使える! 情シス三段用語辞典70「電子政府」

常に新しい用語が生まれてくる情報システム部門は、全ての用語を正しく理解するのも一苦労。ましてや他人に伝えるとなると更に難しくなります。ジョーシスでは数々のIT用語を三段階で説明します。

一段目 ITの知識がある人向けの説明
二段目 ITが苦手な経営者に理解してもらえる説明
三段目 小学生にもわかる説明

取り上げる用語を“知らない”と思った人は、小学生にもわかる説明から読んでみると、理解が深まるかもしれません!?

一段目 ITの知識がある人向け 「電子政府」の意味

電子政府とは、文書、手続きをデジタル化した政府のことである。デジタル化を進めることで行政の透明性、公正性を高め、住民の負担軽減、行政の合理化、災害対策を実現することが期待される。

2018年7月、国連の経済社会局(UNDESA)が発表した「世界電子政府ランキング」では、デンマークが1位に輝いた。九州と同程度の面積で人口約550万人のデンマークは、小国ならではのフットワークを活かし、十数年も前から戦略的にデジタル化に取り組んできた。

2001年にはIDとパスワードを用いた電子署名を導入、2006年からは市民ポータル「Borger.dk」の運用を開始した。市民ポータルは住民サービス、税務ポータル、医療・保険ポータル、電子私書箱などで構成されている。各自治体のシステムが連携されているため、転居手続きもオンラインで完結するなど、利用者の利便性を追求し
ている。

Borger.dkのシステム構成(画像出典:「デンマーク電子政府の試み」)

 

2018年には「デジタル化のフロントランナー」という国家戦略を掲げ、あらゆる分野において電子政府システムの構築を進めている。また、デジタル化に対応できる人材を育てるべく、教育に予算をかけているのも特徴だ。

電子政府の取り組みが有名なのは、ランキング16位のエストニアだ。1991年に旧ソ連から独立した同国は、テクノロジーを土台とした立国を目指した。国民全員がチップ内蔵のIDカードを持ち、「結婚」「離婚」「不動産手続き」以外はすべてオンラインで手続きが完結する。企業の決算や確定申告も自動化されているため、税理士がいらなくなっている。

旧ソ連から独立したとはいえ、人口わずか130万人の小国であるエストニアは、常にロシアからの脅威にさらされている。同国がこのように“電子武装”するのも、大国の論理から逃れ、独立国家としてやっていくという意思の表れだ。現在はブロックチェーンで手続きを記録し、透明性を確保するとともに必要に応じて追跡できるようになっている。

また、エストニアは「e-レジデント」を導入し、世界各国から電子的な居住者を受け入れている。国民でなくてもIDを取得でき、会社設立や銀行口座の開設が可能となる。すでに2万人の電子居住者がいて、1,400を超える起業が行われている。

日本は2018年ランキング10位となった。「技術インフラ」「オンラインサービス」が評価されて昨年11位からランクアップしたが、デンマークやエストニアと比較して行政のデジタル化が進んでいるとはいえない。縦割り行政、国と地方自治体の連携の弱さなどが高い壁となっている。

とはいえ、2016年にマイナンバー制度が開始され、デジタル化のスタートラインに立った。マイナンバーを介して文書がデジタル化され、国の機関、地方自治体、民間企業との連携が進、国民・事業者目線で利便性が追求されれば、真の電子政府と呼べるようになるだろう。

 

二段目 ITが苦手な経営者向け

情シス小林さんと部長のある日の会話――

部長:先月引っ越したんだけど、役所に手続きに行ってないんだよ。家族もみんな忙しくてさ。

小林さん:わかります~。手続きめんどくさいですよね。デンマークなら市民ポータルからオンラインで手続きできちゃいますけどね。

部長:なにぃ。こっちは引っ越したら転出する地域の市役所に行って、また転入する地域の市役所に行かないといけないんだぞ。

小林さん:各地方自治体はシステムがバラバラですからね。国のシステムも含めて連携がとれれば、本当の意味での電子政府といえるでしょうね。

部長:日本だって少しずつオンラインで手続きできるようになっているから、前に進んではいるんだろうけどな。

小林さん:韓国も先進的な電子政府と言われてますけど、韓国で住民登録番号が導入されたのは1962年ですからね。日本にマイナンバーが導入されたのは、2016年。大人とよちよち歩きの赤ちゃんぐらいの差があっても仕方ないです。

部長:マイナンバー自体も浸透してないしな。

小林さん:プライバシー侵害の懸念が根強くありますからね。例えばエストニアではeIDって呼ばれてますけど、「プライバシーの侵害」じゃなく「透明性の確保」という認識なんですよね。政府官僚の給料も一般公開されているので、汚職が激減したらしいです。

社長:ほぉ。でもエストニアは国の歴史も浅いし、人口も少ないからできたんじゃないか。

小林さん:それは言えますけどね。でもこれから日本は少子高齢化でどんどん人手不足になるのに、いつまでも煩雑な手続きして生産性が低いままでいいのかって問題もありますよね。

社長:行政サービスがびっくりするぐらい便利になれば、国民の支持を集められるんじゃないか。働いている人にとっていろんな手続きの負担が重いからな。確定申告とかさ。

小林さん:エストニアでもeIDの浸透には5年かかったっていいますからね。とりあえず市役所には行ってくださいね…。

 

三段目 小学生向け

みんなが生まれたとき、パパやママがいちばん最初に何をしたか知ってるかい?

赤ちゃんが生まれたとき、パパやママが名前を決めて、生まれたことを届けに市役所に行くのがルールなんだ。

そうすると、赤ちゃんに番号がつけられる。それを「マイナンバー」って呼ぶんだよ。

マイナンバーは、みんなにもひとりひとりにつけられるんだ。

なぜ国がみんなに番号をつけるかわかるかい?

それはいろいろな手続きを簡単にできるからなんだ。世の中には同じ名前の人もいるから、すばやく見分けるには、番号が便利なんだよ。

マイナンバーでやりとりをすれば、市役所で働いている人の負担が軽くなる。パパやママもインターネットで手続きができれば、仕事を休んで市役所に行かなくてもいいんだ。

この番号を使って、すべての人のデータを管理する国のことを「電子政府」と呼ぶ。

電子政府になるにはどうすればいいんだろう?

どこの国でも昔は紙でやりとりしてきた。まずはそれをデジタルに変える必要があるよね。

それからパパやママが、役所に行かずにインターネットでやりとりできるような仕組みを作らないといけない。

あとはそのデータをいろいろな国や役所から見えるようにして、やりとりできるようにする必要がある。

自分のデータをすべて国が管理することになるから、「監視されているのかな?」と心配する人もいる。みんなが安心して使えるような仕組みづくりも大切なことなんだ。

問題はたくさんある。それでも電子政府を作っていこうと、他の国に行って教えてもらい、マイナンバーをいろいろなところで使えるように取り組んでいるんだ。

電子政府になることで、今まで時間がかかっていた仕事がラクにできるようになって、みんなの暮らしがよくなると考えられているからなんだよ。

 

 

さて、ご理解は深まったでしょうか?

【執筆:編集Gp 山際 貴子】

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