使える!情シス三段用語辞典120「インダストリー4.0」

常に新しい用語が生まれてくる情報システム部門は、全ての用語を正しく理解するのも一苦労。ましてや他人に伝えるとなると更に難しくなります。『情シスNavi.』では数々のIT用語を三段階で説明します。

一段目 ITの知識がある人向けの説明
二段目 ITが苦手な経営者に理解してもらえる説明
三段目 小学生にもわかる説明

取り上げる用語を“知らない”と思った人は、小学生にもわかる説明から読んでみると、理解が深まるかもしれません!?

一段目 ITの知識がある人向け「インダストリー4.0」の意味

1700年代後半からイギリスではじまった第1次産業革命では、手作業を機械化して作業効率を大幅に改善しました。」

という歴史を小中学校で習った記憶がある人も多いかもしれません。
1800年代後半に入り、石油と電力を活用した大量生産がはじまった第2次産業革命、IT技術を活用しはじめた1900年代後半からの第3次産業革命と続きます。
そして、第4次産業革命を起こす取り組みとして、ドイツ政府が主導する国家プロジェクトが「インダストリー4.0」なのです。

インダストリー4.0とは

インダストリー4.0(Industry 4.0)とは、製造業におけるオートメーション化およびデータ化・コンピュータ化を目指す昨今の技術的コンセプトに付けられた名称になります。

「インダストリー4.0」のコンセプトは、スマートファクトリー(考える工場)にあります。スマートファクトリーでは、人・機械・企業内のあらゆるリソースが互いに通信し、リアルタイムに連携します。これにより、製造プロセスをより円滑にして生産コストを極小化、生産性を向上させることが目的です。

インダストリー4.0の最終目標は、生産性を極限まで高めることで、少量多品種・高付加価値の製品を大規模生産すること(マスカスタマイゼーション)なのです。

 ものづくりの現場を変えるインダストリー4.0

ドイツの大手自動車機器・産業機器メーカー「BOSCH」は、IoTやAIを活用した「インダストリー4.0」を重要な経営戦略とする企業として有名です。BOSCHが、スマートファクトリーの実現を目指し開発したシステムが、「Nexeed Production Performance Manager」です。
「Nexeed Production Performance Manager」では、工場においてすべての組立工程のデータを取り込み、蓄積してグラフ化します。製造プロセス全体の生産性向上は、最終工程の検査で不良品を発見するのではなく、工程の上流で規格外のデータを発見して、いかに早く不良品の芽を摘めるかにかかっています。
このため、「Nexeed Production Performance Manager」では、組立工程の上流工程を含むあらゆる機械のデータを収集して、状態監視をし続けます。

サイクルタイム・油圧温度・油圧などの変化がグラフで視覚的に確認できる

<画像出典:BOSCH HP>

収集されたデータは「Nexeed Production Performance Manager」で分析され、すべての機械の状態を時系列で表示し、変化をグラフで表示。

グラフはリアルタイムで更新されるため、障害が発生した場合に、その機械のみを停止させるのか、工程全体を停止させるのかなどの意思決定が高速化します。

「Nexeed Production Performance Manager」を導入した工場では、不良品の廃棄量が減少したことにより、5~10%も生産性がアップしました(データ出典:Nexeed Production Performance Managerパンフレット)。

インダストリー4.0の向かう先と課題

工場内のあらゆる機械やセンサーがIoTでつながる世界「インダストリー4.0」の実現に向け、課題となるのが「サイバーセキュリティ対策」と「国際標準化」です。
製造ビジネスの分野において、日本政府もインダストリー4.0を牽引するドイツとの関係を急速に深めており、2017年には経済産業省とドイツの経済エネルギー省が、インダストリー4.0に関する日独協力の枠組みを定めた「ハノーバー宣言」に署名しています。

日独共同で、製造業におけるサイバーセキュリティと国際標準化への取り組みを進めています。

<画像出典:経産省・資料「製造業を巡る環境変化に対する課題と方向性」より>

 

二段目 ITが苦手な経営者向け

とある部品メーカーの社長さんと情シス課長の印田さんはこれまであまり会話を交わしたことがありませんでした。ある日のこと社長さんが印田さんに何やら聞きたいがあるようで突然、情シスにやってきました。

社長:印田さん、ひとつ教えてもらいたいことがあるんだけど・・
印田:どうされましたか? 社長。
社長:あの…、印田さんなら「インダストリー4.0」って何か知っているだろうと思ってね。どうやら我々製造業と深く関わっている取り組みらしいということは分かったのだけど、部品メーカー社長の僕が知らないなんて社長仲間には言い出せなくてさ。ははははは!
印田:なるほど、そうでしたか。インダストリー4.0を簡単に説明するなら「工場の生産性をさらに向上する取り組み」になります。実際には工場内の機械をすべてITでつないで製造に関するデータを一元管理することで実現します。
社長:あんな大きな機械をつなぐという発想自体したことないな。
印田:そうなんです。これまで、当社だけではなく多くの工場でも機械は一台一台、個別に管理していました。もしも、最終工程の包装に行くずっと上流の工程が“いつもより遅れている”という情報が分かっていたら、最終工程に行く前に製品を確認しますよね。
社長:そうだな。不具合品が発生する原因かもしれないしな。工程全体の時間のロスになるので、最後の包装工程より前に不具合の芽を摘めたら嬉しいねぇ。
印田:その通りなんです。工場全体をつないで、すべての機械の稼働状況をデータとしてリアルタイムに監視できれば、不具合を初期段階で見つけることもできるのです。
「インダストリー4.0」とは、製造の生産性を極限まで高めるという第4次産業革命にあたる取り組みなのですよ。
社長:乗り遅れてはいけない取り組みなんだね。社長仲間にもリサーチしてみることにしよう。

 

三段目 小学生向け

今日は、シャツの作り方について勉強してみましょう。
今着ているシャツ、皆さんはどうやって作っているか知っていますか?

Aくん:シャツ工場に機械がいっぱい並んでて、そこで作っているんだよ。

では、大昔はシャツをどうやって作っていたのでしょうか。

Bさん:大昔は機械がないから、手で縫っていたんでしょ?

そのとおりです。手で縫っていたものを機械で、しかも大量の機械で縫うことにして、シャツをたくさん作りはじめるようになったのが、250年以上前のことです。
では、工場の機械で大量にシャツを作ることができる現在、短時間でもっと多くのシャツを作るにはどうしたら良いのでしょうか?

A君:襟をめちゃめちゃ早く縫えるようにしたらいいんだよ。
Bさん:いや、襟の後のボタン付けをめちゃめちゃ早くすればいいんじゃない?

そうですね。でも“めちゃめちゃ早く”にも限界があるので、名案を思いついたドイツの人がいました。工場内の襟を縫う機械も、ボタンを付ける機械もすべてをつないで、ボタンの情報も襟の情報も一度に確認できるようにするという方法です。これなら、襟を縫う機械がいつもより動きが遅いと分かったら、ボタンを付ける前に襟の機械を確認しておかしなところを修正することができます。
ボタンを付けてシャツが完成したあとに、襟が変だったと気が付くよりも、シャツを作るスピードは早くなりますね。

このようにシャツの工場でできた、短い時間でさらに大量にシャツを作るという方法をすべての工場で行おうとしています。
このような取り組みは「インダストリー4.0」という名前で、ドイツだけではなく日本やアメリカも含めて世界中で行おうとしています。

 

さて、皆様のご理解は深まったでしょうか?

 

【執筆:編集Gp 近藤真理】

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