使える!情シス三段用語辞典109「Society5.0」

常に新しい用語が生まれてくる情報システム部門は、全ての用語を正しく理解するのも一苦労。ましてや他人に伝えるとなると更に難しくなります。『情シスNavi.』では数々のIT用語を三段階で説明します。

一段目 ITの知識がある人向けの説明
二段目 ITが苦手な経営者に理解してもらえる説明
三段目 小学生にもわかる説明

取り上げる用語を“知らない”と思った人は、小学生にもわかる説明から読んでみると、理解が深まるかもしれません!?

一段目 ITの知識がある人向け「Society5.0」の意味

もはやスマートフォンは当たり前の時代となりました。自動調整の空調が整えられた快適な部屋にいて、スマートテレビで好みのお笑い動画を見ていると、台所からスマート調理器が作る夕飯の焼き魚とシチューの匂いが漂ってきて、玄関口には宅配便を届けるドローンが到着し、その横の検針メーターからは家の月々の電力消費量が自動で電力会社に送られている――こんな具合に私たちの生活に登場する“スマート○○”は続々と増えていくでしょう。AIやビッグデータなど技術の発展に伴い「スマート」だらけの生活がすぐそこまで来ています。

こうした“スマート〇〇”の背景にあるのは、「Society5.0」という社会モデルなのです。

“5.0”以前はどんなもの?

「Society5.0」とは、内閣府が定めたこれからの未来の社会の形を構想する科学技術基本計画において提唱されたもので、ITを駆使した社会へのイノベーションを表す言葉として使われています。

「Society5.0」は、“サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会(Society)”(内閣府HPより引用)で、AI・IoTやネットワークを活用して社会全体でデジタルトランスフォーメーション(DX)が進んだ状態を示しています。

「5.0ってことは今までは4.0だったの?」という疑問が湧いてきますが、その通りです。実は今までは「Society4.0」だったのです。Society4.0は物理世界のアナログ情報がデジタル化しシステム化していった「情報社会」です。組織やシステム中心であったSociety4.0で見過ごされてきた少数派の人々の課題や格差を解決し、社会を変革していこうというのがSociety5.0です。

以下のように内閣府の定義では人類史上の社会が定義分けされています。

<画像出典:内閣府ホームページ

ソフトウェアと同じで、社会もアップデートされてきているのです。

Society 5.0の目指すもの

これまでの情報社会(Society 4.0)では知識や情報が共有されず、分野横断的な連携が不十分であるという問題がありました。人が行う能力に限界があるため、あふれる情報から必要な情報を見つけて分析する作業が負担であったり、年齢や障害などによる労働や行動範囲に制約がありました。また、少子高齢化や地方の過疎化などの課題に対して様々な制約があり、十分に対応することが困難でもありました。

Society 5.0で実現する社会は、IoT(Internet of Things)で全ての人とモノがつながり、様々な知識や情報が共有され、今までにない新たな価値を生み出すことで、これらの課題や困難を克服することを目標にしています。また、AI(人工知能)により、必要な情報が必要な時に提供されるようになり、ロボットや自動走行車などの技術で、少子高齢化、地方の過疎化、貧富の格差などの諸問題を解決し、社会の変革(イノベーション)を通じて、これまでの閉塞感を打破し、希望の持てる社会、世代を超えて互いに尊重し合あえる社会、一人一人が快適で活躍できる社会を目指しています。

<画像出典:内閣府ホームページ

冒頭の例のように、家電や設備やインフラなど様々なモノがネットワークにつながり、個人の情報やビッグデータを活用して、エコで人々が暮らしやすい社会を実現させるということなのです。

例えば、センサーが埋め込まれた自動運転車により無人タクシーで老人ホームの送迎ができるようになったり、エネルギーの無駄が極力出ないようにAIが建物内の空調を自動調整したり、ビッグデータ活用によってサプライチェーンマネジメントを最適化したりと、生活や業務のさまざまなシーンでITが活躍する便利な社会となるのです。

<画像出典:内閣府ホームページ

その社会革新の基となるのがIoTやビッグデータ、AIに5Gなどの最新技術です。

センサーやシステムの埋め込まれたIoT機器で膨大な情報を集め人間の声や動作を認識して信号化し、AIによってそのビッグデータ解析や信号の認知を行い、5G通信によって膨大な情報量でも遠隔地からコントロールするということができるようになります。このSociety5.0計画は、その内容に経団連からの提言を取り入れるなど、政府と経済界や学術団体などさまざまな分野で連携して進められます。

これまで挙げた例はあくまでも例で、さらにいろいろな変化やさまざまなサービスが発生するでしょう。
さまざまな業界で起こる一つ一つのデジタルトランスフォーメーション(DX)が集まって、Society5.0の実現となるのです。

なお、Society5.0の走りともいえるIoT機器はすでにいくつも実現し市販されていますが、デフォルトパスワードで機器の乗っ取りが行われてしまうなど、情報の管理やセキュリティ意識の徹底に課題があると言われています。

