COVID-19禍における生産性と在宅勤務に関する調査結果-Adobe Blog

アドビは、COVID-19により拡がった在宅勤務とそれに伴う生産性の変化や課題を明らかにすることを目的に、米国と日本の労働者それぞれ約1,000名を対象に実施。この結果を公開している。

その結果「生産性の課題はビデオ会議疲れとファイルのバージョン管理」とまとめているが、果たして他にもどのようなことがこの調査から分かったのであろうか?

今回の調査結果では、在宅勤務の主な課題として、「生産性」や「社内コラボレーション」が挙げられ、特にビデオ会議疲れやドキュメントのバージョン管理に課題を感じていることが明らかになったという。
また、日本の回答者は対面でのコミュニケーションを重要視しているものの、メッセージアプリなど新しいツールが台頭しており、新しい働き方への移行が進んでいることも併せて分かった。

確かにカレンダーに隙間があれば、入れる方は予定を入れやすい。そして従来は移動時間というオフタイムがあったが、テレワークではWeb会議が詰まってしまい、トイレに行く暇もないといった話も耳にする。そうでなくてもテレワークは移動時間がない分だけ、勤務時間が長くなる傾向にある。ビデオ会議疲れとならない方法、運用などが今後の課題かもしれない。

米国では在宅勤務で生産性が向上、しかし、日本では生産性が下がるの声も

本調査を実施した時点で、日本ではすでに緊急事態宣言が解除されていた影響もあり、従来オフィスに出勤していた日本人の半数近く(49%)が元通りオフィス勤務していることが判明した。フルタイムで在宅勤務に移行している人は、回答者全体のわずか5分の1であった。

米国の回答者の77%は、柔軟に仕事時間を調整できたり、通勤や集中を妨げるものがなかったりといった理由で、在宅勤務への移行後もそれまでと同等かそれ以上に生産性が上がったとの回答を寄せている。
その一方で、在宅勤務を経験した日本人のうち43%が「在宅勤務は生産性が下がる」と回答、「生産性が上がる」と回答した21%を大きく上回る傾向を示した。

その理由としては「勤務環境が整っていない」(68%)、「集中しづらい」(46%)、「同僚からの協力が得られにくい」(33%)といったことが挙げられている。

環境については米国と日本の住宅事情の違いが大きく影響していることが考えられる。最近でこそ日本の住宅メーカーのカタログで”SOHO”といった言葉を見かけるようになったが、やはり狭い日本の住宅では家族から隔離されたワークスペースを確保することは難しい。一方で米国ではNYやサンフランシスコなどの一部地域を除けば郊外型の邸宅が多く、自宅にいわゆる執務室を確保できる。このような根本的な環境の違いが結果に表れている。

また、在宅勤務における同僚とコミュニケーションについては、半数以上が「以前と変わらない」と答えた米国の回答者とは反対に、日本の回答者の55%が「取りにくい」としていることは興味深い。

また、在宅勤務で失ったものとして、日本の回答者の半数近くが対面でのコラボレーションや雑談を挙げており、これまでの職場では、対面でのミーティングやコミュニケーションが重視されてきたことがうかがえる。

これを日本的と捉えるのかは難しいところではあるが、長年、仕切りもない平机でチームごとに”島”を作って仕事をしてきた名残なのか、それとも(個人主義ではなく)チームで仕事に取り組むスタイルだからなのか、はたまた仕事は職場でするものという意識(内容ではなく、時間で管理)

在宅勤務では、3割以上がビデオ会議疲れ

在宅勤務の拡大で多用されるようになったビデオ会議については、日本の回答者の半数以上(60%)が「対面での会議と比較して生産性が低いと感じる」回答しており、その一方でオンライン会議の頻度の高さに39%がビデオ会議疲れを感じ始めていることが判明している。
これには仮説の域を出ないが、生産性を低いと感じる理由の一つにテレワークツールに国産がないことも挙げられるかもしれない。アプリケーションにおいてはその登場から20数年をかけてMicrosoft Officeに慣れ親しんだかもしれないが、従来から慣れ親しんできた(リアルでの)会議の進め方やその手法をMicrosoft 365で提供されるTeamsをはじめとするアプリ群で実践できていないという可能性もある。しかしながら、国産だからこれが賄えるものでもなく、Temasにおいても日々新機能が追加されているが、日本語化することろでのタイムラグなどで不便さを感じてしまうのかもしれない。

今後は与えられた環境で如何にして効率よくやっていくのかを働く側も考える必要があるであろう。

米国では67%がビデオ会議の生産性を評価し、34%がビデオ会議疲れを感じていることを踏まえると、グローバル規模での在宅勤務拡大に伴い、コミュニケーションを補うためにビデオ会議の利用が増えたものの、効果的かつ効率的な利用についてはいまだ模索している様子が明らかとなっている。

