好敵手の「akippa」と「Smart Parking」が提携!『世界最大のモビリティプラットフォーマー/スマートシティの実現をめざす』

2018年9月13日、両社は事業提携を発表した。これまで競合といわれてきた両社がなぜ提携に至ったのか、akippa代表取締役社長・金谷元気氏、シード代表取締役・吉川幸孝氏による記者会見のレポートをお届けする。

現在地から目的地までのアクセスのルート検索、予約、運賃の支払いをスマートフォンで一元化することでユーザーにあらたな利便性を与え、また、渋滞や事故などの都市部の交通課題の解決にも役立つと期待されている「MaaS(Mobility as a Service)」。その注目が集まるなか、大きな変動が見られるのが駐車場シェアリング業界だ。

駐車場シェアリングとは、たとえばAirbnbが個人宅を宿泊施設として利用できるように、個人宅の車庫などの空きスペースを駐車場として利用できるサービス。既存の駐車場が見つからないときなどに利便性が高い。この業界のプレイヤーとして広く認知されているのが「akippa」と「Smart Parking(シード社)」だ。akippaは業界1位の駐車場拠点数を誇り、シードはIoTを活用した先進的な駐車場シェアサービスを提供している。

 

【動向】駐車場シェア、国内シェアリング業界を牽引

シェアリングサービスというと、一般には民泊サービスに認知があるが、利用経験では駐車場シェアリングが圧倒的に多い。


<画像出展:http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h30/html/nd125200.html

 

業界ではプレイヤーは、「予約制」と「IoTの活用」に分かれる。akippaは予約制、Smart ParkingはIoT活用だ。最近では、予約制であればパーク24のB-times、三井不動産リアルティのtoppi、IoT活用ではドコモのトメレタ、ソフトバンクのBULLと、大手企業の参入が続く。
「参入障壁が低いこともあり、変化が激しい業界である。」と金谷氏も言う。

 

【akippa】スマホから15分単位、1日単位で予約できる駐車場予約アプリ『akippa』

akippaは2009年2月設立。住友商事やグロービスキャピタルパートナーズ、DeNAなどから総額24億円の出資を受け駐車場予約アプリ「akippa」の運営を行なっている。


<akippa株式会社代表取締役社長 金谷元気氏>

 

「akippa」は、スマホから駐車場を予約できるアプリ。未契約の月極駐車場やマンションの駐車場など、さまざまなスペースを15分単位、または1日単位で予約できる。今年5月、同社は入室管理システムを手がけるアートと共同で、駐車場出入り口のゲートをスマホからコントロールできる「シェアゲート」を開発。これにより、ユーザーはホテルやビルの駐車場も「akippa」から利用可能となった。

現在、「akippa」の登録会員数は約90万人(ユニークユーザー含)。駐車場累計拠点数は約2万3000拠点を数える。

「最大手のコインパーキングの拠点数はおおよそ1万9000拠点であり、累計で弊社は日本一の拠点を持つ」(金谷氏)

渋滞ゼロを達成−−

駐車場利用者の集中による渋滞と利用料の大幅な値上げ。今年8月に起きた「ねぶた祭りの事例」で広く知られるところとなったが、金谷氏はこのような事例の回避にakippaは貢献するとし、最近実施したプロサッカーチーム「V・ファーレン長崎」との取り組みを紹介した。

試合日に発生するスタジアム周辺の渋滞の改善に向け、スタジアム付近の複数の駐車場をakippaから予約可能に。その結果、4時間の渋滞がゼロになったという。この成果から、現在名古屋市教育委員会と共同で実証実験を企画しており、近々名古屋グランパスの試合が開催されるパロマ瑞穂スタジアムで同様の取り組みを行う。

「予約の方は駐車場へ。そうでない方は公共交通機関でアクセスする。このような環境を提案することで、交通環境を改善していく」(金谷氏)

 

【シード】スマホですべてが完結する駐車場シェアアプリ『Smart Parking』

シード社は2002年4月設立。名古屋に本社を構える。ITを活用した駐車場サービスの開発・提供を事業としており、「Smart Parking」ほか、駐車場をアプリで検索できる「パーキングライブラリ」、ユーザーと月極駐車場のマッチングを行う「月極ドットコム」、コインパーキングを検索できる「コインパーキングダム」がある。
「Smart Parking」は、スマホで駐車場検索から入出庫手続き、清算までを行えるアプリ。駐車場を探し、駐車券を取り、クルマを入庫。料金を確認して、両替・清算して出庫という従来の手間が不要で駐車場を利用できる。

<株式会社シード代表取締役 吉川幸考氏>

 

