IoT Vol:7「21世紀の産業革命に向けて、知っておくべきこと」
今や何気なく生活の一部となっているIoT。今後、どのような変化をもたらすのでしょう。
この記事の目次
IoTは、生活とビジネスを大きく変えるといわれています
既存社会に対してIoTが革新的であるならば、さて、一体なにがどう変わるのか? デバイス、クラウド、ビッグデータ、AI、セキュリティ、無線技術などが結集したテクノロジーの塊IoT。それが私たちに与えるインパクトとはいかに—
あらゆるモノがインターネットとつながる新時代を考えれば、私たちにも意識の転換が求められはず。でも、確かに“すごそう”とは感じるけれど、なにがすごいのか、なにが変わるのか、いまいち判然としない。そこで、IoTが私たちの生活やビジネスに与える変化を検証していくことにしましょう。まずは生活からです。
一つひとつが生活を変えるわけではなく、全体が大きな変化を生んでいきます
すでにサービスインしているコンシューマ向けIoTを考えてみましょう。「スマートキー」、「IoT照明」、「スマートタグ」、「IoTアパレル」など。すでにいろいろあります。
ご存知、スマートキーは「スマホから開閉できる鍵」。デバイスをドアに取り付ければ、遠隔での操作や開閉確認、複数での鍵の共有もなんのその。“鍵がない、なくした、合鍵つくらなきゃ”、という心配はもう必要ありません。また、スマホとデバイスのBluetooth通信により、近くだけでドアを開けてくれる種類もあり、鍵を開ける手間すらありません。
次のIoT照明も内容はスマートキーと同じ。デバイス機能を持つ電球を取り付けることで、スマホから照明管理が可能。スマホのGPSとも連動していて、外出すれば自動でオフ、帰宅すればオンを自動で行なってくれます。もはや、スイッチを気にする必要も、つけっ放しの心配も無用です。
スマートタグは、以前紹介した「MAMORIO」のように,「大切なものを無くさないため」のIoT。傘やバッグなど、忘れものが多発する電車通勤はじめ、外出時に安心感を与えてくれます。そういえばMAMORIOは東急電鉄や西武鉄道との共同で忘れ物通知サービスも行なっているとか。
IoTアパレルは、「RFIDタグ(電子タグ)などを洋服に取り付けた」IoT。事例としては、「購入した洋服のタグをスマホで読み取るとアプリ上でインスタグラムのようにシェアできたり、他のユーザーのデータからお気に入りの服を探せる」サービス。日本では、「センサーが仕込まれた作業着が作業員の体調を把握する」サービスもあります。
以上、駆け足で紹介してきましたが、これらの特徴をまとめると、
・「必要だと感じていた行動を不要にしてくれる」
・「心配を解消してくれる」
・「ユーザーの行動をフォローしてくれる」
この3つがコンシューマIoTだといえそうです。
ただ、ここで、「鍵なんてそのままでいい」「忘れ物の心配なんて些細なこと」「体調は自分でわかってる」だから、“ぜんぜん革新的じゃない”と感じる人もいることでしょう。
確かに一つひとつのサービスを見ていけば、「革新的」というよりも「新規性」の方が目立つかもしれません。しかし、鍵や電球、車、家、ビル、空調など、ありとあらゆるモノがインターネットにつながる世の中を想像してみてください。そして、それによってもたらされる安心と効率も。
「なににも煩わされることなく、したいことに時間を費やせる」。それを現実できるのがIoTなのです。
ビジネスでも「水平・分散」が、重要なキーワードになっていくかもしれません
では、ビジネスの世界ではどうでしょうか。IoT時代は下図のような構造が当たり前になるといわれています。
ここからわかるように、IOTサービスを生み出すためには企業連携が必須。センサーカテゴリの企業が「デバイスに埋め込むセンサー」などを開発し、機械カテゴリの企業が「デバイスや対応機器」を開発。通信カテゴリの企業が「データ通信ネットワーク」を構築し、情報処理カテゴリの企業が「データ分析や分析ソフト開発」を担当。そうして、ユーザーカテゴリの企業が「IoTを使ったサービス設計」を行い提供する。
ここから考えればIoT時代は、「垂直統合モデルではないビジネスが普通になる」ともいえます。
では、そのなかで事業を邁進させるためにはなにが求められるのか? それが「水平分業」へのシフトです。
例えば家電メーカーが「IoT家電」をつくるとします。このメーカーはIoT化のノウハウはありませんでしたが、自社研究開発を進め販売にこぎつけます。従来の垂直統合モデルです。一方、水平分業では、IoT家電開発に必要な要素を分解し、それぞれの専門企業との協働のもと開発していきます。 “餅は餅屋”的なスタイルといってもいいかもしれませんね。こちらも販売にこぎつけます。さて、どちらのIoT家電がよいのか? それはわかりません。ただ、ひとつ明らかに差がでると予想されるのが、その後です。
ITの急速な発展からわかるように、技術のサイクルもまた急速に変化しています。そのなかで、第2弾、第3弾のIoT家電を出すとすれば、絶えず世のニーズや技術トレンドを把握しておかかなければいけません。しかしスピードの速い世の中でそれが一社で可能なのか。おそらく難しいでしょう。協働は欠かせないのです。それは昨今のオープンイノベーションの興隆や中小企業連携の推進を見ても明らかなように思われます。
生活、ビジネスが変わるIoT時代。とくにビジネスでは、前記事で紹介したビッグデータの活用が進み、データをいかに扱うかで明暗が分かれるといわれています。めまぐるしく移り変わる世の中ですが、今と未来に目を向け、あたらしい時代へと進んでいきたいものです。
【執筆:編集Gp 坂本 嶺】