その5割以上がファイルのバージョン管理に課題

また、ファイルの共有やレビューに使用しているツールを聞いたところ、Microsoft Office 365(51%)の利用が最も高く、次いでAdobe Acrobat(43%)、Google Drive(31%)が挙げられた。
尚、回答者の約9割はメール添付でファイルを共有しており、その多数(70%)が生産性の高い方法であると回答している一方で、回答者全体の半数以上(55%)が、ファイルのバージョン管理に課題を感じていることが判明している。
ツールやメールでのファイル共有が乱立することにより、リモート環境でコラボレーションすることの難しさがうかがえる結果である。

例えば、Microsoft 365を導入すれば、OneDriveが提供され、それを使ってファイルの版管理も行うことはできるが、運用ルールを構築し、従業員への周知徹底を行わないと無法地帯となることもある。顔が見えないテレワークだからこそ、こういった地道な努力をきちんとしておく必要があるであろう。

また、別の側面からもメール添付によるファイル共有は避けるべきである。昨今、メール添付ファイルの暗号化は当たり前のように施されているが、実はこれがセキュリティの脅威にもなる。暗号化されたファイルを復号化した上でウィルスチェックを行い、再び暗号化するには専用の機器や仕組みが必要であり、多くの企業ではここまでやれないのが実情であろう。その意味でも暗号化ファイルによるメール添付でファイル共有するという文化は捨て去るべきである。

更に、在宅勤務をしている回答者を中心に、書類の4割にデジタル署名が付与されていることが判明している。これに関して、アドビのプロダクトマーケティング担当シニアディレクターであるスニル メノン(Sunil Menon)氏によれば、「電子署名の経済的な影響について、アドビでは、いままで数多くの調査を行ってきました。企業のROIの向上や、印刷や配送のコスト削減だけでなく、従業員がより意味のある仕事に集中できることがわかっています」と指摘している。

Adobe Acrobat DCはもちろんのこと、(なかなか容易に使えるレベルではないが)AIP:Azure Information Protectionなどを用いることで、正しく管理できるようになったからかもしれない。

業務コミュニケーションツールとしてメッセージアプリの利用が拡大

過去3年間のデータを比較した結果、在宅勤務への移行が進んでも、仕事のメールを確認する時間には変化がないことが判明しています(2018年:79分、2019年:78分、2020年:78分)。
その一方で、自宅で過ごす時間が増えたにも関わらず、平日にプライベートのメールを確認する時間は減少傾向であることが分かっています(2018年:58分、2019年:53分、2020年:47分)。 

職場では、メール(65%)や電話(50%)といった、従来型のコミュニケーションツールが主流となっていますが、日本の回答者は対面でのコミュニケーション(37%)を重視する傾向が強く、米国での28%と比べて高い結果であった。
特に、対面でのコミュニケーションを優先するタイミングとして、辞職のあいさつ(47%)や上司に重要な課題について伝える際(36%)など、緊張感のある場面において重要視される傾向が見られる。

回答者の半数以上が業務時間外にもメッセージアプリを確認していることが判明

加えて、ミレニアル世代を中心に比較的新しいコミュニケーションツールが拡大していることも明らかとなった。

始業時間までに仕事のメールを確認する回答者は37%にとどまっているが、仕事関連のメッセージアプリ(SlackやTeams chatなど)は半数以上が始業前や休憩時間でも確認しており、業務時間外の気軽なやりとりや緊急の連絡手段として用途を使い分けて活用している様子が伺える。

長期的、永続的な在宅勤務を推し進める企業も増えている中、この傾向は、COVID-19収束後も継続すると予想される。対面でのコミュニケーションを重視していた日本の企業も、ビデオ会議やメッセージアプリなど、双方向性を持った新しいコミュニケーション手法を駆使して、時間や場所に関わらずに生産性を維持できるニューノーマルな働き方への転換を推し進めていく(せざるを得ない)と考えらる。

しかしながら、このような流れに取り残されるのが中小企業である。今後は中小企業を含めた”株式会社日本”として、日本企業全体でのDXへの取り組みが求められると言っても過言ではないだろう。


COVID-19禍における生産性と在宅勤務に関する調査」について

「COVID-19禍における生産性と在宅勤務に関する調査(Productivity/Work from Home Survey)」は、アドビが調査会社であるAdvanisに委託し、米国と日本の労働者を対象に実施したオンライン調査。
各国の調査結果は、それぞれ約1,000人の回答に基づく。
日本の回答者に関する調査データは、2020年6月2日から2020年6月4日にかけて収集している。


本記事はAdobe Blog様の投稿を元に作成しております。
ソース:https://blogs.adobe.com/japan/dx-global_survey_on_productivity_under_covid19/

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