こんにちは、塩です。UXについての理解を深めたいと思い「ストーリーマッピングをはじめよう」という書籍を読みました。今回は読書ログも兼ねて、UXにおけるストーリーの役割について考察していきます。
この記事の目次
第1章
ストーリーマッピング
ストーリーマッピングとは、ユーザーに味わって欲しいプロダクトの利用体験を、プロットポイントごとに配置していくこと 第1章 p22より引用
人間がストーリーの枠組み、つまり顧客を主人公に変換するための公式を認識するには、まずストーリーの基本構造が必要になります。この基本構造がなければ、物事を理解することは非常に難しくなります。ストーリーの基本構造は、物語がどのように展開されるかを示すものであり、ユーザーの役割やストーリーの流れ、そしてクライマックスやエンディングといった要素を含みます。
ストーリーには、主に4つのメリットがあります。
①顧客が体験を記憶しやすくなる
まず、ストーリーは顧客が体験を記憶しやすくする力を持っています。これは、単なる情報の羅列よりも、ストーリーとして伝えられた情報の方が脳に残りやすいためです。
②体験に価値を見出す
次に、ストーリーには顧客が体験に価値を見出すのを助けてくれる働きがあります。まるで自分が主人公であるかのように感じられることで、体験が個人的なものとなり、価値が高まります。
③体験の目標に近づく
また、ストーリーは顧客が体験の目標に近づくための手助けもしてくれます。物語の中で具体的な目標や課題が示されることで、顧客はその達成に向けて具体的な行動を取ることができるのです。
④何度も体験したいと思う
そして最後に、ストーリーは顧客に何度も体験したいと思わせる力を持っています。魅力的なストーリーは繰り返し楽しむ価値があり、顧客はそれを何度も体験したくなるからです。
これらのメリットを考えると、ストーリーを用いたマーケティングやブランディングは非常に有効であることがわかります。顧客との深いつながりを築き、そのものの価値を高めるためには、魅力的なストーリーを作り出すことが不可欠であると言えます。よって、ストーリーの力を最大限に活用することで、企業は顧客の心を捉え、互いに良好な関係を築くことができるでしょう。
第2章
ストーリーの仕組み
ストーリーは以下の7つの構造でできています。
①状況説明
②事件や問題の発生
③盛り上げ
④危機
⑤クライマックス
⑥落とし込み (オチ)
⑦エンディング
プロダクトが成功を収めるために重要なのは、「プロダクト」に何ができるかではなく、プロダクトを使った「ユーザー」に何ができるか、にフォーカスするべきだと考えます。
第3章
コンセプトストーリー
コンセプトストーリーとは、あらゆるものの土台になる物語と構造である。第3章 p43より引用
コンセプトストーリーを使ってプロダクトの本質を見極めることで、以下の疑問の答えを知ることができます。
状況説明:現状
・ターゲット顧客は誰か?
・顧客の世界の中で、プロダクトやサービスにとって追い風になりそうなも
のは何か?
・プロダクトやサービスが関係する顧客の大目標は何か?
事件や問題の発生
・顧客の問題や悩みは何か?
盛り上げ:プロダクト名
・プロダクトの名前は何か?
・プロダクトのタイプは何か?
危機:競争
・競争はどんな状況か?
・顧客に解決策の採用をためらわせる心理的なハードルは何か?
クライマックス:価値
・顧客の問題を解決し、さらに危機的瞬間や抵抗を乗り越えさせるものは何か?
・プロダクトの一番の価値提案、差別化要因は何か?
落とし込み (オチ):感想
・プロダクトについて知った顧客にどんなことを思ってほしいか?
エンディング
・目的を果たした顧客に何が起こるか?
・ここはビジネスが大きな目標へ到達し、ミッションを果たすパートでもある。ビジネスゴールは何か?その測定にどんな基準を使うか?