使う側の情報管理意識や、製品開発側のセキュリティへの理解など、情報管理が今まで以上に重要になります。

二段目 ITが苦手な経営者向け

とある会社の社長秘書、困った顔で情シスの五社さんを呼び止めました。どうやら社長から極秘の指令が出ているようで……。

社長秘書:「すみません、五社さん。社長からの指示なのですが」
五社さん:「社長から? 何でしょう?」
社長秘書:「取引先の社長さんの誕生日祝いに『スマートスピーカー』をご所望ということで手配を頼まれたのですが、社長も私もスマートスピーカーがどういうものなのかよくわからなくて。システムに強い五社さんにちょっとご指導いただきたいのです」
五社さん:「ああ、そういう話ですね。スマートスピーカーはAIスピーカーとも言われていますが、“インターネットと接続”し、“人の声を認識”でき、“(AIが)質問やお願いに応えて”暮らしをサポートするワイヤレススピーカーのことです。」
社長秘書:「ネットワークに? あ、この写真のこの線のことですか?」
五社さん:「これは電源の線ですよ。ネットワークにつながっているといってもWi-Fiを使いますから」
社長秘書:「そうですか。スピーカーがネットワークにつながって何をするのですか?」
五社さん:「見かけはスピーカーですが、パソコンみたいに使えるんです。例えば『今日の天気は?』と話しかけると、その音声を認識して、天気を検索して答えてくれるんです。キーボードやスマホを使わないでおしゃべりする感じで、調べ物をしたり音楽をかけたりといろいろできるんです」
社長秘書:「えっスピーカーと天気について会話できるってことですか?」
五社さん:「そうです。アニメに出てくるような未来っぽさがあるでしょ。これはまさにSociety 5.0の世界なんです」
社長秘書:「Society 5.0? なんだか聞いたことがあるような言葉だけど」
五社さん:「Society 5.0は、ITを駆使して経済発展と社会的課題を解決する未来の社会モデルのことです。政府が提唱したのですが、IoTやAIを使って産業効率化や高齢化にともなう社会コストの抑制、地方格差是正といった課題をクリアすることを目標としているんです」
社長秘書:「うーん、なんだか難しそうですね」
五社さん:「言葉だけ聞くと難しいかもしれません。例えば、農業機械を自動化して農家の後継ぎが少なくなっても生産を続けられるようにしたり、工場全体の稼働率や売り上げの情報をビッグデータ解析して自動的に最適な生産量に調整することができたり、そういう便利なことがいろいろできるようになるってことなんです。」
社長秘書:「へぇぇぇ!」
五社さん:「で、スマートスピーカーでしたよね。僕個人としてお勧めなのはコレですかね……」
社長秘書:「五社さんも話しかけたらいろいろ教えてくれて、まるで人間スマートスピーカーですね! 社長に報告してきます!」

三段目 小学生向け

小学生のソウスケくんは、誕生日のプレゼントにお父さんからスマートスピーカーをもらいました。お父さんに設定をしてもらい、ソウスケくんはさっそくスマートスピーカーでお気に入りの音楽をかけたり、英語の勉強をしたり、大好きなサッカー選手について調べたりと夢中になっていました。
そんなある日のこと。

「今日もスマートスピーカーで遊ぼうっと。〇〇〇〇! しりとりしよう」
「では私から。しりとり」
「り、りす!」
「スイカ」
「か、かわうそ!」
「Society 5.0」
「え? 何それ?」

そのとき、スマートスピーカーから聞こえてきたのはなんとまるで人間のようなため息でした。

「やれやれ、そんなことも知らないのですか。まったく……」

ソウスケくんはびっくり。スマートスピーカーは、これまでとは違う、まるで本物の人間のような口調でしゃべり続けます。

「いいかい、Society 5.0とはね、ITで作る便利でよりよい社会のことなんだ。私のようなAIがもっと生活に溶け込んでいくんだよ。家や車や鉛筆や歯ブラシ、いろいろな物がAIになったりネットワークにつながったりして、今までできなかった便利なことができるようになるんだ」
「〇〇〇〇! じゃあ、どんなことができるようになるの?」
「そうですね、例えば、車ではAIによって自動運転ができるようになるでしょうし、運転する必要がなくなる日がやってきます。無人のタクシーやバスができるようになるでしょう。これらは様々な通信手段により完璧にナビゲートされ、道に迷うこともなくなるでしょう」
「すごい! 他にはどんなことが?」
「他ですか? 配達はドローンができるようになるでしょうし、ソウスケ君のおじいちゃんちみたいに近くにスーパーがないような小さな町でも、必要な物を手軽に届けてもらうことができるようになるでしょう」
「それいいね。おじいちゃんち田舎だからなあ。近くの病院もなくなっちゃったって言ってた」
「ロボットや5Gといった通信の発達により、町の小さな診療所で、大学病院の最先端の診療を受けることだってできるようになります。カメラやロボットアーム、センサーを使って、遠くの病院から専門の先生が診てくれるのです」
「他には他には? ぼくにも何か新しいことが起こるかな?」
「ソウスケ君はサッカーを見るのが好きでしたよね? 例えば、サッカーのスタジアムの様子をテレビ画面の中だけじゃなく、VRを使ってまるでフィールド内にいるようにリアルに見ることができるようにもなるでしょう。」
「いいね! 試合を3Dで間近で見られたらおもしろいだろうね」
「Society 5.0は、IT技術の活用によって、そんなすごくておもしろい未来になることを目指しています。今まさに世界中で始まっているところなのです。スマートスピーカーは、その始まりであり、一部なのです」

ソウスケ君がもっといろいろ聞こうと身を乗り出したら、お母さんの「ごはんよ」という声がしました。
はっと気づいたら、スマートスピーカーは黙り込んだまま。話しかけても、もういつものスマートスピーカーに戻っていました。

 

さて、皆様のご理解は深まったでしょうか?

 

【執筆:編集Gp 星野 美緒】

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