【情シスの基礎知識】変化するビジネス環境下で求められる情シス像
サーバー、ネットワーク、クライアントPCなどの運用管理、ITシステムの設計などの業務を担当する情報システム担当者(情シス)。その情シスは今、求められる役割が大きく変わろうとしています。それはどういうことなのでしょうか。この記事では、現在、そして今後求められる情シス像について解説します。
経営感覚を持つ情シスが求められる時代
日本ではITに疎い経営層も少なくなく、ITに投資を積極的に行う企業は限られてきました。一方、ビジネス的な面からITシステムを考える機会が少なかったため、経営層に対して積極的に提案する情シスや、そうした情シスがいる会社は多くありません。
しかし、近年の市場のグローバル化やコンプライアンス(法令遵守)の強化など、企業を取り巻くビジネス環境は大きく変わっています。このような変化に対応するためには、より高度な経営情報を素早く入手することが欠かせません。それを実現する手段の1つがITシステムです。そのため、経営課題を素早く解決できるマーケティングツールや全社的な情報基盤などのITシステムに対する重要性が高まっています。
これを実現するためには、経営者はIT、情シスはビジネスについて、今よりも深い知識を持ち、お互いが連携して、経営課題を解決できるITシステムを構築し運用する必要があります。これは「攻めのIT」といわれています。そして、情シス側に限って言えば、従来のITだけを見ている担当者から経営感覚を持ち合せたIT担当者として生まれ変わることが求められているのです。
新サービスの活用などで学ぶ時間を捻出する
しかし、多くの情シスは、社内の既存ITインフラやシステムを保守・運用することで手一杯な人が多く、「新しいことに取り組む時間がない」という話をよく聞きます。ではビジネス感覚を学ぶ時間をひねり出すためには、どのような策が考えられるでしょうか?
キーワードは、「クラウド」「仮想化」「アウトソーシング」です。
まず「クラウド」ですが、情シスの業務の1つであるサーバーの管理。これをオンプレミスサーバーからクラウドのサーバーに移すだけで、保守業務にさく時間を削減できるようになります。さらに、サーバー上で動いていた業務システムも、SaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)といったクラウドサービスに移行すれば、OS(基本ソフト)やミドルウェア、アプリケーションの保守管理業務からも解放されます。
次に「仮想化」では、VDI(仮想デスクトップ環境)やDaaS(クラウド型の仮想デスクトップサービス)を導入することで、PCの保守業務を大幅に減らすことが期待できます。最後の「アウトソーシング」では、システムの監視やコールセンター業務などの専門性を持つアウトソーシングサービスに委託することで、これらの業務を減らせます。
こうした新しいサービスやシステムを活用すれば、自社の経営や、将来のITシステムを考えるための時間的なゆとりが出てきます。また、この時間を使って自分と異なる部署での業務の進め方や社内でのITシステムの使われ方を理解したり、研究したりすることも大切です。
経営層へのアピール能力も重要
一方で、こうした施策を行うためには経営層の理解が不可欠です。いずれも費用がかかるので、その有用性を経営層にプレゼンテーションをして承認してもらうことが必要です。また、施策の中では、クラウドの場合は電気代削減などのメリットがあるものもありますこうした点のアピールも欠かせません。それにはビジネス感覚を学ぶと同時に、コミュニケーションスキルやプレゼンテーション能力を磨く必要もあるでしょう。
また、時間を使って自分と異なる部署での業務の進め方や社内でのITシステムの使われ方を知ったり、研究したりすることも大切です。
今、ITの世界ではビッグデータや人工知能(AI)、IoT(モノのインターネット)など、最新の技術が次々と登場してきています。こうした技術をどう生かし、事業に役立てるか。また収益に結びつけられるようにするか。このようなアプローチでITを使って経営課題を解決できる情シスこそが今後は生き残れるのかもしれません。