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松田軽太の「一人情シスのすゝめ」#19:結局のところ「DX」ってなんなのだろう?

松田軽太の「一人情シスのすゝめ」、タイトルだけ見ると一人情シスを推奨しているように思われるかも知れませんが、思いはまったくの”逆”。様々な事情によりやむなく”一人きり情シスや専任情シス不在”という状況になってしまっても頑張っていらっしゃる皆様のお役に立つような記事をお届けしたいと思っております。

今回は、『結局のところ、DXとはなんなのか』というお話です。

 

「これからの時代、DXできない会社は生き残れない」といったような言葉を毎日のように目にするようになりました。
今やすっかりバズワードになった「DX」ですが、実際のところ、何をもってしてDXなのかサッパリ分からなくなっている人も多いのではないでしょうか?
そんなことを思っていたら、このツイートが目につきました。

このツイートでは木村 岳史氏の著書「アカン! DX」が紹介されていました。
興味深い記載があったので、少しだけ引用させていただきます。

RPA導入がカイゼン活動の延長線上にあると捉えると、DX推進組織が担うのは自然なことだ。
RPA導入が大ブームになっているのは日本だけだそうだ。
BPR(ビジネス・プロセス・リエンジニアリング)などの変革に取り組むことなく、今ある業務をブラックボックス化と引き換えに効率化できるため、抜本的な変革を避けたがる日本企業にぴったりだからだ。
しかも現場任せでOK。そこでRPA導入を「守りのDX」などと位置づけてDX推進組織が担う。

DXの矮小化、ここに極まれり、である。

<引用:「アカン! DX」>

おそらくこの一文を読んだだけでも「そうそう、そういうことだよね」とブンブンと頷いたDX担当者は多いのではないでしょうか?

 

RPAの導入はDXなのか?

前述のツイートで紹介されていた「アカン! DX」の一文を読んで、常々感じていたことがスッキリして、自身でこんなツイートをしました。

いまさらですが「DX」「デジタル・トランスフォーメーション」を意味しています。
文字通りデジタル技術を活用して既存のビジネスモデルから脱却し、新しいビジネスモデルの創出することです。

しかし、世の中には「RPAでDXを実現した」という話も多く見かけます。なのでネット上では「RPAはDXなのか?」というテーマで書かれた記事も散見されます。

数ある記事の中でも、自分として特にしっくりきたのが以下の記事になります。

この記事ではある会社の事例について疑問を投げかけています。
ここでざっくり説明すると、以下のようになっています。

  1. WEBサイト経由で顧客から問い合わせがあると、通知メールが担当者に発信される
  2. しかし一括ダウンロード機能がないので、担当者は基幹システムにコピペで入力する
  3. そこでRPAを導入し、基幹システムへの入力を自動化した

これは一見すると、確かに担当者tおしては手入力から解放されています。
しかしながら、実際のところは入力作業をRPAが代行しているにすぎません。

これってトランスフォーメーション=変革してないと思いませんか?
そこで「こういうコトはなんと言うべきなのだろう?」と思いググったところ、デジタライゼーションという言葉に辿り着きました。

それが先ほどのツイートになりました。
「一般的なRPAでの業務自動化はDXとは違うものなのではないか?」と感じたのです。
まぁ、デジタル技術の活用による業務改善は「デジタイゼーション」だという見解もあります。

いろいろとコメントもいただきましたが、それがデジタイゼーションなのかデジタライゼーションなのかはハッキリしませんが、いずれにせよDXではないのは間違いないでしょう。

 

いったいDXって何なんだ?

では、改めて「DXって何だろう?」と思いググってみたところ、こんな記事を見つけました。

こちらは富士通ジャーナルの記事になりますが、この中では以下のように説明されています。

「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」

<引用:富士通ジャーナル>

これだけでは少し抽象的すぎて、イメージが湧きません。そしてアマゾンがDX事例として紹介されます。
さすがにアマゾンだと、ちょっと事例が大きすぎて腹落ちしませんよね。

そんな感じでモヤモヤしていたところ、以下のツイートが目に留まりました。

そして、このツイートの中で紹介されていたnoteの記事を読んでみたところ、非常にスッキリしました。

こちらも少しだけ抜粋し、紹介させていただきます。

DXが何かとか、自分も複数の現場を見て、実際にやってみて初めて気がついたというか、最近ようやくわかってきた気がします。
むかし自分が言ってたことは調査や分析の結果でしかなかった。間違いじゃないんだけど、体験・経験が伴っていなかったな、情報を消化しきれてなかったな、と思っています。