第4章
オリジンストーリー
オリジンストーリーとは、潜在顧客が初めてプロダクトを知り、使い始めるまでのストーリーである。第4章 p69より引用
「オリジンストーリー」は第3章で出てきた「コンセプトストーリー」と第5章に出てくる「ユーセージストーリー」のあいだをつなぐ架け橋の役割を果たしてくれます。
状況説明:現状
事件や問題の発生:問題や気持ちの面でのきっかけ
盛り上げ:獲得のチャネル
危機:ユーザーが体験する抵抗や障害
クライマックス:ユーザーが気にする理由
落とし込み (オチ):ユーザーが何らかの行動を取る
エンディング:目標達成。おしまい…ひとまずは
第5章
ユーセージストーリー
ユーザーがプロダクトやサービスをステップ・バイ・ステップで使っていく過程を表したストーリーである。第5章 p98より引用
ユーセージストーリーを作る時の重要ポイント
①大局的に捉える
ユーザーがプロダクトやサービスをどのように使っていくかを、全体像で把握することが重要です。具体的には、誰が(ユーザー)、いつ(時間)、どこで(場所)、何の目的で(目的)、何をするのか(アクション)を明確にします。
②プロットポイントの評価
ユーザーの行動が意図した通りに進んでいるかどうかを、ステップごとに評価します。例えば、ユーザーが登録フォームに必要事項を入力し、送信ボタンをクリックするという行動が、設計した通りに行われているかを確認します。各段階での反応やフィードバックも重要です。
状況説明:現状
事件や問題の発生:出来事、きっかけ、コール・トゥ・アクション
盛り上げ:いくつかのステップ
危機:ハードルになりそうなもの
クライマックス:価値を体験する瞬間。ハイライト
落とし込み (オチ):それで、どのあとは?物語の流れの最終ステップ
エンディング:おしまい…ひとまずは
第6章
ストーリーの発見とマッピング
イノベーションのポイントは「もし○○なら」
「最も興味を惹かれる状況は、たいてい”もし〜としたら”の仮定法で言いあらわすことができる。もし吸血鬼がニューイングランドの小さな町にやってきたとしたら?もしネヴァダ州の田舎町の警官がトチ狂って、次々にひとを殺しはじめたとしたら?」スティーブン・キング、『書くことについて』(田村義進訳、小学館、2013年)
SFの世界の登場人物は、iPadのような強力なデバイスを使いますが、これは物語の中でストーリーを前に進めるという、小道具として明確な役割を持っていると言えるでしょう。
このようなプロダクトが魔法を見せてくれる瞬間、ユーザーは自分の希望を汲み取ってくれたのではないか、もしくは自分のために自動で行なってくれたのではないか、とあらゆる思考を巡らせてくれるかもしれません。
だからこそ、私たちは、「もし〇〇なら」と疑問を抱き、ストーリーマッピングを行い、刺激的な空想上のアイテムのストーリーラインを描き出し、強みや弱み、市場の需要とのマッチ度を評価するだけで良いのです。
第7章
ストーリーの活用法
ストーリーマップは、ガイド、顧客にこう体験してほしいという「狙い」を示した筋道のようなものになります。
「何かをデザインするときは、そこに必ずエンターテインメント要素がなくちゃならない。だけど、何をデザインするにせよ、その目的はストーリーを支えることなんだ」ティム・フラッテリー『バック・トゥ・ザ・フューチャー2』より
ダイヤグラム
言葉や文章では分かりにくいことを、図や表で、場合によってはメタファを利用して示すことをダイアグラムといいます。ダイアグラムは、情報をわかりやすく把握したり伝達するためにストーリーを視覚化したものです。
ストーリーボード
ストーリーボードは、もともと映画のストーリーを効率的に考えるため1930年代にウォルト・ディズニーが考案したものです。ユーザーのプロダクトに対する考え方や使い方を大まかに視覚化したり、細かな部分をマッピングするのに最適だと言えます。
ストーリーボードテンプレートには、以下4つの要素が含まれます。
①ギャップ分析:現在と目標の間にある差を分析する。
②行動分析:ユーザーの行動を観察し、パターンを見つける。
③要件評価:プロダクトの必要要件を評価する。
④SWOT分析:強み、弱み、機会、脅威を分析する。
これらのツールと手法を用いることで、ユーザーの体験を細かく設計し、魅力的で記憶に残るものにすることができます。
第8章
ストーリーマッピングの大原則
システムを俯瞰視点でマッピングするとき、ストーリーは人間の体験を人間の視点でマッピングしたものに過ぎません。さまざまな人間の道のりを魅力的なものにするためには、その道のりを前もって想定しておくことが大切です。設計された体験がユーザーを喜ばせるインパクトが十分である限り、その体験は顧客の記憶に残ります。
筆者自身も、魅力的なストーリーとは、ユーザーの期待を超えるものであるべきだと考えています。予想すらしていなかった驚きや感動を設計することで、素敵な体験であればあるほど、ユーザーはさらに喜びを感じることができるでしょう。事前のマッピングとユーザー体験のシナリオを細かく確立させれば、人々の心に残る体験を提供することができ、これが結果的に顧客満足度の向上に繋がっていくのだと思います。
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