組織構造の種類と特徴を徹底解説|IT・開発チームに最適な構造とは?
皆さん、こんにちは!ベトナムでエンジニアをしているトリンと申します。最近、開発タスクが落ち着いてきたこともあり、チームマネジメントの練習を始める中で、以前より「組織構造」に興味を持つようになりました。組織構造は、企業の効率性・文化・成長に大きな影響を与える非常に重要な要素です。
今回は、どのような組織構造があるのかを紹介し、それぞれの特徴や違いについて学んでみたいと思います。
この記事の目次
1. よく見られる組織構造の種類
調べた限りでは、代表的な組織構造は以下の7種類に分類できます。それぞれ簡単にご紹介します。
a. 機能別構造(Functional Structure)
社員を専門分野ごとにグルーピングし、各機能部門に配置するという、非常に基本的かつ伝統的な組織形態です。たとえば営業、経理、IT、マーケティングなど、それぞれの職種に応じた部門に所属し、専門性を高めていきます。スタートアップ企業であっても、一定の規模になるとこのような機能的な分け方が必要不可欠になります。たとえば、ITチーム内で「バックエンド開発」と「フロントエンド開発」に分ける運営も「機能別構造」の一例です。
b. 部門別構造(Divisional Structure)
機能別構造に似ているようで異なるのが「部門別構造」です。これは、製品・サービス・顧客セグメント・地域など、特定の事業軸に基づいて編成されます。たとえば、日本に本社を置きつつベトナムやインドなどに支社がある場合は、地域軸の部門別構造と分類できます。意思決定のスピード感を高める一方、機能の重複やコスト増といった課題もあります。
c. プロジェクト型構造(Project-Based Structure)
期間限定の目標達成型業務に特化した構造で、IT、コンサルティング、建設業界など、クライアントから成果物を納品する業態でよく見られます。スキルや専門性を持つメンバーを各部門から選出し、プロジェクトチームを一時的に編成します。たとえばある案件のために、フロントエンドエンジニア2名、バックエンドエンジニア3名、デザイナー1名、プロジェクトマネージャー1名で構成するイメージです。プロジェクト終了後は、チームが解散されメンバーは元の部署や新しいプロジェクトへ戻ります。
d. 製品別構造(Product-Based Structure)
プロジェクト単位ではなく「製品」を軸にチームを組成する形です。チームは製品の開発から運用・改善まで長期的に関与し、安定的に機能することが求められます。たとえばHRogという製品では、エンジニアに加え、業界知識のあるビジネスメンバーやマーケターなどが1つのチームに集まり、製品の成長にコミットしています。自社プロダクトを持つIT企業でよく見られる構造です。
e. マトリックス構造(Matrix Structure)
マトリックス構造は、従来の「縦の命令系統、またはピラミッド型」とは異なり、縦(機能)と横(プロジェクト)の両方の指示を受けながら業務を遂行する、より複雑な組織形態です。社員は通常、所属する機能部門の上司と、参加しているプロジェクトのマネージャーという、2人の上司から指示を受けます。これは、単純な階層構造では対応できないような、複雑で多面的な業務に対応するために開発された形です。実際、NASAのアポロ計画など、従来の構造ではスピードや精度に限界があった場面で導入され、大きな成果を上げました。一方で、上司が複数いることによるストレスや意思決定の混乱など、運用面では高いマネジメント能力が求められます。
f. フラット構造(Flat Structure)
上下関係や階層構造をできる限り取り払うことで、意思決定の迅速化や社員の自律性を促進する構造です。中間管理職を排し、全員が対等な立場で情報を共有し、判断・行動することが求められます。OKRや企業の価値観が明確な組織との相性が良く、スタートアップやテック企業などで採用されやすい傾向にあります。ただし、文化的基盤や共有価値が不足していると、役割の不明確さや判断基準の曖昧さが課題になるため、透明性の高いコミュニケーションが不可欠です。そのため、フラット型を機能させるには、単に階層を減らすだけではなく、バリューなどの強い文化的基盤と透明性の高いコミュニケーションが不可欠となります。
g. ネットワーク構造(Network Structure)
ネットワーク構造は、社内外のリソースを柔軟に組み合わせて、必要に応じてチームや機能を再構築できる現代的な組織形態です。たとえば、企画やデザインは社内で行い、開発や運用は外部の専門企業に委託するようなケースが該当します。この構造では、中心となるチーム(コアチーム)が意思決定を担い、その他の機能は外部パートナーが担う形になります。自社ですべてを抱え込まず、変化に強い柔軟な体制を維持できるという点で、近年注目されています。
2. 一般的なITチーム構造の長所と短所
社内にあるITチーム構造と言えば、3つの構造を選んで述べらせていただきます。
マトリックス構造 | プロジェクト型構造 | 製品別構造 | |
対象 | 緊急かつ複雑で、他部門との連携が必要なプロジェクトの場合 | 一時的・独立した案件、外部受託など | 長期的自社製品の成長して欲しい場合 |
長所 |
・各機能部門の専門性を最大限に活用できる。 ・柔軟性が高く、社員は専門分野を持ちながら複数のプロジェクトに関与できる。 ・部門間の情報共有や連携が強化される。 ・現場のニーズに応じて素早く対応可能。 |
・プロジェクトの目的に集中できる。 ・決裁ルートが短く、意思決定が迅速。 ・成果重視の文化が育ちやすく、責任感が高まる。 ・一時的な複雑・多部門連携の業務に最適。 |
・市場や製品ごとに集中でき、顧客ニーズに近い戦略が立てやすい。 ・製品ごとに業績を明確に管理できる。 ・各製品部門が独立採算的に運営しやすい。 ・多角化・多製品展開の企業に適している。 |
短所 |
・上司が2人(機能部門とプロジェクト)いるため、指示が重複・対立しやすい。 ・リソースやスケジュールの管理が複雑になる。 ・管理者間およびチーム内での高いコミュニケーション能力が必要。 |
・プロジェクト終了後、組織的な安定感が欠けることがある。 ・新しいプロジェクトがない場合、リソースが無駄になる可能性。 ・プロジェクト失敗時のリスクが高い。 ・機能部門とのつながりが薄れ、専門知識の継承が難しい。 |
・各製品部門で業務機能が重複しやすく、非効率。 ・組織全体のコスト増加につながる可能性。 ・製品部門間で対立や競合が生じやすい。 ・部門を超えた知識共有が少なくなる傾向。 |
3. まとめ
企業の組織構造は、「正解」が一つあるものではなく、その企業のビジネスモデル、組織文化、事業ステージに応じて選ぶべき構造が異なります。
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変化に柔軟に対応する必要がある場合は「マトリックス構造」、
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プロジェクトのスピード感を重視したい場合は「プロジェクト型構造」、
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製品を中心に据えて継続的に価値提供をしたい場合は「製品別構造」、
がそれぞれ有効です。
また、近年ではこうした複数の組織構造を柔軟に組み合わせた「ハイブリッド型」を導入する企業が増えており、組織の目的や事業環境に応じて、最適な形を設計・運用することの重要性が一層高まっています。
今回あらためて組織構造について調べてみる中で、「組織の構造は、その企業における働き方の土台である」という理解が深まり、マネジメントの視点からチームを捉える視野が以前よりも広がったと感じています。日々の業務に直結するテーマでありながら、つい後回しにされがちな「組織構造」ですが、個人やチームのパフォーマンスを最大限に引き出すには構造的な観点からの見直しが欠かせません。この内容が、皆さん自身の組織をより良くするためのヒントになれば幸いです。
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