同アプリの肝となるのが、スペースを“コインパーキング化させる”IoTデバイス「ビーコーン」だ。カラーコーンにbeaconが搭載されており、Bluetooth通信によりユーザーにサービスを提供する。また、同デバイスは可搬性が高く、設置も簡単。ビーコーンを置くだけで空きスペースをコインパーキング化でき、駐車場や空きスペースのオーナーメリットも大きい。

他方、同社が数多くの特許技術を保有しているのも特筆すべき点だ。「Smart Parking」に採用されている「対象物特定システム」や「駐車場選択用ユーザ・インターフェース方法」、「駐車場管理方法」はじめ、現在17の特許を保有している。

「弊社独自で特許技術を活用するのではなく、さまざまな企業に活用していただき、世の中に貢献していきたい」(吉川氏)

 

【提携】「予約制」と「手軽さ」のシナジー効果がユーザーの利便性をより高める

両社の業務提携は、それぞれのユーザーニーズへの対応がある。

「akippaでは、短時間利用の際に予約を面倒に感じてしまうユーザーが少なくない。一方、Smart Parkingでは予約機能がないため、確実に駐車場を利用したいというユーザーの声がある。『予約できる』『手軽に利用できる』という双方の強みを生かせば、さらに利便性の高いサービスを提供できるようになる」(金谷氏)

以下が具体的な提携内容だ。

・「Smart Pakingの駐車場をakippaに掲載」
akippaの予約レス、Smart Pakingの予約、双方のニーズに対応。また、akippaのダイナミックプライシングにより、収益アップを見込む。

・「シード社のビーコーンをakippaにOEM提供」
akippaのアプリにSmart Pakingの技術を実装。ユーザーがakippa上でビーコーンを介したサービスを享受できるようにする。

・「シード社のパーキングライブラリからakippaに送客」
25万人がインストールしている駐車場検索アプリ「パーキングライブラリ」にakippaの駐車場データを追加させることで、駐車場シェアの認知度をより向上させていく。

・「相互代理店」
両社がサービスを紹介し合い、幅広いオーナーニーズに対応する。

両社は記者会見当日より、「相互代理店」の取り組みをスタートさせた。また、「Smart Pakingの駐車場をakippaに掲載」では、すでに事例も誕生している。ナゴヤドーム周辺に設置のSmart Paking管理の駐車場をakippaに掲載しており、スタートから1ヶ月弱で70%の稼働率で好調に推移しているという。

 

【ビジョン】ユーザーの利便性を追求し市場を築き、「より便利な社会」を実現していく

上記提携を順次進め、両社は2019年内に「システム連携および在庫連動」を実現させ、さらに提携を加速させていくとしている。

また、両社は似たビジョンをそれぞれに持つ。akippaはMaaSを軸にした「モビリティプラットフォームの構築」であり、「サービス」「システムAPI連携」「データ活用」から、クルマ、電車・バス、タクシーなどの交通手段やラストワンマイル(公共交通利用後の目的地までの対応)にソリューションを提供できるプラットフォームを展開していく。そして、2030年のビジョンとして標榜するのが「世界最大のモビリティプラットフォーマー」だ。

「より多くの人が駐車場シェアを認知でき、かつ利便性を実感できるプラットフォームをめざしていく。そのために世界最大をめざす」(金谷氏)

一方のシード社は、「スマートシティ構想」を標榜する。

「『ストレスフリーな社会』をテーマとして、生活者が便利に快適に過ごせる社会づくりに貢献していく。駐車場シェア事業から、さまざまな企業と連携し、社会課題解決への貢献をめざしていく」(吉川氏)

会見の質疑応答では、以下の質問も投げかけられた。

“続く、大手参入をどう見ているか?”

これに対し、

「大きな脅威とは感じていない。なぜなら業界は市場としてまだ醸成されているとはいえない。だからこそ、さまざまな企業が参入する。むしろ歓迎することだと思う。」(吉川氏)

「結果、業界認知度が拡大される。よいことだと感じる。」(金谷氏)」
さらに、

「駐車場シェアに求められるのはテクノロジーだけではない。ユーザーの獲得、オーナーとの折衝など、営業に多大な労力を求められる。今年、楽天やリクルートが撤退を決めたのもそこがコストに見合わなかったのだと思う。」(吉川氏)

 

現在、駐車場シェアリングには15社のプレイヤーが存在するなか、50%のユーザーシェアを持つakippa。簡単にユーザーが利用でき、かつ空きスペースをオーナーが手軽に収入化できるSmart Paking。両社の提携は、駐車場シェアリング、パーキング3.0の新時代を築いていくことだろう。

しかしながら、提携に始まったこの両社、利用者視点では入口が二つである必要はなく、共通でサービスをすべきかと思われる。VCや投資家の調整がつけば、この次は合併となるのだろうか?

 

【執筆:編集Gp 坂本 嶺】

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