使える! 情シス三段用語辞典73「IPoE」
常に新しい用語が生まれてくる情報システム部門は、全ての用語を正しく理解するのも一苦労。ましてや他人に伝えるとなると更に難しくなります。ジョーシスでは数々のIT用語を三段階で説明します。
一段目 ITの知識がある人向けの説明
二段目 ITが苦手な経営者に理解してもらえる説明
三段目 小学生にもわかる説明
取り上げる用語を“知らない”と思った人は、小学生にもわかる説明から読んでみると、理解が深まるかもしれません!?
一段目 ITの知識がある人向け 「IPoE」の意味
IPoEとは「IP over Ethernet」の略であり、企業内のLANなどと同じやり方を使ってイーサネット経由で直接インターネットに接続する方式のこと。「次世代インターネット接続環境」とも言われ、これからスタンダードとなる回線方式である。
NTT東日本・西日本が提供する次世代ネットワーク(NGN)と呼ばれるIPv6ネットワークで利用されている。
従来のインターネット接続は、かつて、個人宅からインターネットに接続する際に、電話回線からダイヤルアップし、プロバイダー(ISP)を介してインターネットに接続する方法として用いられていた技術「PPP(Point-to-Point Protocol)」が使われている。その後、通信技術が発達し、ADSLなどの高速回線が登場するようになり、このPPPをLANの規格であるイーサネット(Ethernet)上でも使う必要が出てきた結果、誕生したものが「PPPoE(PPP over Ethernet)」である。PPPでは必ず網終端装置(NTE)を経由するが、プロバイダ側で装置の増設ができないため、ここがボトルネックになり速度が遅くなるという問題が起きている。
一方IPoEは、その当初からからイーサネットを用いる前提で考えられているため、PPPoEのように専用の通信機器を必要とせず、接続事業者(VNE=仮想通信提供事業者)を介してシンプルにインターネットに接続できるメリットがある。また網終端装置を経由しないことから、ボトルネックが発生しない通信方式となっている。
さらにIPoEを使ったインターネット接続は、従来のPPPoE方式とは異なる方式での接続となるため、いわば、新しいバイパス道路が開通したような状態である。混雑した道路を避けるように、従来のPPPoE通信と、次世代のIPoE通信の経路を分散させることで、IPoEではより高速なインターネット通信を可能としている。
ユーザーのメリット:
特別な設備追加や開通のための工事が不要なこと、接続時に認証が不要なこと、などが挙げられる。また、PPPoE方式に比べてネットワーク構成(データの通信経路)がシンプルなことから、混雑に強く信頼性の高いネットワークサービスとして、オンラインストレージなどのクラウド利用による大容量の通信にも耐えうる品質を保てる。
ユーザーのデメリット:
IPoEはIPv6の通信にのみ対応している為、通信先のWebサイト・サービスもIPv6に対応している必要があるが、現在はIPv4からIPv6への移行期であり、IPv6に対応していないWebサービスも多く、本来であればその優位性を発揮できない状況にあることが挙げられる。
但し、非対応のサイトに対しては、「IPv4 over IPv6」というトンネリング技術を用いて接続されるため、期待する効果(スピード)が出にくい場合もあるが、通信速度が改善される可能性が高く、デメリットという程ではない。
しかしながら、IPoEでは、グローバルIPアドレスをほぼ無制限に割り当てることができるが、これは同時に外部からもアクセスが可能になることを意味しており、IPSecによるデータの暗号化だけでなく、ファイアウォールによる適切なフィルタリングなど、通信経路のセキュリティ対策には注意する必要がある。
余談ではあるが、NGN上でのIPv6普及率は既に40%を超えており(2018年3月時点)、今後はさらにIPv6の普及が進むと予測されている。しかしながら、現状ではPPPoE方式で接続している事業者が77事業者あるのに対し、IPoE方式で接続している事業者は6事業者と、圧倒的にPPPoE方式が多いという実情もある。
二段目 ITが苦手な経営者向け
システム担当の佐藤さんと社長のある日の会話――
社長:佐藤くん、さっきNTTの代理店から営業の電話がかかってきて「御社のインターネット環境を改善するためIPoEサービスの契約に変更しませんか?」と勧められたよ。なんのことかよくわからなかったんで適当に答えておいたけど、なんのことだかわかるかい?
