【実践・情報セキュリティ講座】ビジネスメール詐欺(BEC)にご注意!
経理担当者を狙うBECの手口とは?
いきなり詐欺メールが届けばたいていの人は気が付きます。しかし、単独犯だったオレオレ詐欺は進化して、たくさんの役割を持つ人物が登場する劇場型の犯罪となったことで、見破りにくくなっています。同じようにビジネスメール詐欺(BEC)も手が込んできているのです。
その手口はこうです。犯罪者はターゲットにする企業の経理担当者のメールアドレスを調べます。FacebookなどSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)を活用し、担当者の知り合いに登録されている取引先や社内関係者などの交友関係を調べ上げていきます。
そして、まず社内の知り合いなどを装って、担当者に標的型メール攻撃を行います。何気ない文章で、添付ファイル付きメールを送って経理担当者に開けさせます。このメールは特に不自然な内容ではなく、添付ファイルを開けても見た目には何も起こりません。しかし、裏側で情報を盗み取るウイルスに感染させます。そして、ウイルスを通じて経理担当者が社内でやり取りしているメール内容を盗みます。
犯罪者は、入手した情報から取引先の担当者名やメールアドレスとともに、経理担当者の定型文章や文章のクセが分かるので、取引先の担当者名をかたって、偽の請求書をメール添付して送ることができます。
送る請求書は正規のものにそっくりです。そして、本文には「いつもの口座ではなくこちらの口座にお願いします」ともっともらしい理由が書いてあり、相手を信じ込ませて振り込ませます。
上司になりすまして振込指示
ビジネスメール詐欺でやっかいなのは役員や部長など、上司になりすますことです。会社の拠点が1つだけなら口頭で振込指示しますが、いくつも拠点があればメールでの振込指示が増えます。
経理担当者に役員からメールが届きます。本文には役員が普段から、よく使いまわす表現が使われており、内容は「企業買収にからむ案件で秘密裏にすすめないといけないので社内で口外してはいけない」と秘匿性の高い内容が書かれています。また「緊急を要するので、すぐに振り込んでほしい」とも書かれています。しかも「買収相手と極秘裏に話し合っており、しばらく電話に出ることができない」とも書かれていたりします。
社長からのメールの場合もあります。メールには「極秘裏に海外企業と提携することとなり、話がまとまりそうなので手付金を振り込みしてほしい」と海外送金の指示が記載されています。犯罪者は社内メールの内容を把握していますから、社長がいつから海外旅行に行くかを把握済みです。担当者としては「社長が旅行を口実にして、社員に気付かれないように海外企業と提携を行っていたのか…」と思い込んでしまいます。
犯人は絶妙なタイミングでメールを送ってきます。休日前や終業前にこんなメールが届けば、経理担当者からすれば、心理的に早く処理してしまおうと思いがちになります。そうなると、犯罪者のまさに思うつぼになるのです。
明日はわが身と考えよう
オレオレ詐欺の報道を見て、「自分はだまされない」と思っている高齢者が実際に被害にあっています。ビジネスメール詐欺の危ないところは犯人が事前に情報収集をしっかりして万全の態勢で攻撃してくることです。
具体的にはバレないように業界独特の表現を使ったり、役員などが自分自身では気が付いていないが、よく使っているメール表現や言い回しを情報収集して洗い出し使ったりして、巧妙に偽装したメール文章を作り上げます。経理担当者を狙う前に別の社員をウイルス感染させてから二段階で攻撃してくる場合もあります。
攻撃側はこうした巧妙なメールを作れば作るほど成功率が上がります。そして法人取引のため、成功した時には莫大なお金を手に入れることができるのです。
ビジネスメール詐欺を見破るには、まず落ち着いて「本当かな?」と疑うことが必要です。メールの場合、ヘッダー情報には偽装した相手の名前やメールアドレス、件名しか表示されていませんが、全てのヘッダー情報を表示することができます。会社が使っているプロバイダー以外の変なサーバーを経由していたら、「詐欺かな?」と疑うことが大切です。