松田軽太の「一人情シスのすゝめ」#12:ウィズ コロナ時代に『どう働くべき』を考える

松田軽太の「ひとり情シスのすゝめ」、タイトルだけ見るとひとり情シスを推奨しているように思われるかも知れませんが、思いはまったくの”逆”。様々な事情によりやむなく”ひとり情シス/ゼロ情シス”という状況になってしまっても頑張っていらっしゃる皆様のお役に立つような記事をお届けしたいと思っております。

しかしながら今回はいつものTipsネタから少し離れ、これからの働き方について考えてみてみました。

『夏になったら温度と湿度が高くなるからインフルエンザと同じように新型コロナウィルスも季節性の流行病になるだろう』
期待も込めてなのか、風邪の延長と考えていたからなのか春先にはこんな風に言われている方もいらっしゃいました。最近では「実はすでに集団免疫獲得のステージにあり、11月には収束をする」とおっしゃる研究者の方もいらっしゃいます。
しかしながら、その検証結果が明らかになるのは結果論でしかないので、”今”を生きる私たちはできる限りの防御をしつつ、ワクチンや治療薬ができるのを待つという生活が続くことになります。

ということで巷では「ウィズ コロナ」「アフター コロナ」「ニューノーマル」という言葉が新しいバズワードとして賑わっています。
しかし、これらの言葉遊びみたいな内容では、私たちの働き方や生き方にどんな影響があるのかよく分かりませんよね。

例えば、テレワークやWEB会議の普及は東京オリンピック・パラリンピックの混雑解消の為には普及しませんでしたが、生死にかかわる恐れがある新型コロナウィルスの流行によって加速されたのも事実です。
その一方で、新型コロナウィルス対策としてロクな準備をする間もなく、無理やりテレワークを実施したことで、逆に「テレワークは不便だ」「我が社にはテレワークは合わない」といった意見も散見されます。

 

『未来の働き方』ってなんだろう?

なかなか外出もしにくい時代にあり、鬱々としながら「未来の働き方ってなんだろう」と考えていたところ、ふと思い出したのがちきりんさんの著書「未来の働き方を考えよう 〜人生は二度生きられる〜」という本でした。

未来の働き方を考えよう 人生は二回、生きられる
出版社 : 文藝春秋 (2015/11/10)
ASIN : B0171DVCIM

この本、数年前に読んではいたのですが、この新型コロナウィルスと共に生きざるをえない時代にあって、改めて読むと前回とは違ったように感じました。というか、この本の中で提案されている働き方がより一層、リアルに感じられたのです。
この本が発刊されたのはなんと2015年です。7年近い年月が経つことで、ちきりんさんが提案した『未来に働き方』の時代が訪れたと考えることもできます。

 

社会は変化しているのに働き方は変わっていない

サイボウズやヤフーやラインといったIT系や情報サービス系の会社は業界的にも”場所に縛られない”自由な働き方を取り入れやすいことは分かりますが、いくつかのビジネス誌やWebメディアを眺めていると、大手企業でも新しい働き方を取り入れる様子が紹介されていました。
(一見すると労働時間の短縮に見えますが、本質はマネジメント改革にあります)

■カルビー


<出典:リクナビNEXT ジャーナル>

■味の素


<出典:DIAMOND ONLINE>

■日清食品


<出典:PRESIDENT WOMAN>


<出典:日経XTECH>

ここに例として挙げた企業は、製造業でありながら多様な働き方を取り入れていることが素晴らしいと思います。
しかし、これらのビジネス誌やWebメディアに取り入れられる企業の方が、むしろ例外的なのではないでしょうか?

日本には大小様々な規模の400万社もの会社があります。
そしてそのうち9割は中小企業です。
果たしてどのくらいの割合の中小企業がビジネス誌に取り上げられるような柔軟な働き方を取り入れることができているのでしょうか?
おそらく、そう多くはないでしょう。それは中小企業特有の人に依存した業務というあり方なども原因の一つかもしれません。

例えば就業規則で育休などの制度を取り決めていたとしても、実際には周りの目があるから育休がとりにくいというのが現実的には多いことでしょう。

 

『人生は二回、生きられる』とは?

先に紹介した『未来の働き方を考える』の中では、多様な働き方が必要になると指摘され、いくつかの『多様な働き方』を具体的に紹介しています。

海外で働くということはどういうことなのか?

