いのではないでしょうか?
AIチャットボットは初期FAQをもとにした回答と人間による回答精度の評価によって学習します。AIチャットボットの導入を考える場合、初期FAQ、AIに学習させるコストも必要となるため、ちょっと試してみるとはなりにくいのが実情です。
チャットボットの社内利用例
飲料業界大手のサッポロビールホールディングスは社内問合せにAIチャットボットを活用した結果、問合せ対応業務が45%削減、情報検索時間が80%削減できたという報告もあります。
(参考:野村総合研究所:https://www.nri.com/jp/journal/2017/1011/)
導入のためにFAQを一元管理する仕組み作りやAIの初期学習データ作成、FAQ整備などに奔走したとのことですが、結果的には大幅なコスト削減に繋がったといえます。
社内利用のチャットボットが成功した好例と言えるでしょう。
導入という手間の捻出には時間を割かねばなりませんが、より人数が限られている中小企業においては、情シスがチャットボットを利用する価値は十分にあると考えられます。
情シスには、チャットボット構築の知識は必須か?
今回は情シスにおけるチャットボット利用について解説しましたが、既にチャットボットはさまざまな業界で利用されており、社内ヘルプデスクの一時窓口として利用している企業は増えています。 残念ながら、FAQに同じことが書いてあっても見てもらえないというのが実情。簡単に自分の言葉で聞けることは質問する側も気軽に行えるためか、受け入れやすいと聞きます。
チャットボットで対応できることはチャットボットに任せ、対応できない部分を情シスのメンバーが対応することで、情シス業務の効率化につながります。
今後はプロジェクト管理や文書管理など、様々な分野に応用範囲が拡がっていくものと考えられますので、チャットボットとその関連技術をキャッチアップしておくことは、情シスにとって損はないのではないでしょうか。
【執筆:編集Gp 恵良 信】
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