システム開発を進める際に、どこまで依頼するか、どこから依頼するかなどが検討事項としてあがるかと思います。それぞれの依頼内容とメリット・デメリットを明確にすることがとても重要ですので、本ブログではそれぞれでの依頼内容と、メリットデメリットについてまとめていきます。
1. 要件定義の依頼内容
要件定義の役割は、システムの目標や目的を明確にし、どのような機能や性能が必要かを定義することです。要件をシステムの仕様に落とし込む必要がありますため、社内に経験者がいない場合には、専門家への依頼を検討していくことになります。
要件定義における依頼内容
- 現状分析と目標設定:業務プロセスの現状を分析し、解決すべき課題を明確にします。その後、システム導入による改善点や目標を設定します。
- 機能要件と非機能要件の整理:システムが提供すべき機能と、それを満たす性能や信頼性(非機能要件)を整理します。例えば、ユーザー数やアクセス頻度、データ保存容量などです。
- ユーザー要件の把握:システムを使用するユーザーのニーズを詳細に把握し、システムがどのように使われるかを明確にします。ユーザーストーリーやユースケースが一般的に使用されます。
要件定義を外注するメリット
- 客観的視点:外部の要件定義コンサルタントは、企業内部のバイアスを排し、客観的にビジネス要件を整理できます。
- スケジュール短縮:社内で要件定義をすると決定に時間が掛かり、長期化する恐れがありますが、外注すると納期が細かく切られる為、順調に進めることができます。
- 専門的なスキル:要件定義の専門家が担当するため、効率的にシステム要件をまとめられます。
要件定義を外注するデメリット
- コミュニケーションの複雑化:システム要件以外も説明をした上で理解を得る必要があるので、コミュニケーションコストがかかる場合があります。多くのドキュメントや会議が必要になり、ミスや認識のずれが発生しやすくなりますので、最初はある程度コミュニケーションに必要な時間を確保しておくと良いでしょう。
- 統合性の欠如:技術的な制約を理解していないと、実現困難な要件が含まれる可能性があり、開発の遅延やコスト増加を招くことがあります。自社に既存システムがあり、連携の必要がある場合は、自社内の専門家に確認をして正確に伝達をするとこのリスクは軽減されます。
2. デザインの依頼内容
デザインの役割は、システムの見た目と操作性を決定することです。特に、現在はユーザーインターフェース(UI)やユーザーエクスペリエンス(UX)を意識してデザイン設計することがとても重要になっています。。
デザインにおける依頼内容
- UI/UXデザイン:システムの使いやすさと美しさを両立させたデザインを行います。視覚的に分かりやすいデザインが必要です。
- ワイヤーフレームとプロトタイプの作成:基本的なレイアウトや機能の配置をワイヤーフレームとして作成し、プロトタイプを通じて確認・修正を行います。
- ユーザビリティテスト:デザインがユーザーにとって使いやすいかを検証し、必要に応じて改善します。
デザインを外注するメリット
- 専門的なデザインスキル:UI/UXに特化したデザイン会社が提供する高度なデザインを期待できます。
- 創造的なアイデア:専門のデザイナーから新しいアイデアやトレンドを取り入れたクリエイティブなデザインが可能です。
デザインを外注するデメリット
- デザインと開発のギャップ:デザインと開発が別会社だと、デザインの意図が技術的に実現できない場合や、コストやスケジュールに影響が出ることがあります。特に、開発段階で修正が必要になると、手戻りが発生しプロジェクトが遅延するリスクが高まります。
- 調整コストの増加:デザインと開発間での意図のズレを解消するための追加調整やミーティングが必要になり、全体コストが増加する可能性があります。開発会社がデザインに求めていることは各社若干の差異もありますので、事前の擦り合わせがとても重要になってきます。
3. 開発の依頼内容
開発の役割は、システムの技術的な実装とテストを行うことです。要件定義とデザインで定めた仕様に基づいて、システムを構築します。
開発における依頼内容
- 技術スタックの選定:システムに使用するプログラミング言語やフレームワークを選定します。
- システム開発とテスト:要件に従ってシステムを開発し、バグや問題を発見するためにテストを行います。
- ドキュメントの作成:開発したシステムのコードや構成に関するドキュメントを作成し、将来の保守や拡張に備えます。
開発を外注するメリット
- 高い技術力:特定の技術に強みを持つ開発会社に依頼することで、複雑な技術要件にも対応可能です。
- 柔軟なリソース調整:専門の開発チームがプロジェクトの規模に応じて柔軟に対応できます。
開発を外注するデメリット
- 要件やデザインの理解不足:要件定義やデザインを別チームが行っている場合、開発チームがそれらを完全に理解できないリスクがあります。これにより、開発が遅れたり、追加の修正が必要になることがあります。開発のみを切り出して外注する場合は、ワンストップで依頼する場合と異なり、事前の準備と説明時間を多めに見積もっておく必要があります。
- コストが増加:内製化するよりもコストは大きくはなりがちです。特に業務委託での依頼になってしまうと進捗遅延がそのままコスト増加になってしまうので、契約形態も一つの気を付ける基準となります。
4. 全て同じ会社に外注する内容
ワンストップで全てのフェーズ(要件定義、デザイン、開発)を一つの会社に依頼する場合、以下のような内容とメリット・デメリットがあります。
ワンストップでの依頼内容
- プロジェクト全体の管理:一社がプロジェクト全体を管理し、要件定義から開発までを一貫して行います。
- スムーズな引き継ぎ:各フェーズが同じ会社で行われるため、情報共有がスムーズであり、フェーズ間のトラブルが少なくなります。
- 一貫した品質管理:要件定義から開発まで一貫した品質基準で管理され、全体の品質が保証されやすくなります。
ワンストップで依頼するメリット
- コミュニケーションの効率化:すべてのプロセスが一元管理され、クライアントとのやり取りが簡単になります。
- 開発スピードの向上:要件定義やデザインから開発への引き継ぎが迅速に行われ、フェーズ間の調整が少なく、プロジェクト全体のスピードが向上します。
- コスト管理の簡便さ:一括での見積もりが可能なため、コストが予測しやすく、予算超過のリスクが減少します。
ワンストップで依頼するデメリット
- 価格競争の不透明さ:一社にすべてを依頼すると、価格競争が限定されるため、コストが高くなる場合があります。複数の会社に分けて依頼することで、競争原理を活用できる場合があります。
- 依存リスク:すべてを一社に依頼することで、その会社に依存するリスクがあります。もし問題が発生した場合や対応が不十分だった場合、他の選択肢が限られる可能性があります。
5. 結論
システム開発を外注する際には、要件定義、デザイン、開発のどのフェーズから依頼をするか、すべての工程を依頼するかを慎重に検討する必要があります。
プロジェクトの規模や目的、必要なスキルセットに応じて、適切な選択をすることが重要です。丸投げをする選択になりがちではありますが、要件定義は並走するフェーズにはなりますので、一緒に作る意識で進めるとコスト削減にもつながることになると思います。また、それぞれの依頼形態には、メリットとデメリットが存在するため、自社のニーズに最も適した形で進めることが成功の鍵となります。
上記のことに気を付けて、適切な選択をして、理想のシステムを実現できれば幸いです。
カテゴリー: