【情シスLife】「情シスに求められているのは『眼力』と『想像力』」塩原正和さん

  • 2016/6/24
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2016/06/24
もしも エンジニア 塩原正和さん

もしも エンジニア 塩原正和さん

ドロップシッピングやアフィリエイトを事業で手がける、もしも。このもしもで「一人情シス」として働いているのが塩原正和(しおばら・まさかず)さんです。子どもの頃からコンピューターが好きで、当然のようにこの業界に進んだという塩原さん。社内外のシステムとネットワークをほぼ1人で管理運営し、ひたすらプログラムと向き合うエンジニアの顔を持つ一方で、同僚とさまざまなイベントを企画し楽しむという人付き合いのよさも持ち合わせています。そんな塩原さんが思い描く「理想の情シス像」とは……。
<取材・文:植野徳生 撮影:松波賢>


<塩原正和さんプロフィール>
子どもの頃にコンピューターの面白さに目覚め、高専、大学、大学院とコンピューターひと筋。大学院卒業後は大手IT企業に就職。システムインテグレーション(SI)部門で数年間の経験を重ねた後、もしもに入社。社内では社員のIT全般の面倒、プライベートでは2人の子供の面倒を見るというイクメン情シス。


一人情シスとしてPCから社内外のシステム、ネットワークまでを一手に担う

――塩原さんの仕事内容を教えてください。

当社は個人のネットショップ運営をサポートするドロップシッピング事業を行っていますが、その中で私はソリューションユニットに所属しています。業務内容を簡単にいうと、お客様にサービスを提供する本番サーバーの管理と運用、あとは社内システムの管理運用です。ふだんの業務はこちらが中心ですが、時間が空けばアプリの開発もやっていますし、社内のPCやネットワーク関係のトラブルや質問・問い合わせなどにも対応しています。簡単にいうと、社内外のシステムに関わる「何でも屋」ですね(笑)。

――守備範囲が広いですが、何人くらいで業務を行っているのですか?

サポートしてくれるメンバーはいますが、基本的には「一人情シス」です。だから責任重大で、プレッシャーや緊張感はありますね。休日でも何かトラブルがあれば連絡が来ますし、そうなったら自宅からリモート対応することもあります。

塩原さんはパソコンのトラブルから社内外のシステム、インフラまで幅広い業務を担当。

塩原さんはパソコンのトラブルから社内外のシステム、インフラまで幅広い業務を担当。

こんな状況なので、システムについてはかなり先読みをしています。「ここがダメになったらこちらの領域を使う」「ここが止まったらこちらにデータを移して」など、起こりうるトラブルを想定しておいて、それに合わせた対策を仕込んでおくんです。だから、何かトラブルが起こって、回避の仕組みがうまく働いた時は思わずガッツポーズしてしまいますね(笑)。このあたりはSIerだった前職の経験が生きています。もちろん毎日気が抜けませんが、逆にそこがやりがいですね。

ゲームがきっかけで、コンピューターの世界を志す

――コンピューター業界を志したきっかけは何だったのですか?

ゲームが好きだったんですよ。昔の家庭用のゲーム機といえば「ファミリーコンピュータ(ファミコン)」(※注1)が有名ですが、実はそれよりも前に「ぴゅう太」(※注2)っていうハードがありました。それが家にあったんです。幼稚園の頃だったかな。それで、さんざん遊んで、ファミコンが出てきてまたまた遊んで。よく遊んでいました(笑)。

それから中学生になった時に、授業の一環としてパソコンが導入されました。その時に初めてパソコンに触れたのですが、それが面白かった。そんな経験があって中学卒業後は高専に行き、大学、大学院まで、ずっとコンピューターをいじっていました。

――コンピューターの何がそんなに魅力的だったんですか?

何が面白かったのかな(笑)。その時はよくわかってなかったと思います。ただ、パソコンの真っ暗な画面にカチャカチャッと何かコマンドを打ち込むと、とたんに画面がパッと動き出すじゃないですか? 今思うと、あれが新鮮な驚きで面白かったんでしょうね。

大学生の頃はプログラムを書いて画像を動かしたり、サーバーの設定をいじって使いやすくしたりしていました。それがまた面白くて、どっぷりはまっていました。

それからインターネットが出てきて、メールが出てきた頃には、コンピューターとネットワークというものに、とても大きな可能性を感じました。さすがに世の中がここまで変わるとは思いませんでしたが(笑)。だから、コンピューターを仕事にするということは、自分の中ではすでに規定路線だったんです。

――だから大学院に進み、さらに勉強して社会に出たわけですね。

そうです。そして卒業して最初の仕事がSIだったんです。これはお客様のスケジュールありきで動かなければならないので、残業が多く、時間と日程に追われる毎日でした。朝10時に出社して帰ってくるのが夜10時頃です。それから自宅で朝方まで仕事をしたりしていました。だから、自分の時間などほとんど持てません。若いし、独身だったからやっていけましたけど、この状態では結婚もできないし、したとしても家庭が崩壊するなと思いました(笑)。

また、30歳くらいになると、自分が手を動かすというよりも、マネジメントの比重が大きくなってくるんです。コンピューターが好きでプログラムが好きなのに「モノ作り」に没頭できない。そうした不満もあって、思い切って転職したんです。

そのおかげで、今では自分の好きな仕事ができていると思います。結婚することもできたし、2人の子供にも恵まれました。また、今の会社は残業がほとんどないので、家庭も崩壊していない(笑)。子供の面倒を見ることができるし、一緒に過ごせる時間があるのは大きいですね。

制度を活用し社内の人たちと積極的に交流

――社内の雰囲気はどうですか?

怖いくらい居心地がよいです。たぶんみんなそう思っているんじゃないかな。スタッフの間に上下の意識がまったくなくて、言いたいことを何でも言える、やりたいことができる。スケジュールにも無理がなくて、自分で管理できる。のびのび仕事ができるという環境です。

仕事以外の面でも仲がよいです。会社には「イベント支援」という制度があって、5人以上のメンバーが集まれば、社員同士のイベントに会社が支援金を出してくれるんです。それで何人か集まって仕事の後にテニスをしたり、ディズニーランドに行ったりしました。社員の誕生日にはランチでお祝いもします。

この制度では「あれをやろう」「これをやろう」と私が言い出すことが実は多いんです(笑)。そうすると周りのみんなも乗ってくるんですよ。また、新しく入社してきた人とも、すぐに打ち解けることができます。仕事を離れたところで何かやろうと思っても、なかなか最初のひと声が出てこなかったりします。だから仕事以外の交流があるのはとてもよいことだと思います。

トラブルから学んだのは「社内用システムでも気を抜かない」

――仕事で失敗したことはありますか?

社内のネットワークが止まってしまったことがありました。その時は、社内業務は動かないし、カスタマーサポートもできませんでした。今までいろいろな失敗をしてきましたが、この時は平日の昼間だったのでなおさら痛かった。最大級の失敗です。

お客様にサービスを提供するための本番サーバーは万全の備えを用意していたんですが、社内用のサーバーはそのあたり、手薄だったんです。今から思うとそこが甘かったんですね。社内のサーバーが止まれば仕事が止まる。それを考えれば社内用といえども気を抜いてはいけない。これはよい教訓になりました。

――それも踏まえて、日常業務の中で気をつけていることはありますか?

ちょっとした設定のミスもないようにダブルチェックするなど、より慎重に確認をするようになりました。また、社内向けにITのスキルやリテラシーの向上で、実際に起こったり、自社でも起こりうるトラブル事例を挙げて説明する勉強会を私が主催しています。ただし、理解して実践できるかは個人差が大きいので、ひとりひとりを注意して見て、必要なケアやサポートを行うようにもしています。

――塩原さんはこれからの情シスに求められるもの、これから必要とされる「情シス像」がどのようなものだと思っていますか?

「必要なものを見極める眼力」と「想像力」です。

まず眼力からいうと、世界では次々に新しいモノが登場して話題を集めています。例えばクラウドであり、ビッグデータであり、人工知能であったりします。でも、それらすべてが果たして必要なのかどうか。その見極めは必要になるでしょう。会社の業務や成長に何が必要なのか、何を導入すればよいのか。それをしっかり見きわめる眼力、判断力がないと、単に流行に翻弄(ほんろう)されるだけだと思います。

もう1つの想像力というのは、発生するかもしれないトラブル、障害、ミス、エラーを想定し、そのための対策、回避策を用意することです。これからの情シスに求められることは、実務的にはこの2点だと思います。

新しい技術と辛いモノ道を究めたい!

――仕事のストレスはどうやって発散していますか?

今はテニスかな。ストレス解消になりますし、それ以上にコミュニケーションがスムーズになります。テニスは私自身の趣味でもあるんですが、先ほど話した社内のイベント支援制度でもやっているので、仕事以外の交流でも役立っています。

趣味といえば、あとは辛いモノです。さらにいうと「辛いラーメン」です。もともと特に「辛いモノ好き」というわけではなかったんですが、社内にラーメン好き、辛いモノ好きな人間がいて、彼らに引きずられるようにズルズルと食べるようになり、いつの間にか、中心人物になっちゃいました(笑)。

多い時には毎週のように激辛ラーメン店に食べにいっていたという塩原さん。

多い時には毎週のように激辛ラーメン店に食べにいっていたという塩原さん。

――仕事とプライベートで将来的にどんなことをやっていきたいですか?

仕事では新しい技術を試して、導入してみたいですね。人工知能がトラブルを学習して自動修復を行うというような。あとは社外の勉強会にも行きたいですね。一人情シスは「本当にこのやり方でいいのか?」と不安になることもあるので、自分とはまったく違う考え方やアイデアを持っている人の意見は、大いに参考になると思っています。

プライベートでは「辛いモノ道」をさらに追求していきたいですね。以前はオフィスが渋谷で、すぐ近所に激辛ラーメン店があったので、ひんぱんに行っていたんですが新宿に移ってからは、前ほどは行かなくなりました。それでもやっぱり、定期的に通っていますけど(笑)。

※注1:任天堂が80年代に発売した家庭用ゲーム機。
※注2:トミー(現タカラトミー)が80年代に発売した16ビットのコンピューター。

最後に塩原さんにとって情シスとはどんな仕事かを書いてもらいました!

最後に塩原さんにとって情シスとはどんな仕事かを書いてもらいました!

<インタビューを終えて>
「仕事も家庭もバランスです」。最後に塩原さんが言った言葉です。社内外のシステムを一人で担う職人的な一面、社内の皆と騒ぐのが好きなムードメイカー的な一面、お子さんが幼いため「土日は完全なイクメンになっています」という家庭的な一面と、実際に公私ともに優れたバランス感覚を持つ情シスのようです。子育ては「バランスよく」というわけにはいかなそうですが、「あと数年のことですから。それまでは子育てを楽しんで、その後は自分の時間を存分に使います」と朗らかに笑っていました。

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