情シスリーダーのための時間管理術9「仕事が遅れる部下」に悩まされるリーダーへ
部下の仕事が遅れたせいで残業……
前回は3つの「ムダな残業」を紹介しましたが、リーダーの立場に特有の残業もあります。それは、部下の仕事が遅れたせいで起こる残業です。
「残業しないと間に合わない」という状況になり、部下の仕事を手伝ったり、出来上がりをチェックするために残らざるを得なかったり、そんな残業です。「つきあい残業」というよりも「巻き込まれ残業」という感じですね。
部下に恵まれていれば、こんな目には合わないのですが、現実にはこういう経験を持つリーダーは多いです。この「巻き込まれ残業」を避けるには、どうしたらいいのでしょうか?
「後からの指導」は効果が少ない
ちなみに、部下の仕事が遅れていることが発覚したら、あなたはどう対処しますか?
「順調に進んでいると信じてたのに、実は遅れていた」というのは、突然降ってわいた災難のようなものです。そこでついカッとなってしまう人もいますし、その気持ちもわかります。しかし、その勢いで部下を厳しく叱責すると「パワハラ」だと言われかねません。
そこで、冷静に部下を指導するにしても、これも結構大変です。「なんで遅れたんだ」と原因を聞いても、要領を得ない返事しか返ってきません。
例えば、「○○さんからの頼まれごとで時間を取られた」と言うので確認してみたら、その仕事のボリュームはそれほど大きくなかったりします。これは本当の原因ではありません。あるいは、「そもそも、仕事が忙しすぎるのが悪いんです!」と逆ギレされることもあります。どちらにしても、本人が遅れた原因をよくわかっていないんですね。
実際には、仕事が遅れる原因は「その仕事のスタートが遅れた」ことである場合が多いです。下の図のような感じです。
しかし、このスタートの時期は何日か前のことなので、本人の記憶もあいまいで、これが原因だと気づかない人が多いです。原因に気づかなければ改善も難しいわけで、もし厳しく叱責したとしても効果は少なく、結局同じことがくり返されます。
今後のために指導するにしても、「計画的にやれ」とか、「優先順位を考えてやれ」のように抽象的に伝えるのは、ほとんど効果がありません。もっと具体的な「こういう場合はこう判断しろ」「この場合はすぐにリーダーに相談しろ」といった指導が必要です。
でも、詳しい状況がわからないと、こういう指導はできませんし、本人がそのときの状況を詳しく覚えていることもまずありません(そこまで自己分析できる人なら、同じ失敗はくり返しません)。
つまり、「あとからの指導」で行動を改めさせるのはかなり難しいことなのです。それよりも、途中段階で(仕事が遅れる前に)指導していく方が効果がありますし、被害も少なくて済みます。
「ホウレンソウ」に期待しすぎないこと
部下の仕事が遅れていると発覚した時、リーダーが失望させられることがもう1つあります。それが「どうしてもっと早く相談してくれなかったんだ」という嘆きです。「早く相談してくれれば手を打てたのに」と思いますし、「相談してくれないのは、俺が信頼されてないせいか?」と疑心暗鬼になる人もいます。前者はその通りですが、後者はたぶん違います。
確かに、ホウレンソウ(報告、連絡、相談)があれば早く事態を収拾できたはずだし、本来部下はそうすべきです。でも、現実はなかなかうまくいかないものです。
ちょっと我が身を振り返ってみてください。自分の仕事が少し遅れたからといって、すぐに上司にホウレンソウしていたでしょうか? そういう人は少ないと思います。がんばれば挽回できる程度の遅れであれば、ホウレンソウしないことが多かったのではないですか? その後、実際に挽回できたので問題にならなかっただけで、「ホウレンソウしない」ことに関しては、自分も同じことをやっていたのです。
また、仕事が遅れていて挽回しようとテンパっている時は、遅れを挽回することに精一杯で、ホウレンソウが滞りがちになる場合もあります。テンパっている時(事態が深刻な時)ほど、ホウレンソウが滞るので、やっかいですよね。
「部下はホウレンソウすべき」というのは、考えとしては正しいです。でも、ホウレンソウに期待しすぎると、ホウレンソウを受けるだけの「待ちの姿勢」になりやすく、事態が悪化してからあわてることになりがちです。そうなるくらいなら自分から確認していく方がよいのです。
とはいえ、毎日部下の仕事の状況を細かく確認していくのも大変ですから、リーダーの負担をあまり増やさず、タイミングよく確認できる方法が必要です。
「確認するタスク」を書いておく
ここで時間管理の手法が役に立ちます。「いつ」「誰の」仕事の状況を確認するかを、「タスク」として、それを「実行する日」に書いて(入力して)おく。この作業を仕事を頼んだ直後に済ませておきます。
そうすれば、実行すべき日に自然にそのタスクが目に入るので確実に思い出せますし、確認そのものはあまり時間がかからないので、自分の負担はそれほど増えません。
もう少し具体的にいうと、まず、部下に仕事を頼む時には「その仕事をいつ始められるか?」「いつ始めたら間に合うか?」のように、スタートする時期を考えてもらいます。もしスタート時期が遅すぎるなら、この時点で指導しておきましょう。
そして、その日付に、自分の「タスク」として「○○の進捗確認(Aさん)」のように書いておきます。
ここまでを、その仕事を頼んだ直後に終わらせておきます。そうすれば、後はそのことを忘れていても問題ありません。当日になれば、そのタスクが目に入り、必ず思い出せます。実際やってみると、かなり安心感がありますよ。
その日になって仕事の進捗を確認する時には、結果ベースで聞く方が確実です。例えば、「○○の件は間に合うか?」のように聞いてしまうと、「間に合います」「大丈夫です」と返ってくるのが普通で、これでは充分な情報が得られません。本当は仕事が遅れていても、挽回可能なうちは「大丈夫」と答える人が多いからです。心当たりはありませんか?
ですから、「間に合う(と思う)かどうか?」ではなく、「スタートできたか?」または「どこまでできたか?」のように結果を聞く方が、より正確な状況が分かります。
もし、順調に進んでいないようなら、具体的に状況を聞いて指導します。「本人が忘れていただけ」という場合もあれば、「ほかの仕事が片付かなくて、まだ手をつけられない」という場合もあるでしょう。
前者は指導してその仕事をやらせればいい話ですが、後者の場合は、仕事の優先順位や取捨選択を具体的に指示したり、他の人との分担も含めて判断する必要があります。そして、先が心配なようなら、次の確認日を決め、その日にまた「確認するタスク」を書いておきます。
また、部下に仕事の進め方を根本的に改善させるには「タスク管理」をしてもらうことが有効です。しかし、これはその日にやってその日に効果が出るものではないので、少し長い目で指導してください。この部分は、連載の第2回、第3回の記事など参考にしてください。
「確認するタスク」を書いておく方法は、仕事の遅れにいち早く気づけますし、かなり具体的に指示、指導できるので、「後からの指導」の何倍も効果的です。部下の仕事に悩まされることが多いリーダーは、ぜひ試してみてください。
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