常に新しい用語が生まれてくる情報システム部門は、全ての用語を正しく理解するのも一苦労。ましてや他人に伝えるとなると更に難しくなります。『情シスNavi.』では数々のIT用語を三段階で説明します。
一段目 ITの知識がある人向けの説明
二段目 ITが苦手な経営者に理解してもらえる説明
三段目 小学生にもわかる説明
取り上げる用語を“知らない”と思った人は、小学生にもわかる説明から読んでみると、理解が深まるかもしれません!?
一段目 ITの知識がある人向け「5G」の意味
5G(第5世代移動通信システム)は、モバイル通信の規格だ。Gは世代(Generation)を表し、現在利用されている4Gの次の世代の規格となる。
2Gまでは、日本、米国、欧州でそれぞれ開発していたが、3Gで初の国際標準として制定され、世界どこへ行っても通話が可能になった。
また、2Gから可能になったデータ通信は、インターネットアクセス・メールの送受信から音楽・ゲーム配信、そして動画配信にまでサービスが拡大している。
モバイル通信規格の歴史
(画像出典:平成28年1月29日総務省「移動通信分野の最近の動向」)
5Gは今までのスマートフォン・タブレットの用途だけでなく、自動車や産業機器など、2020年代の社会全体を支える通信として期待される。
5Gには主に次のような要件がある。
・最大20Gbpsの「高速大容量通信」
現在主流であるLTEの約100倍の通信速度を実現する。そのために周波数帯を4Gで使用されているものに加え、帯域幅の広い6GHz以上の周波数帯を使用する。4K/8Kの精緻映像も超高速に伝送することが可能となる。
・ネットワーク遅延が1ミリ秒以下となる「低遅延」
4Gでは10~数十ミリ秒の遅延があったが、5Gでは1ミリ以下となり、遅延が許されない遠隔治療や自動運転への適用が可能となる。
・100万台/1平方キロメートルが接続できる「多接続」
2025年にはインターネットに接続する機器が世界で800億台にのぼるといわれる。これから迎える本格的なIoT時代に向けて、多数の端末が密集しても、安定した通信が行える技術が求められる。
これらの要件をクリアすることにより、5Gではスマートフォン・タブレットだけでなく、自動車分野、産業機器分野、ホームセキュリティ分野、スマートメーター分野などへ対象領域が広がり、通信のエコシステムの拡大が期待されている。
二段目 ITが苦手な経営者向け
情シス小林さんと社長のある日の会話――
社長:小林さん、ちょっと。
小林さん:何ですか?社長。
社長:最近5Gってよく聞くけど、何なの?
小林さん:スマホの表示で3GとかLTEって見たことありません?モバイルの通信規格なんです。
社長:へー。じゃあWi-Fiもか。
小林さん:いや、Wi-Fiは確かに無線技術だけど、Wi-Fiスポットの先からは普通のLANみたいに光ファイバーとかADSLとかにつながってるんですよ。それにWi-Fiスポットのカバーできるエリアは狭いから、ちょっとでも離れたら通信できません。
社長:なるほど、確かにLTEだったらどこに移動しても接続できるな。
小林さん:そうなんですよ。LTEとか3Gとかのモバイル専用の通信方式だと全国に配置されている基地局とやりとりをすることで通信してるから、移動中もつながるんです。それでその通信方式が、1Gから今の4Gまで進化して、次は5Gというわけです。ちなみにLTEは3.9Gって呼ばれてます。
社長:とすると、1Gは初期の携帯電話か。
小林さん:そうそう。1G時代はアナログで通信してました。自動車電話とか、ショルダーフォンとかありましたよね。2Gからデジタル化されてデータ通信ができるようになったんです。ほら、iモードってあったじゃないですか。あれも初めて登場したのは2Gの時代ですね。
社長:iモードかあ。なつかしいなあ~。3Gは?
小林さん:3Gはガラケーからスマホへの移行期ですかね。3Gからは規格が世界標準になったんですよ。外国に行っても携帯電話で通話できるようになったんです。
社長:とするとLTEや4Gは完全にスマホ対応か。
小林さん:そうなんです。スマホになって、動画配信も増えましたからね。大量のデータを高速に通信するニーズが高まったんです。
社長:とすると5Gもその延長か。4Kや8Kの動画も出てきてるからな。
小林さん:それもあるんですけど、 今までと大きく違うのはIoT対応ですね。いままでインターネットにつながるのはスマホやパソコンだけだったけど、今後はあらゆるモノがつながりますからね。
社長:IoTだと、何が必要になるんだい?
小林さん:通信の遅れを少なくすることですかね。いまインターネット電話をすると音声が届くのが遅延して、話がかみ合わないときがあるじゃないですか。電話での会話なら遅延してもたいしたことないけど、例えばクルマの自動運転で制御が遅延したら大変なことになりますよね。
社長:クリティカルなサービスにも対応できるってことか。
小林さん:あと狭い場所にたくさんの端末が密集する場合も問題があります。基地局がそれぞれの端末との通信をさばききれなくなるんですよ。
社長:確かに今もコンサート会場でつながらないことがあるなあ。
小林さん:でしょ。5Gではスポーツ観戦している人が、リプレイの動画をスマホでみる、なんてサービスも想定してますね。
社長:今までなかったビジネスも生まれそうだな。でもたくさんの端末と通信できるインフラを作るなんて、設備コストが高そうだね。
小林さん:確かにそうなんです。実際、普通の動画だったら今でも十分見れるでしょう?5Gに対してどれだけ一般の人のニーズがあるのかが、不透明なんです。ニーズがあって普及すればコストは回収できますけど。
社長:今後画期的なIoTサービスが生まれれば、普及も進むんだろうな。
三段目 小学生向け
みんな、スマートフォンは持っているかい?
スマートフォンはただの箱なのに、なぜ離れた人と電話できるんだろう?
それは、スマートフォンと電波でつないでくれる塔が、いろいろな場所にあるからなんだ。
たとえば家族で出かけたとき、クルマの中で誰かと電話をしたことはないかい?
クルマはずっと動いてるのに、電話で話を続けることができるよね。
それは塔と塔が電波をつないで、やりとりをできるだけ途切れないようにしてくれているからなんだ。
それぞれの塔やスマートフォンは、移動していても、やりとりを続けられるようにルールを取り決めている。
そのルールをこんど新しくしようとしている。それが「5G」なんだ。
ルールは1Gから始まっていて、順番に数えて5Gになったんだ。
なぜルールを新しくしなければいけないかというと、インターネットにつながっているモノがどんどん増えているからなんだ。
いま、インターネットにつながっているのはスマートフォンだけじゃない。家のなかにあるエアコンやおふろ、ドアのカギもつながりはじめている。
たとえば、外にでたときにカギを自動で閉める。外にいるときにお風呂をわかす。こんなこともできるんだよ。
家の中にあるものだけじゃない。クルマやスーツケース、信号機だってつながるかもしれない。
クルマが信号機とやりとりして、信号が赤だったら、自動で止まることもできるようになる。人間のうっかりミスを防いでクルマを運転する負担を軽くすることができる。
世界中のモノがどんどんつながって、今は思いもしないような未来が待っている。5Gは未来を支える技術なんだ。
さて、ご理解は深まったでしょうか?
【執筆:編集Gp 山際 貴子】