主要国で最も早く少子高齢化の進行と人口オーナス期入りをした日本国内の経済は縮小せざるをえないので、海外が主要な市場に移っていくのは必然なのかもしれません。
ということは東京から大阪に転勤するように、中国やタイやマレーシアへの国外転勤も十分にありえます。

しかし人にはそれぞれの事情があります。
例えば、小さなお子さんがいる家庭では子育てを海外で行うべきか決断しなければなりません。

仮にマレーシアに5年間の勤務となったとしましょう。では「自分の子供がマレーシアでどのような学校生活を送れるのか?」を想像できますか?帰国子女の学力問題などもよく言われます。しかしながら、子供は環境適応能力が比較的高いので、バイリンガルやトライリンガルというメリットを生むこともあるかもしれません。
難しいケースは介護が必要な高齢の両親がいる場合かもしれません。さすがにマレーシアに親を連れていくワケにもいかないでしょう。

日本企業ではまだまだ強制転勤が横行し、転勤拒否は業務命令違反で懲戒処分されることもありえます。そうなると個人の事情を優先する場合、退職するしかないのです。

人生100年時代とは、50年も働く時代になるのか?

日本の会社はほどんどが65歳で雇い止めになる有期契約になっているところが多いでしょう。いわゆる嘱託社員として、それまでの半分程度の給与で働くことになります。
しかし、超高齢化社会と労働人口減少社会がセットで訪れる日本ではどう考えても、老後資金も人手も不足すると考えるのが妥当でしょう。70歳あるいは75歳、場合よっては80歳くらいまで働かざるをえないということも十分に考えられます。

働くか働かないかは個人の資産状況や健康状態などの事情が異なりますし、(自分にとっては)今から数十年後のことを考えたところでどうにもならないので、それはその時に考えれば良いことなのかもしれません。

問題は「ではどんな働き方をするか?」です。

現在、多くの企業で”成果主義”が導入されています。
しかし、実際は成果主義と言いながらも表面的な運用となっており、実質的には年功序列型の会社も多いと聞きます。

いわゆる日本の会社の年功序列型の終身雇用は「就職」ではなく「就社」という考え方がまだまだ主流になっており、会社にしがみつく生き方になってしまっているのです。

その弊害が世間でよく言われている「働かないオジサン」問題です。

マネジメント側にも問題はある
従来からの働き方は高度経済成長を実現するには最適な働き方でした。一昔前、90年代くらいまでは、仕事の成果は労働時間に比例していたので、”出勤していればそれで良し”でした。
しかし、現在は時間と成果は比例しくなったと言えます。それにもかかわらず、評価する側がきちんと成果で評価・マネジメントができない「見かけ上の成果主義」になっている場合も往々にしてあります。
そうなると結局のところは”信じるものは労働時間”となってしまい、盛んに叫ばれていた生産性向上などはどこ吹く風となってしまうのです。
テレワーク(在宅勤務)になり、労働時間が見えなくなったことで、このような問題が顕在化しています。

なぜ「働かないオジサン」が大量発生するのか?

日本の社会は、まだまだ就社の意識が強く気軽に他の会社に移るのが難しい世の中です。
週刊誌などでは転職失敗事例が取り上げられることも多く、転職というのは、大きな決断を求められる行為です。
昨今はTV CMでも転職支援サービスを見かけるようになり、以前に比べれば転職しやすい環境になっていると思います。

では、アナタの周りには転職経験者はどのくらいの割合でしょうか?
新しい会社であれば割合は多いかもしれません。
創業50年以上にもなる老舗企業ではどうでしょう? 転職経験者は少ないのではないでしょうか?
ましてや40代や50代といったベテラン世代の転職はかなり少ないのが現実ではないでしょうか。

そう考えると日本はまだまだ人材の流動性が少ない社会ともいえるでしょう。
(米国などでは官民の人材交流も活発であり、社会として人材流動性が高い仕組みを作っているように思います。)

しかしながら、日本の社会構造では高齢社員は会社にしがみつくしかないというのが現実でしょうか。

もちろん高齢であっても起業される方もいらっしゃるでしょうし、勤続年数に見合った知識や経験があって、頼れる大先輩であれば「働かないオジサン」という不名誉な呼び方はされないでしょう。

