システム開発の工程、成功へ導く3つのポイント

システム開発は要件定義から始まり、基本設計、詳細設計、プログラミング、テスト、運用保守といった複数の工程が存在します。こうした工程にはさまざまな考慮すべきポイントがあります。このコラムではシステム開発の工程について解説するだけでなく、システム開発に関わるリスクや成功に導くためのポイントについても説明します。

 

1.システム開発の工程

システム開発の工程とは、システム開発においてあらかじめ決められた手順のことを指します。システム開発の工程は、ITシステムやWebアプリケーションを「最小限のコストと時間、かつ高品質で開発するための枠組み」と言えるでしょう。

一般的にシステム開発の工程は上流工程と下流工程に大別できます。上流工程では主にシステム開発のプロジェクト全体のゴールやシステム開発の方向性、人・モノ・金・時間といったシステム開発に必要なリソースやプロジェクト体制を決定します。

上流工程では要件定義、基本設計、詳細設計を行います。上流工程におけるクライアントの要件の洗い出しや設計が甘く、しっかりしたプロジェクト体制の構築ができていないと、下流工程の開発作業で手戻りが発生したり、プロジェクトの進捗に問題が発生したりします。上流工程はシステム開発の成功の成否を握るため、リスクが発生しないようにしっかりと進めていくことが極めて重要です。

 

一方、下流工程ではプログラミング、単体テスト、結合テスト、運用テスト、運用保守を行います。下流工程を円滑に進めるためには効果的なリスク管理、アウトプットを最適化するための最新のツールや技術の活用、品質の管理、リソースと予算管理が必要です。

下流工程はクライアントが求めるシステムを実際に作りあげる、いわばものづくりのプロセスと言えます。

各工程ごとの具体的な説明は『システム開発の手順と流れ』に記載がございますので、あわせてご覧ください。記事はこちら ⇒ 『システム開発の手順と流れ

 

2.システム開発の種類

システム開発には複数の種類があります。主な3つについて説明します。

・汎用系システム
・オープン系システム
・Web系システム

 

(1)汎用系システム

汎用系システムとは、汎用機と呼ばれる大型のコンピュータで利用するシステムや、汎用機で開発するシステムのことを指します。汎用機とは「メインフレーム」や「ホストコンピュータ」とも呼ばれ、主に大企業の基幹システムで利用されているコンピュータです。基幹システムは製造や金融、流通などの分野で、データ処理の中枢として利用される大規模なシステムです。こうしたシステムは各々の企業の専用システムとしてオーダーメイドで開発されているケースが多いです。例えば銀行においては勘定系システムや情報系システムが該当します。

(2)オープン系システム

オープン系システムとは、技術的な仕様が一般に公開されているソフトウェアやハードウェアを利用して構築したシステムのことを指します。 オープン系システムはパソコン、WindowsやLinuxなどの汎用的なOSを使ってシステムを開発します。柔軟性が高く、自由度の高いシステムで、新しい技術や機能を効率的に組み込むことが可能です。また開発コストや導入コストを抑えることができるため、中小企業で利用されるケースが多いです。
※OSとは・・・パソコンの操作やスマートフォン全体を制御、アプリなどを使うために必要なソフトウェアのことを指します。OperationSystem(オペレーティング・システム)」の略称

(3)Web系システム

Web系システムとはWeb上で稼働するシステムやアプリケーションを指します。ブラウザ上で利用できるシステムのため、ECサイトやSNSなど不特定多数のユーザーに使われるシステムが対象です。

 

3.システム開発に関するリスク 

システム開発の工程にはさまざまなリスクが潜んでいます。そのため、システム開発を成功に導くにはリスクマネジメントが大切な要素となります。ここではシステム開発に関わる4つのリスクについて説明します。

・技術的リスク
・品質的リスク
・納期的リスク
・金銭的リスク

 

1.技術的リスク
技術的リスクとは、技術的な問題によってシステム開発が困難になるリスクです。当初は開発可能と見込んだものの、複雑すぎて難易度が高いシステムの開発や開発会社の技術力が至らない場合には、開発途中でプロジェクトが頓挫するケースもあります。また開発段階で発生したバグが解消せず、システムの動作に不具合が生じ、要件定義で要求された品質を担保できなくなるケースもあります。

2.品質的リスク
品質的リスクとは、クライアントの要件を満たせないシステムを開発することを指します。開発側とクライアントの間でシステム要件に対する認識の齟齬や理解のレベルにギャップがあると、必要な機能が実装されていなかったり、タスクの処理時間に時間がかかりすぎるシステムができてしまったり、機能要件を満たさないシステムが開発されてしまうリスクがあります。

3.納期的リスク
納期的リスクとは、スケジュール通りに納品できないリスクです。納期的リスクでは予定されていたリリース日やカットオーバーの日にシステムが利用できない状況が発生します。システム開発はそもそもスケジュール通りに進捗することはまれであり、要求事項の変更や仕様変更、プロジェクトメンバーの離脱などの問題などで納期が遅延するリスクが発生することが少なくないため、納期的リスクを極小化することが大切です。

4.金銭的リスク
金銭的リスクとは当初の見積り金額よりも、開発費が膨張するリスクです。上述の技術的リスク、品質的リスク、納期的リスクは、最終的に金銭的リスクに帰結するリスクともいえるでしょう。このような金銭的リスクが発生しないように、クライアント側と開発側で綿密な打ち合わせを重ねるとともに、要件定義や設計工程の精度向上、定量的なプロジェクトの進捗管理などを行うことが必要です。

 

4.システム開発を成功に導くための3つのポイント

システム開発を成功に導くためには、主に3つのポイントがあります。それぞれについて説明します。

・システム開発の目的の明確化
・最適な開発手法の選択
・複数の開発会社を比較検討する

 

1.システム開発の目的の明確化
よくありがちなのが手段の目的化です。手段であるシステム開発が目的となってしまい、本来の目的である、システム開発によるビジネス上の課題解決や価値創造を忘れてしまうことです。「システムを開発することによって実現したいことは何か」を明確にすることで軸がブレずに開発を進めることができます。こうすることで目指すべきゴールが定まるため、逆算して開発プロセスの設計を行い、開発手法を円滑に決定することができるでしょう。

2.最適な開発手法の選択
開発手法にはさまざまな手法があります。それぞれの開発方法には特徴があり、メリット・デメリットが存在します。システムの規模や形態に合わせ、自社の状況を考慮しながら最適な開発手法を選択しましょう。例えば、小規模なWebシステムにウォーターフォール型の開発はマッチしないでしょうし、開発時間もかかるため、アジャイル型でスピーディーに進めた方がよいでしょう。作業効率と作業のスピードは適切な開発手法に依存するため、最適な開発方法を選択しましょう。

3.複数の開発会社を比較検討する
開発会社の選定はシステム開発の成否を左右する重要な要素です。システム開発には専門的な知見や豊富な経験が求められます。また、先述のようにシステム開発には複数の種類があるため、開発会社によって得手不得手が存在します。さらにシステム開発の規模によっては、単独の開発会社だけで完結することが難しいケースが存在します。そのため、開発対象のシステムの要件に応じて、複数の開発会社を比較検討して最適な会社を選択することが重要です。この選択を誤るとシステムの開発の遅延や品質的なリスクが発生し、結果的に金銭的リスクにつながってしまいます。

 

5.まとめ

 この記事では「システム開発の工程」について、複数の切り口から解説しました。システム開発の成功にはさまざまな要素が関連しています。システム開発の工程ではどのようなことを考えたら良いのか参考にしてみてください。

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