【情シス豆知識】情シスが直面する「課題」とその「対策」

経営陣から変化を求められる情シス。企業経営にITが欠かせなくなったビジネスの潮流を考えればさもありなんですが、一方で情報システム部の現状を見れば、それはきわめて難しい。変化への希求と現状の課題。この板挟みのなか、情シスはどう動けばよいのか?
今回はこれまでの課題を洗い出し、その対策を考えていきます!

【課題山積み】ビジネスのIT化は花盛り。一方で・・・

製造業では設備や生産管理にIoTを活用、サービス業では顧客管理にビッグデータやAIを活用、さらにさまざまな業種でチャットボットやRPAも流行中。現在、ビジネスのIT化が気炎をあげて進んでいます。

さて、ここから考えれば、今注目を最も集めるべきは企業のITを一手に任された情シスのはず。でも、レッドカーペットはたしかに見えていうような気がするものの、なんだか足が向かない。なぜか? それは、さまざまな課題を抱えているから。

ビジネスのIT化。この文言だけみれば、情シス的には本領を発揮できる、きわめてウェルカムなこと。でも、現状は・・・、「人材が足りない」「複雑すぎるシステム構成に対応できない」「復旧対応に追われる毎日」など、従来の体制やシステム基盤の整備・維持といったレガシー業務が足かせに。そんななか、「利益を出すIT戦略を提案せよ」と、かっこよさげなミッションをいただても、これでは立ち行かないは自明の理。ビジネスのIT化が加速する一方、そこに対応できる環境に情シスはいないのです。

ではどうするか? が、今回のテーマ。情シスの「現状の課題」を洗い出し、その対策案を考えていくことにしましょう!

 

【課題その①】万年人手不足。ひとりもゼロも、もはや珍しくなくなった

「ひとり情シス」、「ゼロ情シス」という言葉の浸透が表すように、情報システム部門のメンバー数は減少傾向にあります。

デル&EMCジャパンが2018年1月に発表した「中堅企業IT投資動向調査分析結果」によれば、調査対象760社のうち92%の会社が、「IT人材は10人以下」とのこと。さらに31%が情シス1人以下の体制で、内訳は「ひとり情シス14%」「ゼロ情シス17%」という結果です。さらに、追い打ちをかけるのが、高齢化。後続となるべき若手情シスが少ないのに、もうすぐリタイヤを迎えるベテラン情シスも。管理運用にかかわる技術や知識が空洞になってしまう懸念ははるか以前から指摘されています。

 

【課題その②】システム構成の複雑化が止まらない

基幹システムの連携。分散配置された個別システムの連携や機能追加をし続けると、いつの間にやらデータ経路のこんがらかったスパゲッティの出来上がり。トラブル発生時の原因把握はおろか、復旧にもおそろしく時間と労力を強いられます。現行システムを理解するベテラン情シスがいなければ、なおのこと、業務負荷は高まります。

また、クラウド普及により業務部門が使いたいシステムを利用することもめずらしくなくなった近年では、情シスの与り知らぬところでデータがやり取りされていることも。情報のコントロールが一層困難になっています。

 

【課題その③】次世代人材の育成が困難

そもそも明確なスキルセットがなく、各社で求める役割も異なる情シス。人数が少なくても増員されない一方で、運用管理の業務負荷は増大、さらにヘルプデスク業務などさまざまな業務も追加されてきた情シス。このような体制から、今求められている“攻めの情シス”が登場するのは困難です。

攻めの情シスとは、IT活用による業務改革の提案や推進、そこにかかるシステムの選定などを行い、自社のビジネスのIT化に貢献する「IT戦略人材」。それには、事業部の現場体験を通した自社ビジネスの俯瞰が欠かせず、情シスがローテーションで現場を体験することが必須。しかし、上記の体制ではそんな時間は割けず、また、そもそも社内における情シス像が明確でないため、キャリアパスも描けず、育成環境が整わないのは当然のことだといえます。

 

どうすれば、情報システム部は変わるのか−−

人材不足、人材減と管理運用の複雑化による負荷増大、育成環境の整備の難しさ。これらが複雑怪奇に絡み合い、“変わりたい”と感じていても変われない情シスが少なくないと聞きます。では、対策はあるのでしょうか?

 

【対策その①】やるべき業務をジャッジする

少ない人員で無理なくこなせる業務体制をつくる。まずはそこからです。負荷の軽減び方法として必要なのは、「なにをすべきか」に対する選別であり、やるべき業務を絞ること。そして、これからの情シスが理想とするやるべき業務とは、以下の図です。

【対策その②】“食えないスパゲッティ”を断ち切れ

分散配置されているシステムは、ERP導入などですっきりと統合。標準的な仕組みに統一することで、「プラットフォーム・重複機能・インターフェースのムダ」を省け、管理運用の属人化も防ぐことができます。また、近年、「API(Application Programming Interface)」によるシステム構築も注目を集めています。必要なソフトウェア機能を“間借り”しシステムを構築するイメージで、自社システムと互換性のないさまざまな機能を連携させることが可能です。機能変更もスムーズに行えるのでシステム構成の複雑化を防ぐことができます。また、事業部門のアプリも把握できるため、情報のコントロールにも役立ちます。

このように、現在、システムを最適化しやすい製品/サービスが普及しています。

 

【対策その③】負荷軽減できるサービスの積極的活用とベンダーとのうまい付き合い方

限りあるメンバーで多様な業務をこなしつつ、不眠不休のシステムの見守りに注力。これは、明らかに無理があります。現状の管理運用にかかる業務を当たり前だと思わず、サポートサービスの導入を検討してみましょう。近年では、低いコストながら「24/365監視」「システムトラブルの予兆検知」「復旧支援」など、さまざまなシステム運用をサポートしてくれるサービスが続々と登場しています。

一方、情シス業務をサポートといえば、アウトソーシングの活用もありますが、これには少し注意が必要です。よく、「開発、運用を丸投げ」という声をも聞きますが、これではいつの間にやら、そこにかかる技術やスキルがブラックボックス化。また、保守をベンダーに任せっきりで機能追加を続けていたら、「システム再構築よりも高い保守コスト発生」なんて事例もあるとか。“ベンダーにアウトソーシングしたらあとは安心”といった「分業型」ではなく、パートナーシップを結び中長期のビジョンをともに描けるベンダーとの「協業型アウトソーシング」が重要です。

 

備え、狼煙をあげるときを待つ−−

ここまでの課題と対策−−。それは、十年も前から語られてきたこと。それだけ情シスの悩みは深いといえます。しかし、ここ数年、あらゆる産業がITに目を向けていることは確か。ITの重要性をまったく理解していない経営陣はほぼ皆無であり、今後を見据えても理解はより増していくことでしょう。であれば今、情シスには追い風が吹こうとしています。その風を掴み、ぜひITでビジネスに貢献できる下地を整備しておいてください。ビジネスのIT化を正しく推進していける部隊、それは情シスだけなのですから。

 

【執筆:編集Gp 坂本 嶺】

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