では、今度は「働かないオジサン」とされる側の視点で考えてみるとしましょう。
今では職場のお荷物扱いの「働かないオジサン」たちも若い頃は会社の中心となって活躍していたハズです。
それなのに活躍できなくなった大きな原因は、知識や技術のアップデートを怠ってしまったからでしょう。
そして終身雇用制という制度が、ロクに働かなくもなんとなく許容する社会を作ってしまったのです。

 

これからの社会はもっと激変する

今、50代のベテラン世代であれば入社した頃は1990年前後ですから、ワープロ全盛期でようやくインターネットが商用運用され、メールを職場で使いはじめた頃でしょう。(Macintosh PlusでMacDrawを使ってプレゼン資料を作ったのが懐かしい…w)

当時はPC-98シリーズが多く、表計算ソフトもExcelではなくLotus-123だったかもしれないし、ワープロソフトもWordではなく一太郎だったかもしれません。
Excelにしたって20年前であればワープロみたいな使い方の電子方眼紙みたいな使い方しかしたとことがないし、それが当たり前な時代を過ごしたら、関数やVBAでの自動化なんて理解を越えているでしょう。(ちょっと誇張しすぎかもしれませんがw)

Excelという同じソフトですら、こんなにも使い方が変わってしまうのであれば、他の見たことも聞いたこともないソフトでは理解すらできないでしょう。

それ程までに30年という年月は仕事のやり方を大きく変えてしまうのです。(あの当時にクラウドなどは考えられなかったですから)

では、これから先の20年後、30年後はどのくらいの変化が訪れるのでしょうか?
5GやAI、IoT、FinTech、ブロックチャーンなどのテクノロジーが本格的に活用されれば、大きく世の中は激変するでしょう。
日本でも菅(すが)政権になりデジタル庁がつくられることになり、ようやく電子政府に向けた動きが本格化すると思われます。

テクノロジー以外でも、今回の新型コロナウィルスの蔓延や大きな被害をもたらす豪雨もありるし、そして、いつ起こってもおかしくないと言われている大地震も心配されています。

何しろわずか半年前までは「人と会うことが感染の危険を伴う時代」がやってくるだなんて思いもしなかったのですから。
そんな先の見通しが立たない時代に、予測もつかない未来の心配をしたところで、ほとんど役に立たないでしょう。
私たちはどんな働き方や生き方をすべきなのでしょうか?

 

どうすれば「人生はニ回、生きられる」のか?

長い期間、働くことが前提となり、そして社会が変化するスピードが劇的に速い時代に於いて大切なのは「自分がやりたい仕事をして生きる」ことでしょう。昔から「好きこそものの上手なれ」という言葉もありますし。
でも、「そんなの当たり前じゃないか?」と思うかもしれませんね。
では、アナタは「自分のやりたい仕事」ってすぐに思い浮かびますか?

たとえば今、総務・経理・生産管理・情シスといった職場で働いているとして、そして仕事もそれなりに充実してるとします。
その仕事をアナタは「やりたい仕事」だと言えるのでしょうか?
その仕事を80歳近くまで、やりたいと思えるのでしょうか?

もし、それがやりたい仕事だとしたら、それは幸運なのかもしれません。

しかし、そうではなかったとしたら?

特に社会に出て働き出すと目の前の仕事に忙殺されて、なかなかそういったことに気が周りません。
22歳から70歳まで働いたとしても48年です。
それであれば、まずは社会で働きながら、本当にやりたい仕事を見つけるというものありでしょう。

そして数年後にキャリアのチェンジを計画的に行うのです。
それが「人生は二度、生きられる」ということなのです。

そう考えると東大の柳川教授が唱える「40歳定年制」という考え方も、あながち悪くないかもしれません。

今からでも「自分がやりたいことって何だろう?」と自分と向き合ってみるべきでしょう。

「ウィズ コロナ」「アフター コロナ」「ニューノーマル」など、なにか起こるたびにもっともらしいバズワードが飛び交い、私たちを惑わします。

 

これらの流行り言葉に踊らされないように生きていきたいものです。

 

 

※本記事は松田軽太氏許諾の元、「松田軽太のブロぐる」の記事をベースに再編集しております。


松田軽太(まつだ・けいた)

とある企業に勤務する現役情シス。会社の中では「何をしているのかナゾな職場」でもある情シス業務についてのTipsや基礎知識などを紹介する。

ブログ『松田軽太のブロぐる』を運営。

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