UXデザインのプロセス: 調査分析からコンセプトデザインまで

こんにちは!デザイナーのsoiです。今回は、「UXデザインの教科書」のプロセスの部分をまとめてみました。

この部分では、「UXデザインを構成する7つの要素(ステップ)」について詳しく記述していますので、興味のある方は、ぜひこの記事を一読していただけると幸いです。前回のnoteにも上げさせていただきましたが、時代の変化と共に、UXデザインについて考え方も変わってきましたが、今回の記事では、今主流である「人間中心デザイン」の考え方を元に記述していきます。

「7つの要素(ステップ)」は一見数が多くて難しそうと思う方もいらっしゃるかもしれないですが、各要素(ステップ)について使える手法も紹介しますので、ぜひ最後まで読んでみてくださいね。

UXデザインを構成する7つの要素

UXデザインを構成する7つの要素、つまりUXデザインを行う手順として、主に下記の7つにまとめられます。

1利用文脈とユーザー体験の把握

2ユーザー体験のモデル化と体験価値の探索

3アイデアの発想とコンセプトの作成

4実現するユーザー体験と利用文脈の視覚化

5プロトタイプの反復による製品・サービスの詳細化

6実装レベルの制作物によるユーザー体験の評価

7体験価値の伝達と保持のための指針の作成

1番の「利用文脈とユーザー体験の把握」と2番の「ユーザー体験のモデル化と体験価値の探索」は、目標ユーザーと課題についての調査・分析段階になり、3番の「アイデアの発想とコンセプトの作成」と4番の「実現するユーザー体験と利用文脈の視覚化」は、1番と2番から得たデータを元に、今回のプロジェクトのコンセプトデザインを検討する階段になります。

1番から4番の流れを経て、プロトタイプを作成し、5番のプロトタイプによる検証に入ります。

プロトタイプをモデルに、実装に入ります。しかし、実装するまでで終わりではありません。ユーザーに実際に操作・体験し、さらにフィードバックをもらい、保守運用に作業に入ります。

今回は、コンセプトデザインまでの流れについて紹介します。

利用文脈とユーザー体験の把握

利用文脈とユーザー体験の把握は、UXデザインを始める第一歩です。このステップでは、すでに存在する製品・サービスを改善・保守する場合では、ユーザーの行動観察やインタビューなど、利用文脈とそこでのユーザー体験を把握する調査が中心となり、ユーザーの利用状態などの重要な情報を把握します。

新しい製品・サービスを開発する場合においては、現在ある製品やサービスの中でよく似た体験を提供しているものを探し、そのユーザーへの調査を実施することができます。

このような実際のユーザーの行動を調査することで、「ユーザーが求めている体験価値や本質的なニーズにつながる情報を得ることができ、新しい製品やサービスのヒントになります。」*

使える手法

よく知られている手法としては「アンケート」と「インタビュー」の二つがあります。両方もユーザーの感情・意見・態度・価値観を知るのに向いている手法ですが、「アンケート」では「定量的調査」であり、多量のユーザーからの情報を数量に変換して理解することができ、統計的にデータを処理することができます。一方、「インタビュー」は「定性的調査」であり、データ数値だけでは表現・観察できない情報の獲得もできます。アンケートを取る際には、事前に何らかの仮説が建てられていることが多いことに対して、インタビューをする際には仮説がないことがなく、インタビューをする最中、または得られたデータから仮説を発見することが多いです。

ユーザー体験のモデル化と体験価値の探索

このステップでは、ステップ1で実施したユーザー調査の結果を元に、ユーザーの体験価値や本質的なニーズを分析します。分析した結果は、「何をデザインするべきか」の手掛かりになり、成果物の候補になります。

しかし、調査データがあるとはいえ、デザインを通して実現すべき体験価値がすぐにわかるわけではありません。ユーザーの本質的なニーズを仮説で導き出し、仮説を通して真の実現すべき体験価値を探索するのが、このステップの目的です。さらに、既存の参考デザインや利用文脈をわかりやすく整理し、関係者の間でユーザー情報を共有しやすくするため、このステップでユーザーのモデルも作成します。

このステップでは、これから行う作業の元なる情報の獲得段階であり、最も大事なステップだと思います。

使える手法

ユーザー調査から得た情報から、典型的なユーザーの利用文脈を視覚化するのが、ユーザーモデリングという、このステップで行う作業の目的です。代表的なアプローチは、下記の二つがあります。

・コンテクスチュアルデザイン

コンテクスチュアルデザインは、特定の文脈に対して最適なデザインを提案するデザイン手法です。この手法では、ユーザー行為の現場にフィールドワークを実施し、そこで得られた情報をその環境内での人やモノの相互影響(フローモデル)、その行為のプロセス(シーケンスモデル)、行為とその物理空間の相互影響(物理モデル)、使う道具の分析(人工物モデル)、ユーザーの文化背景などから受けた影響の分析(文化モデル)という5つのモデルで分析します。その結果をストーリーボード、ペーパープロトタイプなどでユーザー評価や改善を繰り返しながら、デザインしていきます。

・ゴールダイレクテッドデザイン

ユーザーのゴールをいつも考慮しながらデザインを行う手法です。達成したいゴールを典型ユーザー(ペルソナ)といいます。

まずは関係者に調査を行い、調査結果を元にペルソナ像を決めます。そして明確なペルソナ、つまりゴールを一貫し、シナリオを用いながらデザインの要件を明確していきます。

アイデアの発想とコンセプトの作成

このステップでは、「調査・分析」段階で得られた情報を踏まえて、提案するデザインの検討、コンセプトの作成が目的になります。

実現すべき体験価値が達成でき、ユーザーの本質的なニーズを満たす発想はもちろん、ビジネス戦略やビジネスの要求事項と統合したコンセプトの作成も要求されます。

使える手法

このステップでは、できるだけ多くのアイデアが発想できるのが大事なので、プロジェクトの参加者でブレストーミングするのが一般的な手法です。色んな立場の人を巻き込み、違う角度からの見方が得られます。

実現するユーザー体験と利用文脈の視覚化

このステップでは、これまで検討してきたコンセプトを理想のコンセプトと比較しながら調整し、デザインを詳細化していきます。ただし、このステップでは製品やサービスの機能や性能についての詳細化は行わなく、製品やこのサービスを使うユーザーがどのように振る舞うか、製品やサービスを使う時にどのようなプロセスやきっかけで体現価値を感じるか、理想のデザインを詳細化します。

ここで製品やサービスの機能などについてあえて詳細化しないのは、ユーザーの体験こそが重要であり、製品やサービスはそれをサポートする手段であるからです*。

使える手法

このステップでは、ユーザーの体験を具象化することで、抽象度が高いコンセプトから達成したい理想のコンセプトへ徐々遷移します。そのため、抽象的なコンセプトを視覚化するのがこのステップの作業です。

この段階でよく使う手法としては、主に三つあります。

・文章(シナリオ)で詳細化する

・ビジュアルイメージで詳細化する

・演技で詳細化する(ロールプレイング、アクティングアウトなど)

まとめ

今回は、UXデザインを行うため、コンセプトデザインまでのプロセスを紹介しました。

ユーザー(人間)が行いたい行為から、その行為を行う根本的な欲求(本質なニーズ)や行為の発生に伴う価値(実現すべき体験価値)などの抽象概念を導き出し、再び具象に(モノ)戻る流れでした。

製品・サービスの形がまだふんわりしている段階ですが、開発をうまく進めるために欠かせない部分です。

 

参考:安藤昌也,「UXデザインの教科書」,丸善出版,2016年

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