東大とソフトバンクなど障害児を対象に「Pepper」を使った体験教室を開催

  • 2016/8/17
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2016/08/17

東京大学とソフトバンク、教育コンテンツの開発などを手がけるエデュアスは、文字の読み書きなどに障害がある子供たちを対象にした大学体験プログラム「DO-IT Japan」を8月7~11日に開催した。

「Pepper(ペッパー)」のプログラミング体験プログラムには小学6年から高校3年までの子供が参加

「Pepper(ペッパー)」のプログラミング体験プログラムには小学6年から高校3年までの子供が参加

その1つが人型ロボット「Pepper(ペッパー)」を活用し、iPadやPCを使ってPepperのプログラミングを体験するプログラムだ。

会場となったのは東京大学先端科学技術研究センター(東京・目黒)。ここに「ジュニアスカラー」「スカラー」と呼ばれる全国から選抜を受けた小学6年生から高校3年生までの学生が集まった。プログラムでは5名ほどのチームに分かれ、子供たちはそれぞれに穏やかな表情で机に向かっていた。

一見すると、よくある学校でのひとコマといった雰囲気だが、参加しているのは一般的な授業や読み書きが苦手な子供たちだ。その一方で、同学年の子供と変わらない思考能力を持ち、特に高い理数系で能力を発揮する子も少なくないという。

 

5名ほどのチームに分かれてプログラミングを体験。男の子だけではなく女の子も参加していた

5名ほどのチームに分かれてプログラミングを体験。男の子だけではなく女の子も参加していた

この子供たちに、PCやタブレットを活用して「学ぶ楽しさ」を教え、障がいという「社会がつくりだした壁」を突破する術を学んでもらうというのが、このプログラムのテーマ。各チームに1台ずつ置かれたPepperを、それぞれに配布されているノートPCとiPadを駆使してプログラミングし、しゃべらせ、動かしていく内容だ。

プログラムは、講師であるソフトバンクロボティクスの白坂氏のあいさつと説明で開始。子供たちは事前にソフトウエアには触れているが、プログラミングは全員が普段から学習しているわけではなく、はじめての子もいるという。

ノートPCのモニターには、PepperのSDK(ソフトウエア開発キット)「Choregraphe(コレグラフ)」の画面が表示されている。キットはPepperの行動や発する言語を制御するためにボックス型のインターフェースを採用。神経を思わせるような線でつなぎ合わせることでプログラムを組むことができる。

初見でも何を行おうとしているかイメージできるキットは、万人に開かれたプログラミングソフトウェアといった印象だ

初見でも何を行おうとしているかイメージできるキットは、万人に開かれたプログラミングソフトウェアといった印象だ

プログラムでは、ロボティクスの担当者が子供たちをサポート。子供たちはみな、画面にかじりつくような真剣な面持ちで、時おり談笑をしながら楽しんで体験しており、同時に没頭という言葉が似合う光景が広がっていた。

ソフトバンクロボティクスの担当者が各チームをフォロー

ソフトバンクロボティクスの担当者が各チームをフォロー

スタートから約1時間が経過し、発表の時となった。白坂氏の紹介で順々にチームが席を立ち、おのおのの成果を見せていく。万歳をするPepperや「ありがとう、また明日」と言葉を発し場を和ませるPepper。さらに、中にはCMのユニークなキャッチコピーを話し、笑いを誘ったPepperもあった。発表では、各チームのカラーが色濃く出ていた。

 

各チームでプログラミングの成果を披露

各チームでプログラミングの成果を披露

発表のたびに大きな拍手が起こり、子供たちも満足した様子だ。スタート時には緊張していた子供たちだが、プログラムを通してプログラミング担当、アイデア担当、ディスカッション担当など、個々の役割ができて、それが一丸となりチームを形成していた。

楽しく学び、また、学びからよろこびやつながりを得る。「勉強」というと、子供も大人も苦手の代名詞だが、ここには“強いて勉める”のではなく、自発的にお互い協力し、自らの体験にしていく、学びの本質があるように感じた。

子供たちは、プログラムが終了しても、自分たちの作品でもあるPepperから離れず笑顔を見せていた。「楽しかった! また、参加したい」。そう生き生きと話すジュニアスカラーの少女の一言が、本プログラムの魅力を雄弁に物語っていた。

どこでもいつでも作れる段ボール製ロボットのワークショップ

続いて、開催されたのが紙を使ったロボットを作るプログラム。これは先端科学技術研究センターに研究室を置く「かみロボ研」が主催する、ロボットを手作りするワークショップだ。

段ボールを使ったロボットを作るプログラムも開催

段ボールを使ったロボットを作るプログラムも開催

これはロボティクスをベースにさまざまな分野の学びを提供する子供向け科学研究プログラム。子供たちが、これからの未来の社会で必要とされる想像力や社会とのコミュニケーション能力などを養う体験を提供するプラットフォームの創出をテーマにしているという。

このワークショップ最大の特徴は、身近な材料である紙を使って、ロボットを製作していくことだ。一般の子供向け教材というと、専門的に開発製造され、また高価なものがほとんど。しかし、このワークショップでは段ボールを材料にしており、誰もが手軽に先端科学を体験できる。

今回の題目は「ロボットの手」。配布された段ボール材のキットに切り込みを入れ、折り曲げながら、関節、指、手のひらを形作っていく。さらに、関節部にはひもを仕込めるようになっている。完成後は動かすことも可能だ。

プログラムでは段ボールを使った手のロボットを製作

プログラムでは段ボールを使った手のロボットを製作

モニターに映し出された図面を見ると、とても複雑な印象だったが、それとは裏腹に、みなスムーズに組み立てていた。1時間もしないうちに、ほとんどの子供の机には、ロボットの手が出現していて、それを、隣どうしで動かし遊んでいる。このような体験の中で、子供たちはさまざまなアイデアを発想し、疑問を抱いて学んでいくのだろう。

図面を見ながら手のロボットを組み立てる子供たち

図面を見ながら手のロボットを組み立てる子供たち

研究室の西山浩平・チームリーダーは「大人よりも子供が作ったモデルのほうが、子供に評価を得ることがある。そういったこともワークショップでは大切にしている」という。実際にプログラムでは、これまでの参加者のアイデアをフィードバックしたカリキュラムを採用している

今年で10周年を迎え、学びが困難な小・中・高校生など、さまざまな若者のサポートを行ってきたDo-IT Japan。今回2つのプログラムを取材して感じたのは、「学びに壁はない」ということだ。プログラムの1期生の中には、すでに社会人として活躍している若者もいるという。子供たちの可能性と夢をサポートする学びのプログラムの取り組みに今後も期待をしたい。

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