脅威動向分析(2019年第3四半期)-トレンドマイクロ

トレンドマイクロでは2019年第3四半期(7~9月)における国内外での脅威動向について分析を行った。
この第3四半期、国内ではECサイトやクラウドサービス等で利用される認証や決済に関連した脅威が複数顕著化した。特に、国内ネットバンキングの二要素認証の突破を狙うものと考えられるフィッシングサイトの攻撃が9月に拡大、また、脆弱性を利用したECサイト改ざんを発端に利用者のクレジットカード情報が詐取される被害事例の公表も相次いでいる。


図1:メールで通知されるワンタイムパスワードを入力させる
フィッシングサイトの例(2019年8月確認)

■国内ネットバンキングの二要素認証の突破を狙うフィッシング

この手口では、まずセキュリティの不安をあおる内容のフィッシングメールやSMSにより、正規のネットバンキングサイトに偽装したフィッシングサイトへ利用者を誘導する。騙された利用者がネットバンキングにログオンするためのアカウントとパスワードを入力すると、フィッシングサイト側では利用者が入力した認証情報を用い、正規のネットバンキングサイトへログオンを行うものと考えられる。その後、不正送金処理を行った際に要求されるワンタイムパスワードなどの二要素認証入力の偽画面を表示し、利用者に入力させることによって二要素認証を突破する。
トレンドマイクロの監視では、この手口によるものと考えられるフィッシングサイトが9月に急増していることを確認していることは、以前にもお伝えした通りである。


図2:国内ネットバンキングの二要素認証突破手口と考えられる
フィッシングサイトのドメイン数推移(トレンドマイクロ調べ)

このような攻撃の急増を受けてか、10月には警察庁と日本サイバー犯罪対策センター(JC3)、国内大手銀行5行からも同手口に関する注意喚起が出されており、直近で最も大きな被害を利用者に与えているサイバー犯罪と言える。

■脆弱性を利用したECサイト改ざんを発端に利用者のクレジットカード情報が詐取される被害

この第3四半期には、ECサイトからのクレジットカード情報漏えい被害のうち、ECサイトの改ざんを原因とする事例の公表が相次いだ。


図3:国内で公表されたECサイトの改ざんによるカード情報漏えい被害事例数推移
(公表事例を元にトレンドマイクロが独自に整理)

現在のECサイトではセキュリティを高めるため、決済情報をサイト内に保存せず、決済代行業者に処理を任せる方法が多くなっている。このような自前で決済情報を保存しないサイトからカード情報を奪取する攻撃手法として、以前から、サイト上の入力内容を不正サイトへ転送するスクリプトを埋め込む改ざん手法が確認されていた。
しかし、最近では改ざんにより決済情報入力の偽画面を表示する手口が目立ってきている。この手口については昨年から台頭が確認されており、JC3から注意喚起も出ている。この9月に公表された13件の事例のすべてで、脆弱性を利用した攻撃により、ECサイトやそのシステムが改ざんされたとされている。外部に露出するECサイトでは脆弱性対策はセキュリティの基本であるにも関わらず、脆弱性を利用した攻撃により被害が拡大している状況からは、事業の上で重要なはずのECサイトであっても、セキュリティが十分に行き届いていない現状を表しているものと言えます。

その他、国内でこの第3四半期に最も大きな注目を集めたセキュリティインシデントとしては、7月にサービス開始したキャッシュレス決済サービスにおける多数の不正利用発生事例が挙げられるでしょう。この事例では、アカウントリスト攻撃(リスト型アカウントハッキング)による利用者アカウントへの不正ログインが原因と公表されています。
また、海外では特に法人でのランサムウェア被害や「EMOTET」を拡散するマルウェアスパムの活発化など、マルウェアの脅威が顕著であった。これに加え、ビジネスメール詐欺の被害急増が9月にIC3から報告されるなど、様々な動きがあった第三四半期であった。

2019年7~9月に確認された脅威動向についてより深く知るためには、以下のレポートをご一読ください。

・詳細レポートはこちら:
2019年第3四半期セキュリティラウンドアップ
「ECサイト改ざんと二要素認証突破が拡大」


本記事は、トレンドマイクロ様の許諾により「トレンドマイクロ・セキュリティブログ」の内容を元に作成しております。
ソース:https://blog.trendmicro.co.jp/archives/22765

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