佐藤:ああ、それはIPv6に対応した通信方式ですよ。企業にとって高速で快適なインターネット接続環境の構築は業務効率化や作業のスピードアップにもつながりますからね。最近あちこちのプロバイダでIPoEの法人向けサービスを提供していて、導入する企業も増えていると聞いていますよ。
手続き的にも特に煩雑な手続きもなく利用できますし、1つの契約でIPv6、IPv4の両方に対応できるサービスもあるので乗り換えも手軽みたいです。
社長:へええ。で、IPoEってなんなんだい?
佐藤:簡単に言うと、インターネット接続が早くなる通信方式のことです。インターネット接続が道路に車が走るイメージだとすると、従来の一般道路とは別に、専用の高速道路を用意して高速で走れるようにした仕組みのことですかね。車線も多いので早く走れるといったところです。
社長:ん?ということはIPv6に変えると通信が速くなるということかな。
佐藤:ああ、そういう風に聞こえましたか。IPv6とかIPoEとか似た言葉で技術者でないと、ちょっと少しわかりにくいですよね。IPv6というのは、車のナンバープレートの新しい表記方法と思っていただければいいかと思います。昭和世代の社長なら、車のナンバープレートが単なる番号だったところから、ひらがな文字が加わったり、車種別分類番号が3桁化されたりしたことなどを覚えているかと思いますが、インターネットも同じように桁を増やしてナンバープレートの数字の不足を補おうとしています。これがIPv6です。
IPv6は単にナンバープレート表示の話なので、インターネットが早くなるのとは無関係です。新しいナンバープレートを付けた車が通れる専用の高速道路がIPoEで、この道路を通ると速くなるということなんです(わかりますかね?)。
社長:うーん、よくわからないが、結果としてインターネットが速くなって便利ということだな。で、わが社はそのIPなんとかは契約したほうがいいのかね。
佐藤:それは、難しいところですね。確かにメリットがありますが、2018年時点ではこれからサービスが普及している段階なので、うちのような中小企業はまだ様子見でいいのではないでしょうか。
社長:わかった。いまは様子見ということだな。
三段目 小学生にもわかる説明
おうちでYouTubeをみたり、友だちと対戦ゲームをしたりするときにインターネットにつながっていることは知っていますよね?
遊んでいると、時折「あれ、動画がカクカクしているなぁ」とか「ページが切り替わるのが遅いなぁ」とか感じたこともあるかと思います。これは、みんなが一斉にインターネットを使おうとしているので、通り道が混雑して遅くなってしまうために起きている問題です。だから夜とか、みんなが学校や塾から帰ってきた後の時間が遅くなりやすいんです。
こんなとき、どうにかしてインターネットがサクサク早くならないかなーと思いますよね。
それを実現するために考えられたのが、IPoE(あいぴーおーいー)という、新しいしくみです。
これは、パソコンやスマホからインターネットをつなぐときに必要だった手順をカンタンにしたものです。
今までの手順では、インターネットにつながるまでにいくつかの機器を通る必要があり、そこが遅くなってしまうポイントになっていました。新しいしくみでは余計な機器をそもそも通さないでつなぐことで、遅くなる原因をつくらないようにしています。
車に例えると、今まで使っていた狭い道を通って渋滞するのではなく、新しく作られた広い高速道路を使って渋滞を気にせず、快適におでかけするようなものと言えるでしょう。広い高速道路を使えるのは、専用のナンバープレートをつけた車だけです。同じようにIPoEを使うことができるのは、専用の番号がついたパソコンだけです。ルートではなく新しく作ったルートを通ってだからこそ、他の人にじゃまされずにインターネットを使うことができます。につないでいます。さらに信号もなくしてしまったので、
そうすると、サクサクとインターネットが使えて、とても便利です。動画も途切れることなく見れますし、ゲームもスムーズです。まだみんなが使っているわけではないですが、東京オリンピックが開催される2020年ごろには、もっとたくさん使われるようになっているでしょう。
では、今あなたがIPoEを使うためにはどうすればいいのでしょうか。これはおうちで事前に申し込みをしている必要があります。お父さん、お母さんがパソコンに詳しい場合は聞いてみるとよいでしょう。
さて、皆様のご理解は深まったでしょうか?
【執筆:める】