常に新しい用語が生まれてくる情報システム部門は、全ての用語を正しく理解するのも一苦労。ましてや他人に伝えるとなるとさらに難しくなります。本用語辞典では数々のIT用語を三段階で説明します。
一段目 ITの知識がある人向けの説明
二段目 ITが苦手な経営者に理解してもらえる説明
三段目 小学生にもわかる説明
取り上げる用語を“知らない”と思った人は、小学生にもわかる説明から読んでみると、理解が深まるかもしれません!?
一段目 ITの知識がある人向け 「MVNO」の意味
MVONは「Mobile Virtual Network Operator」の略で、日本語では仮想移動体通信事業者と訳される。簡単にいうと携帯電話サービス(移動体通信)のOEM(相手先ブランドによる供給)サービス。NTTドコモ、au(KDDI)、ソフトバンクなどの移動体通信事業者(MNO)が貸し出す携帯電話サービス網を使って、自社のサービスとして顧客に提供する。
MVNOには、回線からインターネット接続まですべてを借りるサービス形態と、携帯電話への接続のみを移動体通信事業者から借り、インターネット接続は自前で用意するサービス形態がある。後者のサービスを行なっている事業者では、自社ブランドのサービスだけでなく、他のMVNOに対して、さらに貸出を行なっている事業者もある。このような事業者はMVNE(Mobile Virtual Network Enabler:仮想移動体サービス提供者)と呼ばれている。
二段目 ITが苦手な経営者向け
MVNOといってもピンと来ない方も多いと思いますが、「格安SIM」という言葉を聞いたことがある人は少なくないでしょう。
この「格安SIM」を提供しているのがMVNOです。MVNO事業者はNTTドコモやau(KDDI)、ソフトバンクといった移動体通信事業者(MNO)から携帯電話の回線を貸してもらい、サービスを行なっています。MNOがMVNOに回線を貸す際には、通信速度を遅くしたり、通信できるデータ量を制限したりすることで、安い使用料で回線を提供しています。これが、MVNOが「格安SIM」を安く提供できる理由です。
MVNOにも2種類あります。携帯電話の回線からインターネットへ接続する機器や回線まですべて借りて顧客に提供するサービスと、携帯電話への接続回線のみMNOから借りて、インターネット接続は自前で設備を用意するサービスです。
流通業や家電量販店など、一見通信とは関係なさそうな会社が行なっているMVNOサービスは、前者のタイプです。海外では銀行がオンラインバンキングを無料でできるようにするためにMVNOサービスを行なっている例もあるといいます。
後者の場合は、ネットワークの技術や設備投資が必要なため、参入するにはハードルが高いのですが、その分、柔軟性のあるサービスを提供することができます。この柔軟性の高いサービスを、ほかのMVNOに再販しているのが、MVNE(Mobile Virtual Network Enabler:仮想移動体サービス提供者)と呼ばれる事業者で、前者のMVNOで、このサービスを利用している企業も数多くあります。
三段目 小学生向け
携帯電話(けいたいでんわ)やスマートフォンなど、みなさんの中でも使っている人は多いでしょう。今の日本ではよほど人がいないところでもないかぎり、携帯電話を使うことができます(富士山の上でも使えるんですよ!)。
でも、そこまで電波を届けて使えるようにするには、携帯電話の電波を届けるため、「基地局」と呼ばれる設備や機械をたくさんそろえて整えなくてはいけません。それにはとてもおカネがかかるので、携帯電話の会社はなかなか料金を安くできないのです。
ところで、携帯電話会社は、より多くの人に使ってもらえるように、携帯電話の仕組みをほかの会社に安く有料で貸し出す義務があるのです。これを借りて、自分の会社の名前で携帯電話のサービスを行う会社が、「MVNO」というものなのです。
もう少しわかりやすく、乗り物に例えて説明してみましょう。
お父さん、お母さんの乗っている自動車はいつでも、好きなところに行くことができます。でも、自動車を買うのにはたくさんのおカネが必要ですし、ガソリンなどの燃料代や、車を置いておくための駐車場代など、いろいろとおカネがかかります。実際に車を持つ場合には、新しい車だと100万円以上、そして月々数万円のおカネがかかるんですよ!
しかし、自動車を借りて使うレンタカーであれば、自動車を買うおカネはかかりません。燃料代も使ったぶんだけで済んでしまいます。携帯電話で、このレンタカーのようなサービスを提供しているのがMVNOなのです。
MVNOではレンタカーの自動車にあたる「携帯電話の仕組み」を携帯電話会社から借りることで、自分で購入するよりも費用を安く済ませています。そのため、MVNOでは安い値段で携帯電話(=自動車)を使うことができるのです。ただし、安いぶんMVNOの携帯電話(=自動車)はスピードが制限されていて、携帯電話会社の電話(=自動車)ほど速く走ることはできないのです。
このように、MVNOの会社は、携帯電話の仕組みをちょっと遅いけど、安く借りられることを利用して、自分の会社のお客さんに安く携帯電話が使えるサービスを行なっています。これが、最近テレビCMなどでもやっている「格安SIM(シム)」というサービスです。格安SIMは携帯電話会社よりもちょっぴり不便なところがありますが、その代わりに安く使えます。これがMVNO、そして「格安SIM」のよいところなのです。