DXってのは、デジタルがコモディティ化する「前」に完成した「ビジネスの型」を、デジタルを前提としてリデザインすること、だと今は考えています。
だから2000年以降にできた企業はDXの対象外。それ以前のパラダイムを前提として完成された「ビジネスの型」これを「リデザイン」するのがDX。
「改善」や「改造」ではなく、「リデザイン」なので革新であり、トランスフォーメーションという語感がしっくりきて受け入れられてるんだと思う。

<引用:DXコンサルが絶対に言わない後ろめたい真実>

おそらく上記のような内容が、自分自身も漠然と思い描いていたDXの本質なのだと気がつきました。リデザインなのですね、リデザイン

 

美人すぎる魚屋さんの考案した「おまかせ鮮魚BOX」というDX

アマゾンみたいな成功しきったDX事例以外に何かもっと身近な事例がないだろうか?と探していたら、ニュースサイトで「美人すぎる魚屋」という記事が紹介されてました。

「美人すぎる魚屋」とは、鮮魚の販売や居酒屋を展開する寿商店の常務取締役を務める森 朝奈さんです。
確かにご覧の通りの森 朝奈さんは超美人な方でした。

以前には楽天で働かれていたということもあってかIT活用にも明るく、いわゆる街の商店街にある”お魚屋さん”とは、だいぶイメージが異なります。
そんな森 朝奈さんが考案したのが「おまかせ鮮魚BOX」なのです。

(寿商店のサイトが常時SSL化対応していないのはご愛敬ですかね…。w)

なぜ、この「おまかせ鮮魚BOX」を考案したのか、その動機を紹介しておきます。

 森さんが自分でも「大きく変わった」と感じるようになったきっかけが、2020年に始まったコロナ禍だ。

愛知県では、2020年4月に最初の緊急事態宣言が発出され、飲食店に休業要請が出されて売り上げは大幅に落ち込んだ。寿商店も例外ではなく、鮮魚の卸売業はもちろん、12店舗を展開する居酒屋「下の一色」などの飲食業も大きな打撃を受けた。

「(2020年の)4月、5月ごろに市場に行くと、いい魚が入っているのに値段がものすごく下がっていたんです。漁師の友達は、魚を取っても買い手がつかないので『漁に出られない』と嘆いていましたし、クルマエビの養殖業者さんも『これ以上大きく育てても売れないし、お金がかかるばかり。まだ小さいけど安くするから買ってくれないか』と。そうした状況を見て、何とかしたいと思ったんです」

■「おまかせ鮮魚BOX」に注文が殺到
「こんなに安くて新鮮な魚介類なら、きっと食べたい人はいるだろう」と考えた森さん。まずはSNSで友達に向けて、市場の様子を写真で見せながら「こんなに立派な天然の鯛が1000円で買えるんだよ。欲しい人は送るよ」と呼びかけたところ、大好評だった。

コロナ禍をキッカケに、新しいビジネスモデルを展開しているのです。これってまさにDXではないでしょうか?
DXにはinnovativeでなければならないという意見もありますが、「おまかせ鮮魚BOX」は寿商店にとってのinnovationであったことに間違いはありません。

そしてもう一つ。「森 朝奈さん」はこんなDXも実現しています。

そう、「SNS時代の看板娘」なのです。確かに言い得て妙だと思います。

今までの看板娘といえば、せいぜいその町中での評判だったと思います。
しかしながら、SNSの拡散力を手に入れた看板娘は、広報するパワーが段違いです。

DX事例というと今だにAmazonだのウォークマンだのiPhoneだのテスラだなどと語られますが、もっと身近に感じられる話をもっと聞きたいと思いました。
でも、身近なDXって実現した人はおそらく「これぞDX!」だなんて自覚がなく、きっと表に出てこないかもしれないですね。

というワケで今は「こんな風な身近なDXをもっと知りたい」と思っているところです。

そして最後に…。

御後が宜しいようで。

 

※本記事は松田軽太様許諾の元、「松田軽太のブロぐる」の記事をベースに再編集しております。


松田軽太(まつだ・けいた)

とある企業に勤務する現役情シス。会社の中では「何をしているのかナゾな職場」でもある情シス業務についてのTipsや基礎知識などを紹介する。

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